地域に根差したCSR活動を行う企業は多いが、久光製薬は本社を構える地元・佐賀県鳥栖(とす)市にて、地元に根差す活動のひとつとしてアスリート支援も行っているという。
2021年5月には、佐賀県および県スポーツ協会と協定を結び、中高生アスリートのための寮を提供すると発表した。久光製薬がなぜ佐賀県の中高生アスリートの支援に乗り出したのか、その背景にある想いやビジョンを探ってみたい。
地域の中高生アスリートのための寮を提供
久光製薬は「サロンパス」で知られる1847年創業の老舗医薬品メーカー。2021年5月に佐賀県および県スポーツ協会と協定を結び、鳥栖市内で中高生アスリート向けの寮の整備に着手した。
この取り組みは「SAGAスポーツピラミッド構想(SSP構想)」推進の一環だ。。SSP構想とは、佐賀から世界に挑戦するトップアスリートの育成を通じ、スポーツのチカラを活かした「人づくり」「地域づくり」の推進を目指す佐賀県のプロジェクトだという。
SSP構想の短期目標は、「2024年の佐賀国民スポーツ大会で天皇杯を獲得すること」「2024年のパリオリンピック・パラリンピックに、佐賀ゆかりのトップアスリート15人を送り出すこと」の2つ。加えて、佐賀から世界に挑戦する新たなスポーツシーンを切り拓くことを長期目標にしている。
2022年4月に運用を開始するアスリート寮の規模は17室で、佐賀県内の学校に通学する中高生アスリートの入居を想定する。対象となる種目は現在のところ、レスリングや体操、駅伝などだ。
佐賀から世界に挑戦するアスリートの成長をアシスト
佐賀県では、SSP構想のもとスポーツのチカラを活かした「人づくり」「地域づくり」を進めているが、遠方からの進学を希望する中高生のための住環境が整備されていないことが課題になっていた。この課題を解決すべく、久光製薬の旧社員寮を一部改修し、佐賀県内の中学・高校に通うアスリートのための男子寮として活用することを決定。これによって、遠方からもスポーツのために鳥栖市内の学校に進学しやすくなる。
寮のコンセプトは『佐賀から世界へ挑戦するアスリートを育むDORMITORY』。県内外から佐賀県の中学・高校に通い、目標に向かって努力を重ねるアスリートに安心・安全な住環境を提供し、佐賀から世界に挑戦するアスリートの成長をアシストしたいとの思いが込められている。
寮では、他競技のアスリートとの交流によってアスリートとしての知識の幅を広げる機会を設けたり、アスリートのためのメニューで身体づくりをアシストしたりと、アスリート寮ならではのサポートを予定しているそうだ。
企業市民として地域とともに発展する
久光製薬は、「『手当て』の文化を、世界へ。」という企業使命のもと、創業の地である佐賀県から世界へ「手当て」の文化を伝える挑戦をする。そのなかで佐賀県から世界に羽ばたくアスリートの育成に取り組むSSP構想に賛同し、「佐賀県のスポーツ振興と地域活性化に貢献したい」との想いから、中高生アスリートへの寮の提供を決めたそうだ。
また地域活性化とスポーツ振興というテーマでは、現在V1リーグに所属する女子バレーボールチーム「久光スプリングス」の運営会社であるSAGA久光スプリングスおよび鳥栖市とともに、バレーボール事業を通じたさらなる地域・経済の活性化を目的とした連携協定も締結している。鳥栖市の情報発信のほか、次世代スポーツ選手の育成にも力を入れており、バレーボール教室や公開練習の実施、ジュニア選手との交流などにも取り組む。
「スポーツを楽しむ機会をより多くの人に提供し、年齢や障がいの有無、地域のスポーツ文化や環境に合った機会を創造することが重要」という考えのもと、スポーツの可能性を最大限に活かしながら社会課題の解決や持続可能な社会の実現を目指しているという。
また同社はスポーツに限らず、佐賀や九州に貢献するさまざまな地域支援の取り組みを行っている。九州本社での薬学部の学生を対象とした早期体験学習の受け入れや、地域の文化財の保護、地域の人々に生涯学習の機会を提供する市民講座の開催など、取り組みの内容は実に幅広い。
「企業市民として地域とともに発展することは重要」として、地域との共存共栄を大切にしている。今後も文化・芸術に関連した各種イベントを通じて地域の人々とコミュニケーションを図ることで、地域社会の発展に貢献していきたい考えだ。
地域の子どもたちとともに作った「久光製薬アートプロジェクト」
久光製薬は、東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会のオフィシャルパートナーにも名を連ねていた。大会前には、東京2020大会を盛り上げていくきっかけのひとつとして地域の子どもたちに「私が参加する東京2020オリンピック・パラリンピック」というテーマで絵を描いてもらい、久光製薬の各拠点の近隣や特設サイトで掲載。
参加校からは「子どもたちがオリンピックを感じるきっかけとなった」という声が寄せられており、近隣の保育園や小学校、中学校、特別支援学校に通う子どもたちの作品を前に、道行く人も自然と笑顔になっていたという。
「地域社会の一員」として、大小さまざまな方法で自治体や地域の人々とのつながりを深めている久光製薬。
今年に入って社内に「サステナビリティ推進委員会」を新設するなど、社会課題の解決や持続可能な社会の実現に向けて奮闘を続ける同社の取り組みからますます目が離せない。