それぞれにとっての大きな一番は相掛かりに
渡辺明名人への挑戦権を争う第80期順位戦、(主催、朝日新聞社・毎日新聞社)、11月16日にはB級1組の藤井聡太竜王―松尾歩八段戦が行われています。先後は事前に決まっており、藤井竜王の先手番です。
ここまでリーグ戦績は藤井竜王が6勝1敗、松尾八段が1勝5敗です。両者の対戦成績は藤井竜王の2勝0敗で、直近の対戦は今年3月の竜王戦2組。藤井竜王の絶妙手▲4一銀が飛び出した一局と言えばおわかりでしょうか。
■藤井竜王は目下自力昇級圏内の二番手
藤井竜王は現在、7勝0敗の佐々木勇気七段に続く二番手で、A級への自力昇級の圏内にいます。トップの佐々木七段、現在三番手の千田翔太七段との対局が残っていますから、まだまだ厳しい戦いは続きますが、このまま1敗を守り続ければA級への道が開かれることになります。懸念されるのは竜王戦七番勝負を戦い終えたばかりで、疲労が残っているのではということですが、連戦を行う上での体調の整え方もトップ棋士に求められる技術と言えます。今年はすでに何度も連戦が続きながらこの勝ちっぷりですから、そのあたりの心配は杞憂でしょうか。
対する松尾八段。成績を見る限り、今期の順位戦は不調ですが、前節で待望の初白星を上げて、流れを変えたいところです。他の棋戦を見ると、竜王戦2組ランキング戦では藤井竜王の絶妙手に屈しましたが、昇級者決定戦に回ってからはきっちり勝ち切って1組復帰を果たしています。強敵を相手に白星を上げれば、残留に向けて大きな弾みとなるでしょう。
■戦型は相掛かりに
両者の戦いは初手合いが松尾先手での中飛車、2局目が藤井先手での横歩取りでした。藤井竜王はこれまでの公式戦で振り飛車を一局も指したことがない、純然たる居飛車党。対して松尾八段も、居飛車穴熊や横歩取りで「松尾流」と名がつく指し方があるように、基本的に居飛車党ですが、裏芸としての振り飛車もあります。16日の午前10時に東京の将棋会館で始まった本局は松尾八段が2手目に△8四歩と突いて居飛車を明示、相掛かりに進んでいます。
対局者それぞれが昇級と残留に向けての大一番、勝利の女神が最後に微笑むのはどちらでしょうか。
相崎修司(将棋情報局)