ニコンのフルサイズミラーレス「Z 9」が正式に発表されました。「狙った被写体を確実にとらえるAF性能と連続撮影性能」「光学ファインダー並みの自然な見え方で、連続撮影時も消失しないEVF」「8K/30pに対応する高画質動画撮影」など、熱心なニコンファンが待ち望んでいた性能を凝縮した1台に仕上がっています。歴代のニコン製一眼レフを愛用してきた落合カメラマンも「写真を撮るための最高の道具になった」と注目していました。
性能や装備を考えると価格はバーゲンプライスだ
やっと、やっと出てくれるのか! ニコン「Z 9」の登場を知ったとき、率直にそう思った。首を長くして待ち望んでいたという形容を持ち出すなら、我が首はすでに伸びきり、グルンとこんがらがって、それをムリにほどこうとしたが故に千切れる寸前…みたいな状態だったのだ。待つのがこれほどツラいなら、待たずに縁を切りましょう…そんな安寧人生標語(?)が頭の中を駆け巡る日々だったといってもいい。
スペックは、すでに明らかになっている通り。「本当の意味でブラックアウトを廃した連写中のファインダー表示」など、使い込むに従ってジワジワ効いてきそうな作り込みが随所に与えられている一方、メカシャッターを持たないという一目でわかるアグレッシブな構成も抜かりなく盛るなど、背水の陣が成しているのであろう鬼気迫る姿勢を感じずにはいられない、尖った要素が満載の逸品だ。
そのひとつには、予想されている実売価格も含まれるように思う。フラッグシップ機ではない他社最新モデルの存在をも気にせざるを得なかったのではないかと思わされるその“数字”は、「攻め」と「苦悩」のせめぎ合いを経て導かれた「回答」であると拝察する。それが正答であるのかどうかは現時点、判然とはしないものの、「新型イメージセンサー&映像エンジンのもたらす数多の恩恵」を考えるならば、バーゲンプライスであると捉えることにもさしたる無理は生じないだろう。結構インパクトのある実売価格だ。
デジタル一眼レフの名機「D3」の再来を感じさせる
さて、現状では、ちょっと触って少し空撃ちして、ニコンZには初の搭載となる3D-トラッキングAFの“動き”を室内で地味に試しただけ…にとどまっている「私のZ 9経験」からいえることなど、たかが知れている。しかし、そんな私にも、ボディを手にした瞬間にハッキリと感じたことがあった。手のひらへ「グッと沈み込むようにスッと収まる」という絶妙な手応えと高品位なファインダーの「見え」は、まさしくホンモノのフラッグシップ機ならではのものだったのだ。
そんなZ 9に、私は直感的に「D3」シリーズの再来を感じた。ちなみに、Z 9デビューのインパクトそのものと価格には、どことなく「D1」の登場時とかぶるモノがあるようにも感じていたりする。実機が醸し出す印象面での幸先は悪くない。
とか何とか言いながら、古くは「F100」、デジタル時代になってからは「D700」を好んでメイン機として使ってきた癖を持つ(さらに言うならフラッグシップ・センサーがお手軽に欲しいという理由だけで「Df」を愛用していた時期もある)私は、Z 9と同等のセンサーを搭載するもう少しライトな中堅ドコロの高速モデル「Z-801」の登場に早くも期待していたりするのだが、この時期にそんなことをいったら特大のバチが当たりそうなので、とりあえず今は静かにしているつもりだ。
事件は会議室ではなく現場で起きており、右を向いても左を見ても白い砲列だらけの現状(昔からの「白」に加え新興勢力の「白」も明白な存在となりつつある)を鑑みるならば、崖っぷちに立っているのはポニョではなくニコンであることは明白。Z 9、売れて欲しいし、自分も欲しいし、売れると思う。それはもちろん、「写真」を撮るための“最高の道具”として。その価値が、Z 9には確かに備わっているように思うのである。