ダイソンは11月19日に、VRヘッドセットを使って自宅でダイソン製品をバーチャル体験できる「Dyson Demo VR(ダイソン デモ ヴィアール)」を発表、提供を開始しました。対応するVRヘッドセットは「Oculus Quest」「Oculus Quest 2」、コントローラーは「Oculus Touch」です。

実店舗と同じようにドライヤーやヘアアイロンを試せるというので、ダイソンにおじゃまして体験してきました。

【動画】ダイソン公式のDyson Demo VR紹介(音声が流れます。ご注意ください)

ヘアスタイラーでくるりんとカールを作れるVR

Dyson Demo VRは、Oculus Questストアからダウンロードします。筆者はOculus Quest 2を使うのが初めてなので、ダイソンの担当者に操作方法を教えてもらいながらの試用です。

Oculus Quest 2を装着し、両手にコントローラー(Oculus Touch)を握ります。VR空間に入ると、正面に大きなスクリーンが表示されており、ダイソンのエンジニアによる製品説明を聞けます。提供当初は英語のプレゼンですが、日本語音声や字幕への対応も検討中とのことです。

  • Dyson Demo VRのデモ動画から(実際のDyson Demo VRとは異なります)

スクリーンの手前には、ダイソンの「Dyson Supersonic Ionic ヘアドライヤー」、「Dyson Corrale ヘアアイロン」、「Dyson Airwrap スタイラー」が並んでいます。将来的には掃除機のVR体験もできるようになるそうなので、期待しましょう。

  • Dyson Supersonic Ionic ヘアドライヤーは、髪に過度な熱を与えずにパワフルな風量で乾かすドライヤー

  • Dyson Corrale ヘアアイロンは、フレックスコッパープレートで髪を優しく包み、均一に力をかけてなめらかでツヤのある髪に仕上げられます

  • Dyson Airwrap スタイラーは、風の力で髪をカーラーに引き寄せてクセ付け。アタッチメントを付け替えるとドライヤーとしても使えます

まずはドライヤーから。基本的なドライヤーはもちろん、各種のアタッチメントも付け替えられます。カールやパーマをかけた髪を乾かすときに使う「ディフューザー」、長い髪を手前に引き寄せて髪表面の浮き毛を抑える「浮き毛抑制ツール」など、一通りのアタッチメントを試せます。

VR空間でドライヤーを手に取ると、視界の左側に髪の模型が現れます。手に握ったOculus Touchコントローラーを操作して、髪の模型に温風を当てます。表側だけでなく、裏側からも風を当てられるので、実際に髪を乾かすシーンをうまく表現していると感じました。

  • VR空間で使いたい製品を選びます。これはドライヤーを選んだ画面

ユニークなのは、風の温度や風量が視覚的に見える化していること。温風は赤色、冷風は青色です。風の流れが分かるほか、風量が多くなれば風の流れを示す線の数が増えます。

現実のように風を感じることはできませんが、グラフィックを使った効果で動きを把握できるのはVRならでは。また、アタッチメントを付け替えると、風の流れと髪の動きが変わるため、アタッチメントの違いもよく分かります。

  • ドライヤーの温風は赤で描かれます(ダイソン公式動画から)

ヘアアイロンの場合は、Oculus Touchコントローラーの操作でプレート部を開閉できて、VRの髪を挟みます。髪を挟んでアイロンを下に動かすと、髪のうねりがなくなっていくのはなかなかリアル。Oculus Touchコントローラーでヘアアイロンを前後左右に好きに動かせるため、ボタンの位置や操作性も確認できます。

スタイラーは、VRの髪にくるりんとカールを付けられます。アタッチメントを付け替えると、できあがるカールの大きさが変化。風の動きに沿ってふわりと浮き上がる髪はとても自然な動きでした。

VRの髪は、カールなどのクセ付けをしても、リセットボタンを押すとすぐ元の状態に戻るため、何度もトライできます。また、各製品を分解した状態を表示して、内部がどんな構造になっているのかを見られるのもおもしろいところ。こうした手軽さやコンテンツの幅広さは、VR空間だから体験できることのひとつでしょう。

  • 画面を切り替えると、製品の構造をチェックできます

  • 外から見ると何をしているのか分かりませんが(これはどんなVRでもそうですね)、マイナビニュース・デジタルの林編集長も体験中

リアル店舗とネットショッピングのすき間を埋めるVR

もともと、ダイソンではエンジニアが製品開発でVRを活用しているそうです。製品の動きや操作性をVR上で確認することで、実際に試作機を作らなくてもある程度のことはつかめます。今回のDyson Demo VRは、ダイソンの研究開発で用いられるシミュレーション技術を多く活用しています。

  • ダイソンは電気自動車などの開発でVRを活用していました(電気自動車からは撤退していますが……)

ダイソンの広報によると、「Dyson Demo VRはリアル店舗とネットショッピングのすき間を埋める存在」とのこと。

ダイソンは以前から、表参道(東京都)、越谷市(埼玉県)、木更津市(千葉県)、御殿場市(静岡県)、神戸市(兵庫県)、広島市(広島県)に「Dyson Demo」という体験型ショップを展開しています。Dyson Demoは、ダイソンの掃除機でいろいろな床を掃除したり、ドライヤーやヘアアイロンで自分の髪を実際にセットしたりと、製品を実体験できる店舗。実際に触ることで、自分にとって使いやすいのか、どんな機能があるのかを理解できるだけでなく、専門のスタッフに製品の特徴や使い方を教えてもらえます。

家電量販店の体験コーナーと比べて、Dyson Demoはじっくりと落ち着いた空間で製品を試せる点や、ダイソン製品同士を比較できる点、鏡の前に座って髪をセットできるなど、より深い体験が魅力です。表参道店と越谷店には、ヘアスタイリストがスタイリング方法を教えてくれるサービスや、ヘアツールの収納箱に刻印をするサービスなどもあります。

  • Dyson Demo表参道。店内に入ると大きなスクリーンがあるところが、仮想空間のロビーに似ています

  • Dyson Demo表参道では、アタッチメントを付け替えてドライヤーなどの体験ができます。この体験をVRで再現しています

  • Dyson Demo表参道では、専任スタイリストに自分の髪質に合わせたスタイリングを教えてもらえます

実際に製品を体験することで製品の魅力を理解できる「Dyson Demo」ですが、緊急事態宣言の影響で外出を控えている人や、近所にDyson Demoがないという人も少なくありません。そうなると、ダイソンの公式オンラインショップなどで製品を選ぶことになります。

ネットショップは文字ベースの説明が基本です(最近は動画コンテンツを用意するサイトも増えていますが)。ある程度の製品知識があると違いなども分かりやすいのですが、初めて使う人や、製品ごとの細かな違い、自分にとって操作しやすいかなどを知りたいと思うと、情報が足りません。

そうしたオンライン上の不利なところを少しでも埋めるために登場したのが「Dyson Demo VR」です。VRではありますが「体験」できるため、製品の動き、操作、アタッチメントの違いなどは、文字を読むだけや説明を聞くだけよりも理解しやすいのは間違いありません。

VR上から買い物、バーチャルスタッフなど、今後の展開に期待

始まったばかりの「Dyson Demo VR」。VR初心者の筆者にとっては、最初に製品をVR上で手に取るのも一苦労。こういう人は多いと思うので、細かい操作ガイドが欲しいところ。また、製品のVR体験を効果的にするため、チェックポイントなども教えてもらえると理解が深まりそうです。

現在体験できるアイテムは、Dyson Supersonic Ionic ヘアドライヤー、Dyson Corrale ヘアアイロン、Dyson Airwrap スタイラーの3製品。近いうちにコードレス掃除機の「Dyson V15 Detect」も加わる予定です。Dyson V15 Detectには緑色のレーザーで床の上の微細なホコリを可視化する機能があるので、VR体験に向いているのではないでしょうか。

今後の展開としては、VR上で買い物ができるようになるほか、ダイソンのスタッフと会話をして製品の説明を受けられるようなことも考えているそうです。VRとはいえスタッフにいろいろ質問できるのはいいですね。将来的には、ヘッドセットなしで体験できるWeb 3D版も検討しているとのこと。VRで家電の説明や体験をするのはまだ珍しいですが、VR上の機能やコンテンツの広がりに期待です。