米Microsoftは現地時間2021年11月9日に、および日本マイクロソフトは2021年11月25日に、Windows 11 SEを正式発表した。米国などではK-8(幼稚園年長~中学校)、日本国内は幼稚園~中学校を対象とした教育機関向けのWindows OSだ。
古い世代は「Second Editionか」と間違いそうになるが、Microsoftは公式FAQにて、「Student Editionの略ではない。HomeやProなどほかのエディションと明確に区別するため」の名称と説明している。Windows 10やWindows 11との違いは以下の図が分かりやすい。
上図はWindows 11 SEの公式サイトから引用したものだが、目に付くのはWindows 11 SEのチェックが外れている「Runs all Windows Applications(すべてのWindowsアプリが動作する)」だ。Microsoftは公式ブログで「Windows 11 SEは、教育の現場でもっとも利用されているMicrosoft 365 Appsなどの使用に最適化されている」と述べている。
ただ別の取材筋によれば、「すべてのアプリが自由に使えるものでないが、UWPアプリやPWA、Win32アプリは、IT管理者が事前にMicrosoftや日本マイクロソフトに申請することで動作可能」だという。具体的な工程は現時点で未定だが、過去の教育機関向けアプリが利用できる可能性は高い。なお、日本マイクロソフトは、「ウィンドウスナップを実行するためのスナップレイアウト数に制限を設けるなど、OS自体の軽量化も図っている」としている。
ここで、教育機関向けエディションとして2017年に登場したWindows 10 Sモードを思い出すかもしれない。Windows 11 SEとは異なり、UWPアプリは利用できたWindows 10 Sは、Office 365 for Educationの利用や、Microsoft Intuneによるデバイス管理を基本的な運用スタイルとしていた。
今回、Microsoftは、Windows 11 SEとIntune for Education、Office 365 Education、Minecraft: Education Editionを組み合わせた「Microsoft 365 A1 for Devices」をデバイスあたり4,128円(参考価格)で提供する。また、日本マイクロソフトは2020年5月に、文部科学省のGIGAスクール構想に沿った教育機関のICT環境構築を支援する「Microsoft 365 Education GIGA Promo」の提供を表明していた。この施策は国内オリジナルだったが、Windows 11 SEの登場やMicrosoft 365 A1 for Devicesのグローバル提供は、コロナ禍による教育環境の変容に応じたMicrosoftの回答なのだろう。
文部科学省が2021年8月30日に発表した速報値によれば、「一人1台」のPCを実現したのは96.1%にあたる1742自治体。残す3.9%の70自治体は整備を終えていない。PCの稼働率も、全学年で利用を開始した小学校での割合は84.2%にとどまる。
他方で、公立高校におけるPCの整備状況(一人1台)は2021年度末で19自治体。残る20自治体は2022~2024年度の整備を目標に掲げ、8自治体の予定は未定だ。現時点で国内の教育パスすべてに対して、ICT教育環境が整ったとは言いがたい。Windows 11 SEおよび搭載PCが、国内教育ICT市場に対してどれくらい影響を与えるかは日本マイクロソフトの奮闘しだいだが、文部科学省の教育情報セキュリティポリシーに関するガイドラインのように整備要件が整えば、Windows 10 Education、Windows 10 Sモード、Windows 11 SEと教育機関向けOSを提供し続けている優位性は大きな強みとなるはずだ。