「前言撤回」という言葉はビジネスを含めてさまざまなシーンで使われています。耳にする機会が多いものの、「何となくしか意味がわからない」「実際に使う自信はない」という人が多いかもしれません。
今回は前言撤回の読み方や意味、使い方を例文とともに紹介します。この機会に意味をしっかりマスターしましょう。
前言撤回とは
まずは前言撤回の意味とを読み方を把握しておきましょう。
前言撤回の読み方
前言撤回の読み方は「ぜんげんてっかい」です。「ぜんごんてっかい」と読む人も少なくないですが、これは誤り。一般的によく使われる言葉なので、読み間違いには注意してください。
前言撤回の意味
前言撤回には「前の発言を取り消す」といった意味があります。そもそも、撤回には「一度提出したものを取り下げる」という意味があります。法律用語としても使われ、民法上で意思表示をした者が、その効果を将来に向けて消滅させることを指します。
単体で使用する場合は、「撤回する」というように言います。やや硬い表現ではありますが、ビジネスシーンでは撤回を単体で使用するケースもあるので頭に入れておきましょう。
撤回する「前言」とは
「前言」というと、直前に口にした言葉のことだけを指すと思われるかもしれませんが、「自身の意見」というニュアンスも持ちます。
つまり、前言撤回は単に言葉を撤回するのではなく、自身の意見や考えを撤回、場合によっては否定することにもなるため注意が必要です。
前言撤回を使用するシーン
前言撤回は過去の自身の意見や発言などを取り消す際に使用します。一度何かの意見を表明したり、言葉を発したとしても途中で意見や状況が変わったりすることもあるでしょう。こういったシーンで前言撤回という言葉が使われるのです。
ネガティブな意味合いで使われるケースが多い
前言撤回は、どちらかと言うとネガティブな意味合いで使われることが多い言葉です。意見を取り消す、変えることはビジネスおいては相手からの信頼を失う原因にもなります。そのため、多用には注意が必要です。
また、人に対して「前言撤回してください」のように使用する場合は批判的に受け取られる可能性もあるため、慎重に言葉を選ぶようにしましょう。
逆に、相手から言われた場合はポジティブなニュアンスなのか、あるいはネガティブなニュアンスなのかを文脈から読み取り、正確に理解することがコミュニケーションにおいて重要となります。
前言撤回の類義語
前言撤回の意味を知ると同時に、表現の幅を広げるために類義語も押さえておきましょう。ここでは前言撤回と置き換え可能な類義語の中でも、代表的なものをピックアップしてご紹介します。
翻意
翻意は「ほんい」と読み、意思を覆すことを意味する言葉です。前言撤回は以前の発言や意思表明などを取り消すという意味ですが、翻意は「逆の意思を表す」という意味になります。使い方によっては前言撤回と意味が変わる可能性があるという点に注意すれば置き換えも可能です。
前言撤回の英語表現
前言撤回を英語で表現すると「Take back the words」または「 Take back what one’s just said」となります。いずれも「前に言った言葉を取り消す」「巻き戻す」といった意味があります。
前言撤回の例文
前言撤回という言葉の意味がわかっても、具体的な使い方がわからないという方も多いでしょう。意味を知るだけでなく、使いこなせなければコミュニケーションに活かせません。ここからは例文を使いながら、具体的な前言撤回の使い方をご紹介します。
ネガティブな表現の例文
前言撤回はネガティブな表現として使われるケースの多い言葉です。ここではまず、ネガティブ表現の例文をご紹介します。
- この商品を購入すると言ったが、思っていたものと違ったので前言撤回する
- 会議に参加すると言ったが、急用が入ったので前言撤回させていただきます
- 前言撤回を繰り返すのであれば君の言葉はもう信用できない
- 何もかも前言撤回すれば済むわけではない
- 契約の準備を進めるように言ったが、相手の対応が悪いので前言撤回する
前言撤回は一度表明したことを覆す形になるため、状況や心境などが変化した際などに使われます。また、前言撤回は人に対して批判する際にも使われる言葉の一つでもあります。ただし、批判に使うとやや強い表現になるため、注意が必要です。
ポジティブな表現の例文
前述の通り、前言撤回はネガティブな表現で使われることが多い言葉ですが、ポジティブな表現も可能です。ここでは前言撤回のポジティブ表現を例文とともにご紹介します。
- 君には失望したと言ったが、現在の活躍をみると前言撤回せざるをえない
- この商品は買わないと言ったが、ここまで高性能であれば前言撤回する
- 商談は失敗だと言いましたが、状況が大きく変わったため前言撤回します
- この計画は実行不可能だと言ったが、革新的なアイデアが生まれたので前言撤回する
- 前半戦は苦戦を強いられていたため、「勝てない」と言ったが後半の快進撃をみて前言撤回した
このようにネガティブな発言や意見などを覆す形でも前言撤回という言葉は使われます。状況が好転したことを表現することができるため、ポジティブな表現となります。
ただし、いくらポジティブな表現とはいっても過去の発言を撤回・否定することに変わりはありません。多用には注意しましょう。
類義語を使った例文
最後に前言撤回の類義語である翻意の使い方を例文とともにご紹介します。
- 我が社と契約すると言っていたのに翻意されてしまった
- 彼はパーティへの参加を希望していたのに直前に翻意してきた
- 簡単に決めたことを翻意するのでは信用できない
- 彼は気まぐれで直前に翻意されることも多いので注意が必要だ
翻意という言葉は、それまでとは逆の意思を示す際に使われる言葉です。ネガティブな表現で使われたり、やや批判的な言い回しになったりすることが多いので注意が必要です。
相手からこういった言葉を言われてしまった場合は、ネガティブなニュアンスを持ち批判されている可能性があるため文脈や内容から慎重に意味を考えて対応するようにしましょう。
前言撤回は正しく使いこなすことが重要
前言撤回には「以前の発言や意思表明などを取り消す」という意味があります。状況や意見が変化した際などに使う言葉です。便利な言葉ではありますが、自身の発言を否定することになるため、ビジネスシーンなどで使用する際には注意が必要です。多用すると信用を失う恐れもあります。
また、翻意といった類義語もありますが、これらもネガティブな表現で批判的になるケースも多いため扱いには気をつけましょう。できれば前言撤回する必要がないように、発言や意思表明には慎重になることが大切です。