秋冬のインターンシップや企業によってはエントリーもスタートし、本格的になってきた23年卒の就職活動。しかし、コロナ禍において自己PRを行うための実績が作れず、どうすればいいか悩んでいる就活生が多いようだ。

今から、どのようにしてガクチカ(学生時代に力を入れたこと)を作っていけばいいのだろうか。就活生のキャリア支援を行っている『dodaキャンパス』編集長 桜井貴史さんに話を伺った。

  • 自己PRのネタがなくて困っていませんか?

今からできる2つの方法

「多くの就活生は、ガクチカのネタがないと悩んでいますね」と話す桜井さん。

この2年間、新型コロナウイルス感染防止のため外出自粛などが続き、自己アピールできる留学、部活やサークル、ゼミ、アルバイトなどが軒並みできなかったからだ。しかし、23卒の就活生にとっては、秋冬のインターンシップだけでなく企業によってはエントリーもスタートし、このまま手をこまねいてもいられない。

そこで、桜井さんが今からできる2つの方法をアドバイス。

1つ目は「いま一度、日々の活動を振り返ってみること」。過去の経験のなかで自分が感じたことや周りから言われたことを参考に、その時「どんなスタンスで、どのように振る舞ったのか」を想起して、自分らしさが出せた言動を探してみることだ、と言う。

2つ目は「自ら機会を創り出してみること」。コロナ禍で、減ったチャンスもあるが、増えたチャンスもあるので、その機会をフル活用していくこと。特に後者においては、今からでもすぐに実績が作れるためチャレンジすべきだと、言葉に力が入る桜井さん。

「日常でいえば大学でのリモート授業です。インターネットなどで予習を行う。そして授業中はカメラをオンにして、積極的に意見を述べる。授業終了後は、チャットで教授に質問してやりとりを行う。これらを意識して取り組んでいる学生は、授業に消極的な学生に比べて、学習力や思考力が磨かれていきます。

就職活動においても、オンラインなどの企業のグループ面接などでも、周りの話を聞きながらも、自分の意見を分かりすく発言する力が身に付いているので、役に立つこともあるでしょう。もし、今はまだできていないなら、そこから始めてみる価値はあると思います」

コロナ前は、教室という同じ空間で授業を行っていたので、周りから影響を受け、能力や意欲などに大きな差は生まれなかった。しかし、授業がオンライン化し、その差は如実に広がっていると言う。

「これから世の中は、よりリアルとオンラインのハイブリッドになっていくので、人との付き合い方も含め、すごく差が出てくるだろうと思います」と、桜井さんは就活生の行動に警鐘を鳴らす。

興味のある社会人向けセミナーへ参加してみる

また、オンライン化が進んだことで学生にとって増えたチャンスがもう1つある。それは、ビジネスマン向けのさまざまなセミナーやイベントに以前より自由に参加しやすくなったことだ。

「今までは、学生が社会人向けのセミナーに参加するのは、見た目の装いも含め、敷居が高かった。ところが、オンライン化が進んだことで身なりなどを気にせずに参加できたり、アーカイブの動画セミナーのように、いつでも視聴できたりするようになってきました。意識の高い学生はそういうイベントに積極的に参加しています」

もちろん、専門用語が普通に使われるなど、そこでの内容が難しすぎて、学生には理解できないセミナーもある。しかし、そういった場所に参加し、社会人と交流したり、新しい知識を得たりすることで、自分のやりたいことや行きたい企業などが見つかるようになり、インターンシップの面接などでも活かせるようになると言う。

「例えば、IT企業のインターンシップへエントリーする時に、『ITエンジニア向けのセミナーに参加して、今後ITインフラはクラウドにどんどん置き換わっていくという話を聞いて興味を持ち、実務体験をしたくて応募しました』と話す学生と、『これからはITが必要になると思い……』といった、よくある動機しか話せない学生では、企業の人事担当者が抱く印象は明らかに違います。行動が制限されるコロナ禍において、自ら主体的に欲しい情報を取りにいける学生は、入社後も積極的に学ぼうとする意識を持っていると思われるので、企業に対してのアピール度も高いです」

このように、企業ではラーニングアビリティ(自ら学ぶ力)のある人材を求めているため、これまで留学や部活、バイトなどをできずに過ごしていた就活生も、それで諦めずに、今できることに主体的にチャレンジすることが、自らの将来を切り拓く一歩になるようだ。

取材協力:桜井貴史(さくらい・たかふみ)

大手人材サービス会社にて、新卒採用サービスや日本初の大規模Web説明会サービスの立ち上げ、グローバル新卒採用事業等を推進。2016年にパーソルキャリアに入社し、ベネッセコーポレーションとの合弁企業であるベネッセi-キャリアにて『dodaキャンパス』を立ち上げ。現在は、大学向けキャリア支援サービスも含め、同社の商品サービス全般を統括。