鉄道総合技術研究所は29日、鉄道車両の台車周辺に雪が付着して成長する着雪現象を計算により精緻に再現できる「着雪シミュレーター」を国内で初めて開発したと発表した。降雪量や走行時の風など実際の走行を模擬した条件での計算が可能となり、今後、着雪しにくい車両の開発等に活用していくとのこと。

  • 実車両への着雪状況例

冬季の降雪地帯の走行では、線路上の雪が舞い上がり、車両の床下や台車に雪が付着して塊状に成長することで、これを手作業などで対応するためのコストや手間が必要になるため、着雪しにくい車両形状が求められている。しかし、車両形状の検討にあたり、実物の鉄道車両を用いるため、多大な労力が必要となることに加え、冬季や降雪時にしか試験できなかった。一方、車両模型を用いる降雪風洞実験では、車輪の回転や走行風など、走行による影響を正確に考慮できなかったという。

これらの課題を解決した上で、着雪現象を計算により精緻に再現できることをめざし、「着雪シミュレーター」が開発された。スーパーコンピュータを用いることにより、さまざまな条件を模擬した上で高速な計算を可能にしたという。

  • 「着雪シミュレーター」による台車への着雪の計測結果例(台車を下から見上げた状態)

  • 「着雪シミュレーター」の概要

「着雪シミュレーター」の特徴として、車輪の回転や走行時の風など、走行による影響を考慮した着雪状況を計算できる。鉄道車両の台車のような複雑な形状に対しても適用可能。空気の流れや飛雪粒子の動き、着雪の状態など、着雪の過程を可視化でき、着雪原因の解明や着雪防止対策の検討に活用できる。

着雪状態を評価する対象物周りの気流計算・飛雪粒子の軌道計算・着雪判定計算の3つを繰り返し使用しているため、着雪の成長とともに対象物の表面形状が変化することによる対象物周りの気流変化を考慮し、着雪現象を精緻に再現できる。

「着雪シミュレーター」による計算結果と立方体模型を使用した降雪風洞実験結果を比較すると、横から見たときの面積比で6%の誤差で再現できることを確認。複雑な形状の台車の計算結果では、降雪風洞実験結果と比較して着雪の最大厚さと重量がほぼ一致する結果が得られたという。

今後、「着雪シミュレーター」は台車周辺の着雪量を低減するための形状改良などに活用していく予定。これにより、着雪の過程を考慮した台車周辺形状の提案が可能になるなど、効率的な開発を進められるとのことだった。