JCOMは11月15日、メディア向け発表会を開催し2021年12月~2022年春にスタートする新サービスをアナウンスしました。MVNOブランドのJ:COM MOBILEのほか、J:COM NET(インターネット)、J:COM TV(ケーブルテレビ)などを展開する同社ならではのサービスが用意されています。
家庭内のネット環境を改善
まずはJ:COM NETの進捗から。プレゼンの冒頭、登壇した代表取締役社長の石川雄三氏は「日本のマンション、アパートなど集合住宅の64%には、光回線に適した配管がありません。光なら1Gbpsが出るのに、棟内は100Mbpsしか出ないこともあります」とし、住宅環境がボトルネックになっていると指摘します。
そこでJ:COMでは最新のケーブルテレビのデータ転送方式DOCSIS 3.1を展開中。2021年度末には、提供エリアの分譲マンションの4割ほどで最大1Gbps、さらには戸建て住宅なら最大10Gbpsを実現できるとアピールします。
宅内に向けては、クラウド+AIが最適なWi-Fi環境を自動構築する「メッシュWi-Fi」を導入中。これまでの2年間で、ユーザー環境は実測値にして平均223%もスループットが改善したと成果を強調します。そのうえで、2022年春にはクラウド+AI機能のほか、バンドステアリング、チャンネルステアリングの機能を搭載したモデムを提供すると発表しました。
新プランの「お得NET」は10月1日より提供をスタート。通信速度別に1G/5G/10Gの設定で、1Gコースなら月額利用料5,258円から利用できます。
そして、指定したネット動画サービス(NETFLIXやJ:COM メガパックVIDEOなど)と契約すれば永年無料(無償レンタル)で利用できる「J:COM LINK mini」も2022年春より導入予定です。
J:COM MOBILEも充実へ
MVNOサービスのJ:COM MOBILEでは、2022年2月より「ギガ盛セット」を開始します。J:COMの他サービスを同時に利用することで、月間に使用できるデータ容量が大幅に増量されるという内容です。石川氏は「お値段は据え置きのまま500円上のサービスが利用できます。ほとんどのお客様に自動適用できると思います」と説明します。
端末ラインナップも拡充中です。J:COM MOBILEでは8月に5G対応を開始しました。Androidの5G端末のほか、10~11月にはiPhone 12/iPhone 12 miniにも対応しています。一括購入のほか、24回払い/36回払い/48回払い(iPhone 12シリーズのみ)もできるようになりました。
「48回払いとなると4年間。補償プランの充実のため、AppleCare+ for iPhoneにも対応しました。価格も抑え、iPhone SE利用時には月額580円でご利用いただけます」と石川氏。さらにはJ:COM MOBILE独自のサポートを充実させることで、ほかのMVNO事業者との差別化を図っていきたい考え。初期設定サポート、アプリ「MY J:COM」、おまかせサポートなどを用意しています。
このほか、余ったデータ通信量の翌月繰り越し、容量超過後も下り1Mbpsを維持(10GB/20GBコースのみ)、J:COMオンデマンドやJ:COMミュージックではデータ通信量フリー、公衆Wi-Fi対応、音声オプションなど、MNO並みのサービスを目指しています。
来年の春商戦に向けて、若年層に向けた割引サービスも開始します。「U26ヤング割」は1GB月額1,078円で利用できるほか、はじめの6カ月間は5GBが550円、10GBが1,100円、20GBが1,650円で利用可能。前述のギガ盛セットとの併用も可能で、12月1日から開始します。また、すでに提供中の「社会人応援U26割」のほか、ネットとモバイルの新規同時申し込みで6カ月間の大幅割引が利用できる「新生活応援!U26割」も新たに用意しています。
楽天モバイルの影響は?
記者団からの質問には、引き続き石川氏が対応しました。
世界的な半導体不足の影響について聞かれると「モバイル以外にも、様々な機器に納期の遅れが生じているのは事実です。ただ1年くらい前から、資材についてはロングスパンで調達してきました。市場ではiPhone 12シリーズも品薄ですが、KDDI、アップルと協議して先を読んだ調達をしています。それほど遅れることなく、ご提供できると考えています」と回答。
MNOがMVNOに回線を提供する際の接続料が4月に値下げられたことに関しては「政府の方針で、今後も接続料が一定率で下がっていくことが決まりました。それを計算の上で、今回のギガ盛も導入しています」と言います。MNOでは料金値下げを実施し、さらに廉価なオンライン専用プランを導入するなど攻勢を強めていますが、その影響については「もちろんありますが、サポートの部分で差別化していきたい。オンライン専用プランが世に出てから(J:COM MOBILEの新規契約者数が)ガクンと下がった実態はありません。ただ、かなりの勢いで伸びていたものが、なだらかになったのは事実です。他社とは明確な差別化をして、シニア層が多い既存のお客様に向けて、便利なサービスをしっかりご提案していきます」と、サービス強化で対抗する姿勢を見せました。
モバイルの契約者数については非公表。ただ「MVNOのなかでは大手の一角に入っていると自負しています」としました。
楽天モバイルが0円スタートのプランを開始したが……との質問には「正直に言うと、楽天さんへMNPがどう動いていくか、かなり注視してきました。実態は、ほとんど変わらない。大きな数字にはなっていません。楽天さんのターゲッティングと私たちのお客さんは違うのだろうと思います。油断はしていません。サポート、テレビ、ネット、モバイルの組み合わせで他社と違う価値の提供をしていけたら」。
年下げではなくデータ容量を増量した背景については「タリフ(通信サービスの料金)としては、すでに金額は相当に下がっていると思うんです。そこから200円、300円を引くことでは価値を実感いただけない。そこで今回のギガ盛セットになりました」と説明しました。
J:COM MOBILEでiPhoneを購入するとApple直販より1万円弱は高くなるとの指摘には「最大48か月の割賦でも購入できますし、分離プランながら端末と通信を一緒に申し込めるので、お客様の負担を減らせるのも価値だと思っています」という回答でした。