教育ICTへのサポートを続けているNECレノボ・ジャパングループは、図書館流通センター、キッズプロジェクトとともに無償のプログラミング教室「図書館でプログラミングワークショップ」を全国の図書館で開催する。11月3日、その第一回が神奈川県大和市の文化創造拠点シリウスで行われた。
小学校のプログラミング必修化がスタート
2020年に小学校におけるプログラミング学習が必修化し、2021年からは中学校の授業におけるプログラミング教育が拡充された。プログラミングはいま、IT技術者の基礎スキルという点のみならず、子どもの論理的思考を養う学習として関心が高まっている。
NECレノボ・ジャパングループは、そんな学校におけるICT環境の整備・運用、そして学習教材の充実をサポートし続けている。2018年には、子どもたちのプログラミングスキルやプレゼンテーション能力を養う「キッズ・プログラミングコンテスト」をスタート。毎年一回、子どもたちの意欲的で斬新な発想を促す後押しをしている。
そんなNECレノボ・ジャパングループが、11月3日文化の日に神奈川県大和市「文化創造拠点シリウス」内の大和市立図書館で、幼児と小学生ターゲットにした「図書館でプログラミングワークショップ」を開催した。
その具体的な内容は、キッズプロジェクトが企画、エンジンズが開発した幼児向けデジタルコンテンツ「オリガミ」、学校用プログラミングツール「#みんなでプログラミング」を用いて、子どもたちにプログラミング思考の基礎を伝えるというものだ。
自分だけの物語動画でプログラミング的思考を養う
13時から開催された「ものがたり動画制作ワークショップ」は、オリジナルアプリ「オリガミ」を使い、自分だけの物語動画を作るというもの。5歳から8歳の子どもを対象としており、会場は10組の親子連れで満席となった。
「オリガミ」は、時間軸を動かしながらイラストをスタンプのように押していくことで、オリジナル動画が作れるアプリだ。子どもたちは、先生と保護者にタブレットとアプリの使い方を学びながら、思い思いに世界にひとつだけの「ももたろう」を作っていく。この体験を通して、プログラミング的思考に触れてみようという試みだ。
最後に、子どもたちを代表して一人の子が作った動画を発表。「おじいさんとおばあさん、そしてペットとして飼っているキジが、流れてきた桃をおいしく頂く」という物語を披露してくれた。ももたろうの設定を踏まえたお話を作る子もいれば、まったく異なる物語を作る子もおり、その発想の自由さは大人も驚かされる。
参加した保護者は「小学校からプログラミングが始まるので、そのとっかかりが掴めればと思って。プログラミング言語をキーボードで打つような内容を想像していたのですが、思っていたより簡単な内容で、楽しくデジタルに触れられたと思うのでよかったです」と感想を述べる。
また、最年少参加となるもうすぐ5歳の女の子も「ももたろうが楽しかった!」と満足げに話してくれた。
ゲーム感覚でプログラミングの基礎と応用を学ぶ
14時30分から開催された「みんなでプログラミングワークショップ」は、7歳から12歳までが対象。東京書籍が監修し全国の小学校で利用されているブロック・プログラミング教材「みんなでプログラミング」で、さまざまな課題にチャレンジするというもの。
「みんなでプログラミング」は、授業用プログラミングツール「バーチャルスクール」、児童・教師用の専用Webサイトとハンドブック(PDF)の3点で成り立っており、教育クラウドプラットフォーム「まなびポケット」からアクセスが可能だ。
今回は、命令が書かれたブロック・プログラムを配置し、画面上のキャラクター"くもねこ"を動かしてゴールに導くというゲームに挑戦。前半のステージではゴールに向けてくもねこを誘導するだけで良いが、中盤ステージからはバグを直したり、"ウイルス"が進行の邪魔をしてきたりする。さらに後半ステージではウイルスが進化するので、ブロックプログラミングでどのように対応するか、その思考が問われることになる。
前半から中盤までは簡単に解けた子どもでも、後半は一筋縄ではいかず、先生や保護者にアドバイスを求める様子も。また全ステージを終え、最短手順でのクリアを目指している子の姿も見られ、これに対し"たけさん"は「"くり返す"を上手に使うのがコツ」とヒントを送っていた。
参加した保護者は「小学3年生で学校でもプログラミングの授業があるので、少しでも上手にできるようにと思って参加しました」と参加のきっかけについて話す。
また参加した男の子からは「プログラミングで、これをこうすればこうなるといろいろ学べて楽しかった! ステージ5が難しくて、最後の壁で何回も間違ってしまってクリアできなかったのが悔しかったです。もっとプログラミングをいろいろ勉強したいと思う」とプログラミングへの熱意を伺うことができた。
コロナ禍を乗り越えて実現したワークショップ
多くの親子が興味を持ち、盛況のうちに終わった「図書館でプログラミングワークショップ」。レノボ・ジャパン 営業戦略部 本部長の柳沼綾氏、文化創造拠点シリウス 大和市立図書館 副館長の山口友理子氏に、このワークショップの経緯と意義、そして展望について伺ってみたい。
「今回のワークショップは、STEM(科学・技術・工学・数学)教育の草の根活動の一環として開催したものです。大和市さまとともに2年前から計画していたのですが、新型コロナウイルス流行などによって延期が続き、このたびようやく実りました」(レノボ・ジャパン 柳沼氏)。
無償プログラミング教室の最初の開催場所として文化創造拠点シリウスが選ばれたのは、文化施設として広く市民に学習の機会を提供していることにあったという。そのコンセプトは、NECレノボ・ジャパングループの社会的責任への取り組み(CSR)とも合致する。
「従来の図書館とは異なり、大和市立図書館は"滞在型"です。心地よく本を読んでいただくだけでなく、本だけでは得られない情報を提供することを目指しています。今回のワークショップは図書館流通センター(TRC)経由でお話をいただいたもので、お互いのコンセプトがマッチしていたと思います」(大和市立図書館 山口氏)。
もともと、毎日のように健康や体操に関する講座をはじめとしたさまざまなワークショップを開催していた、大和市立図書館のイベントスペース。コロナ禍以後縮小してきたそれらのイベントも11月より開催できるようになり、ようやく従来の雰囲気が戻ってきたそうだ。とくにプログラミングのワークショップは人気が高く、募集を開始するとすぐに定員に達するという。
「図書館に務めている私たちは文系ですので、プログラミングは難しいという印象があったのですが、タブレットを使ってゲームのように進めていけるのはすごく楽しいなと思いました。今回、お子さんたちが目をキラキラと輝かせて熱中している様子が見て取れたので、遊びの延長として学んで頂けていると感じました」(大和市立図書館 山口氏)。
NECレノボ・ジャパングループは今後、月一回程度のペースでワークショップの開催を予定しており、すでに全国の図書館から応募いただいているそうだ。また図書館だけでなく、学校での開催も検討しており、こちらでは「みんなでプログラミング」の有償版を試用できる。「教員だけでは教えることが難しいプログラミングをサポートしていきたい」とレノボ・ジャパンの柳沼氏は話す。
「『みんなでプログラミング』は年に4回ほどのペースでアップデートを続けており、とくにコミュニケーションの機能が強化されています。例えば全国の方に作った問題を公開し、それを評価してもらったり、イベントで見せ合ったりすることが可能です。プログラミングを褒められたり、認められたりした結果、もっと学びたいと思ったお子さんが、学齢より上の学習もできるような環境を作れればと考えています」(レノボ・ジャパン 柳沼氏)。
GIGAスクール構想によって小学校のプログラミングが必修化したものの、まだ教え方は定まっていないのが現状。子どもたちにどのように学んでもらえば良いか、悩んでいる学校も多いことだろう。NECレノボ・ジャパングループは、全力でそのような学校への支援に取り組んでいる。長年PCメーカーとしてICTを牽引してきた同グループの活動が、Society 5.0 時代を生きる子どもたちの学びに繋がることを願いたい。