最後の大一番は近藤七段が制してリーグ残留
渡辺明王将への挑戦権を争う第71期ALSOK杯王将戦(主催、毎日新聞社・スポーツニッポン新聞社)の挑戦者決定リーグ、11月24日にはリーグ最終局の藤井聡太竜王―永瀬拓矢王座戦、羽生善治九段―糸谷哲郎八段戦、豊島将之九段―近藤誠也七段戦が行われました。藤井竜王の挑戦は既に決まっていますが、それに花を添える全勝挑戦がなるかどうか。そしてリーグ残留枠の最後の一つを争う、豊島―近藤の直接対決も注目されました。
この日、まず最初に終局したのは羽生―糸谷戦、開始時点で羽生九段の残留と糸谷八段の陥落は決まっていましたが、お互いに盤を挟めばそのような状況は関係ありません。本局は後手番の糸谷八段が注文を付けて、序盤から力戦形の相居飛車となりました。中盤、次の角交換を狙って飛車を中段に浮いたのが羽生九段の好着想で、以下角交換を実現してから後手の攻め駒を責める展開に持ち込んだ先手がリードを奪います。糸谷八段も必死の抵抗を見せますが、自玉の頭である5筋から猛攻をかけられてはさすがにたまらず、羽生九段が勝利しました。
■近藤七段が直接対決を制して残留
残留争いの直接対決である豊島―近藤戦は先手近藤の矢倉対、後手豊島の居角左美濃となりました。豊島九段が先攻する形で戦いが始まりますが、強気な手順で受け止めた近藤七段がリードを奪います。攻守が逆転し、近藤七段は豊島玉を徳俵まで追い込みますが、最後の一押しである詰めろを掛ける前に、先手玉へ詰めろが掛かります。ここで先手玉の懐を広げる歩突きが最後の決め手で、自陣に猶予ができて勝負あり。大一番を近藤七段が制しました。
■永瀬王座が競り合いを制して藤井竜王を破る
豊島九段が頭を下げた直後に藤井―永瀬戦も終局します。こちらは永瀬王座の先手から相掛かりに進んでいました。中盤で「敵の打ちたいところに打て」の格言通りとも言える3筋での歩の先着が功を奏して、永瀬王座がリードを奪います。終盤で猛然と藤井竜王も先手玉を追い込みますが、ギリギリの見切りで攻めを余したのちにカウンターを決めた永瀬王座が制勝。藤井竜王の全勝挑戦を阻止しました。
リーグ最終結果は以下の通りです。
5勝1敗 藤井聡太竜王 挑戦
4勝2敗 永瀬拓矢王座・羽生善治九段・近藤誠也七段 リーグ残留
2勝4敗 豊島将之九段・広瀬章人八段 リーグ陥落
0勝6敗 糸谷哲郎八段 リーグ陥落
渡辺明王将と藤井聡太竜王による七番勝負は来年の1月9日に静岡県掛川市でスタートします。三冠を保持する王将と、四冠を持つ挑戦者、最強を決める戦いに要注目です。
相崎修司(将棋情報局)