セールスフォース・ドットコムは11月11日・12日に、オンラインイベント「Salesforce Success Anywhere World Tour」を開催した。初日は、代表取締役会長 兼 社長の小出 伸一氏が、「Welcome to the Trusted Enterprise - 「信頼を生み出す企業」になるために」というテーマの下、基調講演を行った。同社は今年7月に、約3兆円でSlackの買収を完了したが、それ以来日本では初めてのイベント開催となる。この大型買収について、同社はどのようなメッセージを出したのだろうか。
冒頭、小出氏は「新型コロナウイルスの登場で、働き方、社会のつながり方がかわり、私たちは今、新しい世界にいる。そして、さまざまな課題が明らかになり、パンデミック、人材不足、サステナビリティなど、向き合わなければならない課題がいくつかある。そうした中、企業は信頼を得る企業になるためにどう取り組むべきか、考える必要がある」と述べ、米国セールスフォース・ドットコム プレジデント 兼 最高マーケティング責任者のサラ・フランクリン氏に話をつないだ。
信頼を得る企業になるために必要な5つの要素
フランクリン氏は、「信頼を生み出す企業になるためには、ビジョンがなければいけない。信頼を生み出す企業になることで、社会変革をもたらす。利益だけを追求していると、顧客や従業員は離れていく」と述べた上で、信頼を生み出す企業に必要な要素として、「信頼」「カスタマーファースト」「Digital HQ」「健康と安全」「サステナビリティ」を挙げた。
セールスフォースは、同社のソリューションとSlackの上に構築する仕事のための空間「Digital HQ」と定義している。フランクリン氏は、Digital HQについて、「企業に柔軟性を、また、チームに最適な働き方をもたらす。キーコンポーネントはSlackであり、効率的に作業することを可能にする。われわれはDigital HQを活用することで、従業員の生産性が16%向上するなど、驚くべき効果を上げている」と説明した。
「サステナビリティ」に関しては、「気候変動の影響を受けない地域はない。セールスフォースはその対策のリーダーであり、3000億ドル投資することを発表している」とフランクリン氏は述べた。また、同氏は同社が2019年に発表した、気候変動対策を推進し、カーボンニュートラルに向けた世界の取り組みを強化するカーボンアカウンティング製品「Salesforce Sustainability Cloud」を国内でも来春に提供することを明らかにした。
同社は2021年、世界各地の拠点で使用するすべての電力に相当する再生可能エネルギーを購入し、100%再生可能エネルギーへの転換を達成したことを発表している。
そしてフランクリン氏は、同社のプラットフォーム「Customer 360 Platform」のビジョンが「企業が顧客と信頼関係を築くためのツール」「部門や場所を超えて情報収集できるツール」であると訴えた。同プラットフォームは、顧客に関するあらゆるデータを1カ所に集めて、顧客を全方向からとらえることを可能にするもので、「Hyperforce」、「Einstein」(AIプラットフォーム)、「Customer 360」、「Slack」から構成される。「Hyperforce」はインフラの基盤であり、2022年末までに16地域で本格稼働が計画されている。同氏は、「新しい世界に対応し、信頼を生み出すため、1年かけてCustomer 360 Platformを構築してきた」と語った。
セールスフォース・ジャパンの4つの施策
続いて、小出氏が日本における活動について説明した。日本では、「信頼」「カスタマーサクセス」「イノベーション」「平等」という4つのバリューに基づき、「コロナ禍での顧客の支援」「DX人材の支援」「SDGs」「テクノロジーの社会実装支援」行ってきたという。
「コロナ禍での顧客の支援」については、 厚生労働省主導の民間検査機関でのPCR検査状況などに関する 「新型コロナウイルス情報連携基盤」の構築支援、 新型コロナ保健所業務支援クラウドパッケージの無償提供、「特別定額給付金管理システム」構築などに取り組んできた。こうした取り組みの中で、小出氏は「クラウドのアジャイル開発の強みを生かし、短期間でシステムを構築できた」と語った。
DX人材の育成に関しては、若い人がスキルを習得できるよう 自治体のサポートを行っており、また、SDGsに関しては、「日本の社会課題を解決する可能性が高いスタートアップに投資している」と、小出氏は述べた。
社会実装支援については、「政府、企業、市民社会における積極的な連携を行い、マルチステークホルダーを巻き込んだ活動を行っている。トレイルブレーザーと共に、企業が社会を良い方向に変えることを実践していく」と、小出氏は語っていた。