「The Modelってどういう意味? 」「営業効率を最大化できるって本当? 」このような疑問を抱いている方も多いでしょう。The Model(ザ・モデル)は、営業やマーケティングの分野で近年注目されるようになったフレームワークの一つです。2019年に提唱され、現在多くの企業で実践されています。
The Modelの導入でなぜ営業効率を最大化できるのか、本当に営業効率を最大化することができるのか。この記事ではThe Modelの意味や導入実例をご紹介します。
The Modelとは
The Modelは、IT企業のセールスフォース・ドットコムで実践されてきたフレームワークです。概念や由来、注目されるようになったきっかけについてまとめました。
The Modelの概念の要約
The Modelは営業効率をより高めるための営業プロセスモデルの一つです。営業活動の流れを細分化し、顧客の獲得やサポートなどに切り分けることで一つひとつの効率を高められるとされています。
細分化する、というとそれぞれが個々に仕事をするようなイメージを持つかもしれませんが、The Modelはあくまでも一連の流れを細分化するだけで、営業活動を複数人で協業し、共に共通の成果目標を達成していくモデルです。
一人ひとりがそれぞれの分野で最大限の成果を出し、次のプロセスにつないでいくリレーのようなものだと考えればイメージしやすいかもしれません。
セールスフォース・ドットコムがモデル
The Modelを実践していたセールスフォース・ドットコムは、営業支援ツールのSFAや顧客関係性をマネジメントするCRM、マーケティングを自動化するMAなど数々のビジネスツールを開発し、1999年の設立から成長を続けてきました。
The Modelはセールスフォース・ドットコムの成長を支え、提供するビジネスツールを最大限に活かせる仕組みでもあります。
The Modelを世間に広めた本
The Modelが世間に広く認知されるようになったのは、2019年に書籍『THE MODEL マーケティング・インサイドセールス・営業・カスタマーサクセスの共業プロセス』が発売されてからです。
『THE MODEL』の著者は福田康隆氏
著者の福田康隆氏は、セールスフォース・ドットコムでの勤務を経て、マルケトの代表などを務めた人物。本書の中でThe Modelについての紹介があり、そこからさまざまな企業に導入されるようになりました。
The Modelが注目される理由
The Modelは営業分野においては新しい概念とされていますが、ひとつの仕事を分業するという観点においてはそう珍しいビジネスモデルではないといえます。
今になって注目されているのは、この数年でサブスクリプションサービスが拡大したことが原因といわれています。それまでは売買契約が成立すれば完了とされていましたが、継続的に利用することが重視されるようになってきたのです。
また、前述したようなSFAやCRMといった分業を可能とするシステムが構築されてきたため、The Modelを活用しやすくなったのも大きなポイントです。
The Modelの特徴
The Modelの名前だけは知っているけれど、「具体的に何をするのか、どのような特徴があるのかまではわからない」という方もいるでしょう。The Modelの特徴や具体的な活用方法について説明します。
営業活動のプロセスを細分化する
The Modelの最大の特徴は、営業プロセスの細分化にあります。具体的には下記の4つの部門に細分化します。
・マーケティング
・インサイドセールス
・外勤営業
・カスタマーサクセス
細分化することでそれぞれが最大限の成果を出すことに集中でき、結果的に効率よく全体の営業目標を達成できる、という考え方です。
従来の営業組織との違い
これまでの営業組織は、新規顧客の開拓から契約の完了までを1人で責任を持って行うことが大半でした。顧客をよく知り、丁寧なサポートをするには一貫して1人で対応するほうが効率的と考えられていたからです。
しかし、営業のノルマを達成する、営業目標を達成するには新規開拓の数をこなす必要があり、そうしたときに1人で営業活動を一貫して行うのはかえって非効率的になります。
カスタマーサクセスを重視できる
The Modelでは営業プロセスを細分化しているだけなので、契約に至るまでの基本的な営業の流れは変わりません。しかし細分化することで、カスタマーサクセスを重視しやすくなるとされています。
これまでのように1人で営業を貫徹しようとすると、新規開拓に行く必要もあるため、一度契約した顧客に対する契約後のサポートがしにくい状況になります。継続する顧客が増え続ければ、なおのことカスタマーサクセスまで手が回らなくなってしまいます。
福田康隆氏の著書『THE MODEL』の中でも、カスタマーサクセスの重要性について触れられています。新規顧客を増やせても既存顧客が離れてしまえば、企業は成長できません。新規顧客を増やしつつ、既存顧客に長く続けてもらう方法を考える必要があります。
The Modelは営業の効率を高めるだけでなく、カスタマーサクセスを重視し、リピーターを増やすことに特化した仕組みともいえます。
サブスクリプション型にマッチ
上記の理由から、The Modelは特にサブスクリプション型のサービスを展開する企業にマッチしたビジネスモデルといわれています。
サブスクリプション型サービスは、いかに多くの継続顧客をつくれるかどうかがビジネス成長のカギを握っています。顧客に継続的に利用してもらうためには、顧客満足度を重要視する必要があります。カスタマーサクセスに重点を置きやすいThe Modelは、サブスクリプション型サービスを提供する企業にマッチした仕組みといえるでしょう。
The Modelの仕組み
The Modelは営業プロセスを4つの部門に細分化するビジネスモデルです。一つひとつの部門で目的とゴールを明確にし、数値化することで営業の効率を上げることができるでしょう。それぞれの部門の目的やゴール、数値化する項目について解説します。
マーケティング
潜在顧客の開拓を目的とするマーケティングは、獲得する見込み客数をゴールとして設定できます。(来訪者数×獲得率=見込客数)と考え、獲得率を高めるマーケティング施策を打ち出すことに集中すると、見込み客数を増やせるでしょう。
インサイドセールス
インサイドセールスの目的は、見込み客を育成し案件数を増やすことにあります。主な業務内容は、マーケティング部門でリスト化された見込み客に対し営業をかけることです。
メールや電話などを活用して営業活動を行い、外勤営業につなげていくのが役割です。(見込客数×案件化率=案件数)と考え、ゴールには外勤営業につなげる案件数を設定するといいでしょう。
外勤営業
具体的な商談の受注を完了させ、管理するのが外勤営業の目的です。(案件数×受注率×受注数)と考え、一定の受注数をゴールに定めたうえで受注率を高めていくことが大切です。インサイドセールス部門が顧客と築いた関係性を引き継ぎ、具体的なクロージングまでを行う、営業の要ともいえるプロセスです。
カスタマーサクセス
契約後の顧客がどれくらいサービスの利用を継続しているか、定着率を追うのがカスタマーサクセスの目的です。受注数×更新率=継続率と考え、継続顧客数をゴールに進めていきます。顧客満足度を調査しながら、契約の更新や新商品の提案を行うのが業務内容です。
The Modelのメリット・デメリット
営業活動を細分化することでそれぞれの業務の成果を最大化し、営業の効率を高めるのがThe Modelのメリットですが、当然デメリットもあります。ここからは、The Modelのメリット・デメリットについてそれぞれ解説します。
The Modelのメリット
【営業効率を高められる】
これまでもお伝えしている通り、The Modelの最大のメリットは営業効率を高められることです。従来の営業組織では新規開拓から契約完了までを1人で行っていたため、継続顧客のアフターフォローにまで手が回らない、あるいはアフターフォローに重点を置くと新規開拓の数を追えない、というデメリットがありました。
The Modelは営業活動で必要なプロセスを細分化することで、営業効率を高めます。アフターフォローができるので継続率を高められるうえ、見込み客への再アプローチもしやすくなるので、新規開拓の幅も広がるでしょう。
【個々の部門の弱点を把握しやすい】
また、The Modelを導入すれば個々の部門の弱点を把握し改善しやすくなるというメリットもあります。1人で営業活動していると、弱点を洗い出しにくく、洗い出せたとしても改善する余裕がないということもありますが、複数人で活動していればその心配も必要ありません。
【人の入れ替わりにも対応しやすい】
また、人の入れ替わりがあったときに対応しやすいのもメリットです。営業担当が途中で変わってしまったとき、1人で営業活動していると顧客との関係をまた一から構築しなければならなかったり、引き継ぎをきちんとしていたとしても顧客が離れてしまったりするケースもあるでしょう。複数人が携わる体制になることで、それを阻止できる可能性が出てきます。
The Modelのデメリット
【組織が分断される】
The Modelの最大のデメリットは、営業活動の細分化による組織の分断です。前述のとおり、The Modelはリレーのように次の部門にバトンを渡していくことで機能するビジネスモデルですが、それぞれの部門が部門だけの目標数値を追うあまり、中身が伴わないという問題も発生しがちです。
たとえば、インサイドセールス部門で顧客と関係を築き、外勤営業につないだものの、外勤営業で受注まで話を進めようとすると温度感が異なり「それほど興味はなかった」と断られてしまう、という事態も起こりえます。
そうしたトラブルを避けるためにも、営業活動全体の目標設定を明確にしておくこと、各部門間のコミュニケーションを円滑にすることが重要になります。
The Modelの導入事例
The Modelを実際に導入している企業の事例を紹介します。自社にマッチするかどうかの指標としても、参考にしてみてください。
Sansan
クラウド上で管理できる名刺サービスを提供しているSansanは、事業が急成長したために営業スタッフを増員、それに伴いThe Modelを導入しました。今では、成長を継続していくための重要な基盤になっているといいます。
manebi
eラーニングサービスを提供するmanebiは、派遣労働者がスキルアップするためのプログラムを揃えた「派遣のミカタ」をメイン事業としています。派遣労働者のキャリア形成育成制度の導入が派遣会社に義務付けられたことをきっかけに、「派遣のミカタ」導入企業を増やす施策の一つとしてThe Modelを導入しました。
導入前は社員1名と複数のインターン生で営業活動を行っており、新規開拓からクロージングまでを1人が行う体制だったため、案件の取りこぼしがあっただけでなく自分がどれくらいの案件を抱えているのかもわからない状態だったといいます。 しかしThe Modelを活用し、それにあったツールも導入したことで案件数を可視化できるようになり、ToDoリストも明確になって顧客へのアプローチがスムーズにできるようになりました。
The Model(ザ ・モデル)の実践で営業効率を高めよう
The Modelの意味や由来、具体的な方法についてまとめました。 The Modelは営業プロセスを分業することで、効率を高めるフレームワークのことです。
組織が分散する可能性があるというデメリットもありますが、それをカバーするツールも増えています。しっかりとした体制を構築すれば、大幅な売上アップにつながる可能性があるので、新たな営業戦略で成長したいと考えているならば、ぜひ検討してみてはいかがでしょうか。