JOは豆腐の製造工房を併設した豆腐店「豆富食堂」を11月30日、東京・恵比寿にオープンする。昼は定食屋、夜は酒場として営業し、香港・台湾・韓国などアジアのさまざまな国からインスパイアされた豆腐料理が提供される(ランチ営業は2022年1月~スタート)。

  • 昔懐かしい雰囲気とスタイリッシュさが融合した外観

ショップで買える「三角揚げ」は驚異の分厚さ

入り口にはショップがあり、木綿豆腐やおぼろ豆腐、そして豆腐アイスや豆花などのスイーツ、さらに搾りたて豆乳もテイクアウトすることができる。

  • ショップコーナーもどこか昔ながらの雰囲気

目を惹いたのは「三角揚げ」(210円)。油揚げだが、厚揚げかと思うほど分厚い。これでいなりをつくったら贅沢だろうな……と思いつつ、そのまま焼いてみたところ、それだけでツマミになるほど美味しく驚いた。素材である大豆の味がしっかりと感じられる、染みわたるようなコクを感じるのがクセになる。

  • 「三角揚げ」(210円)

豆腐工房を併設、毎日できたて豆腐

早速店内に足を踏み入れると、まず目に飛び込んでくるのが豆腐工房「豆腐製造室」。できあがった豆乳に「にがり」を入れて製造される豆腐も多い中、こちらでは豆から豆腐作りを行っている。使用するのは、豆腐にすると美味しいといわれている「ミヤギシロメ」という品種。まるで豆をそのまま食べているかのような豆腐に仕上がり、豆のうまみや甘味が他のものとは違うのが特徴だ。

  • 豆腐工房「豆腐製造室」

豆腐作りの中で、浸水させた大豆を石うすで擦りドロッとした「生呉(なまご)」にしたものを窯で煮る工程がある。この工程で、大量の泡が発生してしまうため、通常はその泡を消す消泡剤を使う。しかしここでは泡が発生しない窯で、消泡剤は使用しない。消泡剤自体は身体に有害というわけではないものの、「添加物をできるだけ入れず、なるべく安心安全なものをお届けしたい」という思いから、こうした特殊な窯を使用しているそう。

  • 「おぼろ豆腐」(270円)

そんな大豆と水とにがりだけで作ったおぼろ豆腐は、柔らかく口の中でほぐれ、ひっかからず余計な雑味は一切なくすっと身体に取り込まれるような味わい。そのままでも十分美味しいが、出汁で割った醤油を少しかけると絶品だ。

さらに、豆腐製造の工程でつくられる豆乳は、豆腐の味がしっかりと感じられつつもすっきりしており、市販のものとは味が違う。職人さんによると、水で薄めた上にさらに調整しているが、豆富食堂の豆乳は豆と水の割合にこだわることで無調整かつ薄めずにそのまま飲めるよう計算されているのだそう。

JOは五反田・恵比寿エリアで「それがし」、焼鳥「とり口」、イタリアン「LOVAT」など人気飲食店7店を運営してきた。今回オープンするのが「豆腐専門店」ということで、全くの新業態となる。なぜ豆腐なのか?JO代表取締役尾山淳氏はこう話す。

「これまで10年以上飲食店をやってきた中で、今後は食のインフラとなる店が必要だと感じ、新業態にチャレンジしました。自分自身が好きでご縁もあり、日本人から愛されているということで豆腐の専門店になりました。豆乳のような植物性ミルクの存在は環境問題の解決にもつながると考えています」

宮城県の「涌谷とうふ店」でスタッフたちが数か月に及ぶ修行を積み、オープンにこぎつけた。

キンミヤ焼酎を豆乳で割った「豆乳割」

メニューは豆腐専門店」ということもあり、健康志向のものが多いのかな……と思い早速ラインナップを見てみると、ハイボールやレモンサワー、純米酒はもちろん、「ナチュラルワイン」「赤星」「豆乳割」など、ちょっと変わったものも含めお酒の種類が豊富。これは、ヘルシー重視というよりは「豆腐の楽しさやポテンシャルを伝えたい」というコンセプトに基づくもの。

  • オレンジワイン「アランサット・ノンフィルター」(ボトル4,950円)と「豆乳割」(660円)

さらに、「自然なもの同士は合う」ことからナチュラルワインへのこだわりも強く、赤・白・泡に加え、近年流行しているオレンジワインもメニューに並ぶ。「オレンジワインは食事と合わせやすいですよ」と聞き飲んでみると、赤と白の中間のような味わいで、適度な渋みがありつつもすっきりとしている。グラスで提供することで「食事と一緒にグイグイ飲んでほしい」という思いも。

豆乳割はなんとキンミヤ焼酎を豆乳で割ったもの。飲みやすく、甘く大豆を感じる味わい。どのメニューと合わせても相性がよさそうだ。

「酒のアテになる」豆腐メニューが魅力

さて、フードのメニューはもちろん豆腐づくし。お酒のアテになるものが多いことに驚いた。

「おから手毬寿司」はシャリ(米)の代わりにおからを使用している。おからと魚……? と思ったが、おからにも酢の酸味がしっかりとついており、全体がまとまっている。ころころとした見た目もキュートだ。

  • 「おから手毬寿司」(660円)

「干し豆腐と香味野菜のサラダ」は歯ごたえのある干し豆腐が、もはやほぼ麺。そこに香味野菜のシャキシャキ感が加わり、全体がエスニックな味付けで整えられている。初めて食べる味だが、どこか懐かしい気持ちになる不思議な魅力がある。

  • 「干し豆腐と香味野菜のサラダ」(880円)

「豆腐白湯・塩」は鶏の数種類の部位をブレンドし、コラーゲンたっぷりの濃厚スープにくずし豆腐と干し豆腐が入っている。ダイエット中だけどラーメンが食べたい! という方にはぴったりかもしれない。白湯が濃厚ではあるものの、限りなく優しい味わいだ。添えられたレモンと青唐辛子で味変もできる。レモンをかけるとさっぱりした味になるが、青唐辛子はめちゃめちゃ辛いので要注意。

  • 「豆腐白湯・塩」(990円)

デザートにおすすめなのは豆花と豆腐アイス。豆花はほんのりと感じられる甘味と、小豆&シリアルのコントラストが飽きを感じさせない。豆腐アイスは優しい甘味の豆腐味のアイスだが、中に凍らせた豆腐が入っており、時折食感が変わるのがとても新鮮で楽しい。

  • 「豆花」(660円)

  • 「豆腐アイス」(550円)

「豆腐料理のお店=あっさりしていて物足りなさそう」というイメージを覆された。健康は気になる、だけどガッツリお酒も飲みたい! という気分の時には最高のお店だ。

  • 広々とした店内。カウンターとテーブル席が用意されている