マーケティング活動は、顧客に自社の商品やサービスに興味を示してもらい、最終的に購入や利用につなげてもらうことが重要です。効果的にマーケティングを行うには、消費者の購買行動をモデルとして理解しておく必要があります。
AIDMAは、消費者の購入プロセスを表したフレームワークです。商品やサービスを効率的に活用してもらうため、顧客がある商品やサービスを「利用する」と決めるまでにどのような過程があるのかを知っておきましょう。この記事ではAIDMAの概要や活用シーン、AIDMAに似たマーケティング関連のフレームワークについて解説します。
AIDMAの法則とは
AIDMA(アイドマ)の法則とは、1920年代にアメリカで提唱されはじめた考え方で、古くから広告やマーケティングの分野で活用されています。ここではAIDMAの法則の概要をご紹介します。
AIDMAのフレームワーク
AIDMAの法則は、ある消費者が商品やサービスを利用しようと決めるまでの間に、どのような行動プロセスを経ているのかをフレームワークで示しています。効果的にマーケティングを行うには、消費者が商品やサービスを購入するまでの心理を知ることが重要です。相手の気持ちに寄り添うことでマーケティングを成功に導く確率が高くなります。
AIDMA(アイドマ)の法則とは、以下に示す5つの要素の頭文字に由来しています。それぞれが何を示すのかをみていきましょう。
- Attention(注意)
- Interest(興味)
- Desire(欲求)
- Memory(記憶)
- Action(行動)
Attention
第1段階のAttentionは、消費者に「こんな商品・サービスがあるんだ」と知ってもらう段階です。消費者がそもそも商品のことを知らなければ、購入に至りません。
Interest
第2段階のInterestは、商品やサービスへの興味のことで「どんな商品なのだろう? 」と消費者が今売ろうとしているものに関心を示している段階です。まだ「買ってみたい」という気持ちには至っていません。
Desire
第3段階のDesireは、「あったらいいな」と欲しがる気持ちを持つ段階です。購買意欲を高めるためには、「よさそうだけれど本当に自分に合っているものなのかわからない」「価格が高すぎないか」といった消費者の不安を取り除いておく必要があります。
Memory
第4段階のMemoryは「欲しい」という気持ちを覚えている状態です。消費者は欲しいという気持ちが高まったとしても、「次の給料日になったら買おう」「ほかにもっといいものがあるかもしれない」とさまざまな思いが巡ることがあり、すぐ商品を購入するとは限りません。
Action
第5段階のActionは、商品を買おうとする気持ちが明確になっています。実際に商品を購入する段階です。
AIDMAがマーケティングに与える影響
購入までのプロセスと心理状態を把握することで、顧客満足度を高められるという点がAIDMAのメリットです。ここからはAIDMAがマーケティングにおいて重宝される理由を顧客満足度とカスタマージャーニーの観点から紹介します。
顧客満足度の考え方
商品は一度買って終わりではなく、顧客に「想像よりも良かった」と気に入ってもらうことでビジネスがより拡大します。顧客満足度とは、顧客が企業の商品やサービスにどの程度満足しているのかを示す指標です。商品を購入する前に期待していた度合いと購入後のよりも上回るようにする施策が欠かせません。
カスタマージャーニーの重要性
カスタマージャーニーとは、顧客が商品を知ってから利用するまでにたどるプロセスを「旅」に例えたもので、顧客の考えに寄り添い効果的なマーケティングを行うために欠かせません。
カスタマージャーニーを作る際は、主に利用してほしい顧客の姿を明らかにしたペルソナの設定も必要です。年齢や性別、生活パターン、嗜好などを明確化するとより具体的で顧客の視点に立ったカスタマージャーニーを作ることができます。
AIDMAの活かし方
最終的に購入に至らせるためには、5段階の購買決定プロセスに沿ったアプローチが欠かせません。カスタマージャーニーのフレームワークにAIDMAを用いる場合の使用例を紹介します。
Attention
商品を知ってもらうために宣伝を行います。
Interest
消費者が興味を持つかどうかは一瞬で決まるケースが多くみられます。商品やサービスを宣伝する場合には、顧客が好みそうな広告が欠かせません。SNSを活用したり芸能人を起用したりと目を引く演出で顧客の興味を高めます。
Desire
顧客が欲しいと思っている商品であることを示すために、Webサイトなどで商品の特徴や魅力の情報を発信します。
Memory
顧客が商品を「買いたい」と感じている気持ちを忘れないように、リマインドとしてさまざまな場所で宣伝を行います。テレビCMや駅広告、Webサイトのバナー広告、SNSなど想定する顧客が目にする可能性が高い場所でアピールします。
Action
いくら買いたい気持ちがあったとしても、店舗に在庫がなかったり購入する方法がわからなかったりすると商品が購入できません。そこで、顧客が「買いたい」と思ったときにすぐ購入できるよう、在庫管理やわかりやすいECサイトの構築、誘導を行います。また、購入者特典や期間限定など販売方法の検討も有効です。
AIDMA以外のフレームワーク
AIDMAはもう古い? 新たな購買決定プロセスのフレームワークとは
昨今、商品の購入にはインターネットが欠かせない要素として捉えられています。そのため、AIDMAの概念をベースに、インターネットによるツールを活用したプロセスを加えるフレームワークなども出てきています。
ここでは、AIDMA以外の消費者の購買決定プロセスのフレームワークを簡単にご紹介します。
AISAS
AISAS(アイサス)は、AIDMAの考え方を基にインターネットの活用を加えたフレームワークです。AIDMAと同様に、顧客はまず注意と興味を寄せる段階がありますが、購入前に商品を調べる「Search(検索)」があり、購入した後にはSNSなどで感想を「Share(共有)」するプロセスが含まれています。
- Attention(注意)
- Interest(興味)
- Search(検索)
- Action(購買)
- Share(共有)
AISCEAS
AISCES(アイシーズ)はAISASと同じく、消費者がインターネットを利用することを前提とした購買決定プロセスです。Searchで商品を調べた後に商品のWebサイトやユーザーの口コミなどを比較・検討をした上で購入に至ります。
- Attention(注意)
- Interest(興味)
- Search(検索)
- Comparison(比較)
- Examination(検討)
- Action(購買)
- Share(共有)
SIPS
SIPS(シップス)とは、AIDMAとは全く異なる購買決定プロセスで、SNSが購買決定に大きく影響することをモデル化したフレームワークです。大きな特徴は、一番目に共感のプロセスがあること。「いいね!」やリツイートなどで商品を知り興味を高める中で購買に至り、その後、消費者自身も口コミなどを共有する流れが示されています。
- Sympathize(共感)
- Identify(確認)
- Participate(参加)
- Share(共有)
AMTUL
AMTUL(アムツール)は、企業や商品について顧客から信頼を得て、リピーターになってもらうための購買プロセスを示したフレームワークです。信頼や愛着を高めるために、一次的な興味ではなく試用を重視したり実際に商品を利用した後で商品に愛着(ロイヤルティ)を感じてもらったりするプロセスまで考えられています。
- Aware(認知)
- Memory(記憶)
- Trial(試用)
- Usage(利用)
- Loyalty(愛用)
AIDCAS
AIDCAS(アイドカス)は、AIDMAと同じ頃から提唱されているAIDCA(アイドカ)を元にしたフレームワークです。AIDMAでは第4段階に欲しいと思った気持ちを記憶する「Memory(記憶)」の段階がありますが、AIDCAの場合の第4段階は「Conviction(確信)」になっています。また、最後に「Satisfaction(満足)」があります。
- Attention(注意)
- Interest(興味)
- Desire(欲求)
- Conviction(確信)
- Action(購買)
- Satisfaction(満足)
「Conviction(確信)」は「この商品を持つべきだ」という強い購買意欲であり、「Satisfaction(満足)」でリピーターとしての気持ちの高まりを示しています。ECモールのように商品を多数の店舗から選ぶのではなく、指名買いのダイレクトマーケティング向けの考え方といえます。
AIDMAの法則は顧客に寄り添うマーケティングの大原則
AIDMAの法則は古くから活用されているフレームワークながら、顧客視点で営業やマーケティングを行うためには欠かせない考え方です。
また、インターネットが一般化する中で新しい購買決定プロセスを示したフレームワークも登場しています。目標とするマーケティング施策を踏まえて当てはまるものを知りビジネスに活かしましょう。