理化学研究所計算科学研究センター(R-CCS)は11月16日、運用中のスーパーコンピューター「富岳」がTOP500、HPCG、HPL-AI、Graph500の4部門で4期連続の世界1位を獲得したと発表した。

  • スーパーコンピューター「富岳」 画像は理化学研究所から

米国で開催されている国際会議「SC21」にあわせて発表された内容。TOP500は毎年6月と11月にスーパーコンピューターの性能をランキング形式で公開しており、「富岳」が1位を獲得するのは2020年6月以来4期連続。富岳はTOP500に加えて、さらにHPCG、HPL-AI、Graph500の3部門でも1位に輝いている。

今回発表されたトップ10にはあまり変化がなく、AMD EPYCとNVIDIA A100、Mellanox HDR Infinibandを組み合わせたMicrosoft Azure「Voyager-EUS2」が10位にランクインした以外にランキングの変動はなかった。

  • TOP500のランキングから抜粋。圧倒的な性能差で富岳が1位に君臨している

TOP500ではLINPACK性能が指標として用いられており、富岳の性能は442.01PFLOPS、実行効率は82.3%となっている。2位には米国エネルギー省の「Summit」が148.6PFLOPSでランクインしており、富岳は約3倍という性能差を実現している。

HPCGでは16.00PFLOPSを達成し、この部門でも4期連続の世界1位。産業利用などにおける実際のアプリケーションを効率よく処理し、高い性能を発揮できることを証明しているという。2位は同じくSummitで、この部門では富岳に約5.5倍もの差をつけられている。

HPL-AIは、倍精度演算器のパフォーマンスを計測するTOP500やHPCGとは異なり、AI計算などで活用されている単精度や半制度演算器の性能も加味する新しめの指標。富岳は2.004EFLOPという高スコアで、ここでも4期連続の1位となっている。2位はSummitで、性能差は約1.4倍。

また、Graph500でも102,955GTEPSという極めて高いスコアをマークし、ここでも1位。このテストでは極めて大規模なデータを処理するため、富岳のような大規模ネットワークを持つシステムでは通信性能の最適化も必要になるという。テストでは、約2.2兆個の頂点と35.2兆個の枝で構成される超大規模グラフにおける幅優先探索問題を調和平均0.34秒で解決。Graph500のスコアは102,955GTEPSとなり、1位を獲得した。2位には中国「Sunway TaihuLight(神威・太湖之光)」が23,756GTEPSでラインクインしており、富岳との性能差は約4倍となっている。

富岳はA64FXプロセッサを採用し、7,630,848コアのCPUと5,087,232GBのメモリで構成されるスーパーコンピューター。Tofu interconnect Dによって相互に接続されており、Linpackにおけるパフォーマンスは442,010TFlop/s(いずれもTOP500における情報)。単精度などにおいて1,000PFlops(1 Exaflop/s)を超えるピーク性能を備えており、TOP500は「富岳は最初のエクサスケールスーパーコンピューターとして紹介されることがある」と述べている。