「RAGE」や「EDION VALORANT CUP」といったeスポーツイベントをはじめ、「SCARZ」や「SENGOKU GAMING」などのeスポーツチームにもスポンサーをしているレノボのゲーミングPCブランド「Legion」。ゲーミングPCとeスポーツの相性が良いことはあるでしょうが、それ以上に社長であるデビット・ベネット氏の熱い想いがeスポーツのサポートを後押しします。
また、ときには自身がプレイヤーとしてeスポーツ大会に出場することも。「Legion」が大会のスポンサーを務めた「RAGE PARTY 2021 Autumn Apex Legendsアリーナチャレンジカップ」には、デビット氏が「社長とゴリラと芸人」というチームで参戦します。
大会参加にはどのような意図があったのか、また現在のeスポーツシーンをどのようにとらえているのか、PC業界、IT業界屈指のゲーマーと知られるベネット社長に話を聞いてきました。
――まずは、2021年9月に開催された「RAGE PARTY」のメインスポンサーを務めることになった背景を教えてください。
デビット・ベネット社長(以下、デビット):「Legion」としては、2年ほど前からeスポーツイベントへの出資を開始しました。幅広い層に対して、ゲームと接する機会を増やしたいと考えているためです。
さまざまなeスポーツ大会がありますが、そのうちの「RAGE」は『APEX Legend』を早い段階から採用していました。個人的に、当時はあまり『APEX Legend』をプレイしていませんでしたが、魅力のあるゲームだったので、ぜひとも関わりたいと思ったんです。ほんとうは2020年の東京ゲームショウで大会を開催し、支援する予定でしたが、オンライン開催になったことで、残念ながらキャンセルになってしまいました。
「RAGE PARTY」は「RAGE」ブランドの1つのイベントではあるんですが、芸能人やストリーマーなどが参加し、ゲームの強さ、うまさだけではなく、楽しんでいるところが存分に感じられる大会。ゲームに慣れていない人が観ても楽しめます。その点が、我々の目指す「幅広い層に対して、ゲームと接する機会を増やしたい」というビジョンと合致したため、スポンサーをさせていただきました。
――「RAGE PARTY」では、デビット社長も大会に参加していましたね。
デビット:自分から出たいって志願しました(笑)。私がゲームをするのは趣味の部分が大きいですが、ゲームやeスポーツへの理解を深める意味もあります。
たとえば、パソコンを売っている人は、パソコンに詳しくないといけませんよね。それと同じで、ゲーミングPCブランドの「Legion」を展開するメーカーとして、ゲームのこともより理解すべきだと思い、多くの大会に参加するようにしています。ただ、大会で活躍するにはレベルが全然足りていないんですけど(笑)。
「RAGE PARTY」は、3人1組のチーム対抗戦だったんですが、チームメイトをRAGEが斡旋してくれました。一緒のチームになったのは、バーチャルゴリラさんと、お笑いコンビ「シソンヌ」の長谷川さん。すごく楽しくプレイできました。
戦績については、残念ながら初戦敗退です。「チームシンガー」には勝ちたかったんですが、負けてしまいました。『APEX Legend』をそれほどやり込んでなかったのと、直前までバトルロイヤルのルールだと思っていたので(大会では1チーム対1チームのアリーナモードを採用)、まったく対応できませんでしたね。バトルロイヤルだと、序盤はあまり積極的に攻めにいかないので、大会でも最初そうしていたんですが、もっと積極的に攻めるべきでした。
大会自体は、プロ選手やプロチームが参加している大会と違う側面を見せられたと思います。ハプニングもありましたし、勝敗以外に楽しめる要素のある大会になったのではないでしょうか。
――デビット社長は、「Legion 企業eスポーツ対抗戦」にも参加していますが、「RAGE PARTY」との違いをどう感じますか。
デビット:「企業eスポーツ対抗戦」は会社の代表として、会社のために戦います。「RAGE PARTY」は観ている人に楽しんでもらう大会なので、だいぶ違いますね。参加している芸人やストリーマーさんのトークやリアクションもおもしろいですし、観る人が納得するような勝ち方をしないといけない難しさも感じました。プレゼンテーションとかうまいなぁと思っていたので、そこらへんは「企業eスポーツ対抗戦」でも取り入れていきたいですね。カメラアングルなど、演出面も勉強になります。
――そもそも「企業eスポーツ対抗戦」を始めた目的はなんでしょうか。
デビット:ゲーミングPCを発売しているメーカーとして、PCゲームをプレイする人の裾野を拡げるためです。企業eスポーツ対抗戦の「道場カップ」は、誰でも参加できるようにしていますし、社会人の企業対抗戦を企画することで、普段なかなか大会に参加できない人も、社会人サークル活動として楽しんでほしいですね。
「Legion」は、ゲーミングPCブランドとして常にNo.1を目指しています。そのためにも、プロチームのようなトップ層だけでなく、アマチュアや初心者もサポートしていきたいんです。今後はプロ、アマ混合の大会とかやってみてもおもしろいかもしれません。動画配信サービスのTwitchによると、視聴者の成長率は日本が一番。ゲーム配信を観る文化も根付いてくと思いますので、その意味でも「企業eスポーツ対抗戦」は重要だと考えています。
――eスポーツは、まだまだゲーミングPCメーカーの追い風になりそうでしょうか。
デビット:日本は未だにコンシューマゲーム機が強く、ゲーミングPCを使う人はあまり多くありません。海外だと約25%はPCでゲームをしていますが、日本はわずか4%。なので、まだまだ伸びしろがあるんです。
それに、コンシューマゲーム機といっても、XboxやPlayStationは、今ではPCのアーキテクチャと同じものを使用しています。つまり、性能に大きな違いはありません。そのため、ゲーミングPCにも十分にチャンスはあるんです。PCゲームをプレイしているユーザーの中には、キーボードとマウスではなく、コントローラーを使っている人もいて、そういった意味での垣根もなくなってきているでしょう。
――フルモデルチェンジをするまで基本的に性能が変わらないコンシューマ機と比べて、随時最新のパーツを導入できるPCに優位性を感じている人も多くなっているようですね。
デビット:そうなんですよね。トッププロだと勝敗に影響することもあるので、ハイスペックPCに乗り換えることも珍しくありません。徐々に日本でもゲーミングPCの必要性や有用性が浸透してきていると思います。
――レノボがeスポーツに期待していることはなんでしょうか。
デビット:今後、「Legion」は引き続きeスポーツを支援していきます。eスポーツはオンラインのみで大会も開けますし、どこでも誰でも参加できます。老若男女や障がいの有無も問いません。それはコロナ禍において、ほかのエンターテインメントよりも優れている点だと思っています。
しばらくはオンライン中心だと思いますが、オフラインイベントも折を見てやっていきたいですね。eスポーツには、ライブで大会を開催する良さもオンラインで大会を開催する良さも両方ありますので。新しいこともやっていきたいですね。
また、企業eスポーツ対抗戦をやっていることで、今後、社員はどんどんエキスパートになっていく可能性があると思っています。そういった社員を支援していきたい。
――eスポーツのエキスパート社員というと、eスポーツの実業団のようなイメージでしょうか。
デビット:そういう形もありだと思っています。実際、企業eスポーツ対抗戦をやっていることは、就活をしている学生にも知られていて、それを理由に入社を希望している人たちもいます。将来的にはeスポーツで名を馳せるような人が入社してくれるかもしれません。社会人がeスポーツを楽しむことは歓迎しているので、弊社の社員であるかどうかにかかわらず、eスポーツの副業も支援していきたいですね。
実際、レノボでは、新たな取り組みとして、副業人材を募集する「クロスワーカーズ」プログラムをスタートさせました。その一環で、平均年齢65歳以上の日本初のシニアeスポーツプロチーム「マタギスナイパーズ」に機材提供を行っています。チームメンバーには、ゲーミングPCのマーケティング活動の企画立案を行っていただくという内容です。
――最後にデビット社長のeスポーツプレイヤーとしての目標をお聞かせください。
デビット:大会はもっと参加したいんです。もっともっと招待されたいですね。とりあえずはゲーミングPCやゲーミングデバイスを扱っている企業の社長の中で、No.1プレイヤーになりたい。ゲーミングPCとしてLegionをずっとNo.1にしていきたいし、「ゲーミング社長」のトップにもなりたいですね。