パナソニックが取り組む、光の動きによって人流を促すアフォーダンスライティング。この技術が、2021年12月12日まで京都・二条城で開催の「ワントゥーテン 二条城夜会」にて実証実験として導入されています。そこで、アフォーダンスライティングをはじめとしたパナソニックのさまざまなライティングを体験してきました。
二条城を舞台にしたライティングアート
「ワントゥーテン 二条城夜会」は、クリエイティブ集団「ワントゥーテン(1→10.inc.)」が主催する「光と食」の没入型アート体験イベント。二条城内(二の丸御殿)の周りをライトアップし、幻想的な空間を生み出しています。場内には、京都の予約困難な名店のグルメも集結。光によるインタラクティブアートを堪能したあと、ここだけでしか食べられない特別な食も楽しめる仕掛けです。
アフォーダンスライティングでは、照明の演出効果によって人間の行動を促します。「そこ」にいたくなる照明、光の方向へ歩きたくなる照明といったものです。詳細については別記事『パナソニックのアフォーダンスライティング、人を動かす灯りへと街の照明を変える試み』もご一読ください。
「アフォーダンスライティングではまず、ゆったりとした光の明滅によってそこにいたくなるように働きかける『滞留』と、一方向に流れる光に沿って歩く『回遊』という2つの演出を発表しました。今回は二股になった狭い方向へと人を動かす『誘導』の実証実験を行っています。サインや音声ではなく、光の力で誘導する演出です」(パナソニック 横井裕氏)
「アフォーダンスライディング」で道を誘導
アフォーダンスライティングが設置されたのは、唐門から西に向かい、桜の園を曲がって桃山門を超えた先です。通路には30台以上の「DMXスポットライト」が配置されており、ゆっくり揺らぐように光が動くことで自然に移動を促してくれます。ライトの位置は足元で、地面を優しく照らします。止まってじっと見ると光の動きを感じますが、歩くとほとんど感じない、それくらいに緩やかな動きでした。
今回、アフォーダンスライティングを導入した一番のポイントとなるのは、桃山門から北に進んで東橋を過ぎたあたりのルート。道はまっすぐ鳴子門まで続きますが、「二条城夜会」のイベントではまっすぐ進まず、わき道に入り、二の丸庭園を目指すことになります。
そこで、進行方向から右へそれる道へ誘導するような「アフォーダンスライティング」を設置。メインの進行方向ではない鳴子門側は動きのないライティングとすることで、自然に右方向へと進むように光で促しているというわけです。パナソニックによる社内実験では、約6割の人間が誘導演出(アフォーダンスライティング)に沿った行動を選択しており、さらに実際のシーンではどうなるのかという今回の実証実験につながっています。
「アフォーダンスライティングで誘導しながら、ときおり異次元に誘い込むような演出も盛り込んでいます」(パナソニック 横井裕氏)
パナソニックのライティング技術が二条城を幻想的に照らす
今回の二条城夜会では、アフォーダンスライティング以外にもパナソニックの多彩なライティング技術と製品が用いられています。重要文化財である唐門では、屋根の下の欄間に長寿を意味する「松竹梅に鶴」や、聖域を守護する「唐獅子」といった極彩色に彩られた彫刻をライトアップ。
「唐門では屋根と欄間の彫刻に明暗差をつけることで、自然と彫刻が浮かび上がり、目線が集まるような照明設定を行っています」(パナソニック 横井裕氏)
極彩色の彫刻を立体的に浮かび上がらせているのが、パナソニックの「SmartArchi Cylinder Spot」です。また、桧皮葺(ひわだぶき)の屋根の上にある彫刻は、超狭角配光でピンポイントに照らす「ダイナシューター」という照明機器によって、夜空に浮かび上がらせていました。
二の丸庭園は、石や滝、橋、樹木などを、フルカラーで投光できる「ダイナペインター」で大胆にライティング。池の水面に樹木や橋が映り込み、さらに一定時間ごとに光の色がゆっくり変化していきます。庭園から息吹を感じる幻想的な光の演出が楽しめました。
ワントゥーテンによる光と食のアートイベント
二条城夜会ではこのほかにも、ワントゥーテンによるクリエイティブAIを採用した国内最大級のインタラクティブ・ランドアートや京都の予約困難の名店によるグルメを楽しむことができます。
二条城夜会の開催期間は11月5日から12月12日、時間は18時から21時20分(22時閉場)。入場チケットは前売りの場合、月~木は大人1,200円・子ども800円。金土日は大人1,600円・子ども1200円です。1日10食限定のお弁当付き入場券も用意されています。チケットはすべて入場日指定となっている点に注意です。