2017年に一般NISAで購入した株式・投資信託の非課税期間は2021年12月末で終了します。そこで知っておきたいのが「ロールオーバー」です。ロールオーバーの仕組みから手続きの方法まで、分かりやすく解説します。

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ロールオーバーとは

一般のNISA口座で年間120万円の範囲内で購入した株式や投資信託の利益(配当金、譲渡益など)には税金がかかりません。このような非課税で運用できる期間は5年間です。5年間の非課税期間が終わったあとは、その保有している株式や投資信託を翌年の非課税投資枠(年間120万円上限)に移すことができます。これを「ロールオーバー」といいます。

ロールオーバー可能な金額には上限はなく、時価が120万円を超えていても、その全額をロールオーバーすることができます。ただし、120万円の非課税投資枠を使い切っているため、その年は新たにNISA口座での買い付けはできません。

非課税期間終了時の選択肢

  • 非課税期間終了時の選択

非課税期間終了時の選択は3つあります。

(1)翌年の非課税投資枠に移す(ロールオーバー)
(2)課税口座(特定口座/一般口座)に移す
(3)売却する

(1)翌年の非課税投資枠に移す(ロールオーバー)

(1)のロールオーバーを選択すれば、さらに5年間非課税で運用できるので、利益が出ている場合には大きなメリットがあります。

一方で注意点もあります。損失が出ている場合、課税口座では可能な「損益通算」(損失があった場合に他の利益から差し引いて税金を減らすことができる仕組み)ができなくなってしまいます。

また、損失を3年間繰り越してその間の利益と相殺できる「繰越控除」もできません。NISA口座にはこうしたデメリットがあることも踏まえておきましょう。

ロールオーバーをするには手続きが必要です。手続きについては次の項目で説明します。

(2)課税口座(特定口座/一般口座)に移す

(2)の課税口座に移す場合は、手続きはいりません。そのため、ロールオーバーを考えていても期限内に手続きをしないと、課税口座に払い出されます。特定口座を開設している場合は、特定口座へ、開設していない場合は一般口座へ払出されます。

課税口座では払い出し時点の時価が取得価格となるため、NISA口座での購入価格よりも払い出し時点の価格が下がっていた場合は注意が必要です。課税口座でその後値上がりして、NISAの購入時の価格に戻った場合、本来なら利益は0なので、税金はかからないはずですが、課税口座での取得価格より値上がりしているため課税されてしまいます。

<例>
NISA口座で120万円金融商品を購入
→ 5年後100万円に値下がり
→ 課税口座での取得価格100万円
→ その後120万円に値上がりして売却
→ 20万円の利益に課税
『120万円で購入したものを120万円で売却(利益0)でも課税されてしまう』

(3)売却する

(3)の売却は、非課税期間中に売却するということなので、値上がりによる利益は非課税となり、値下がりによる損失は損益通算ができません。

保有資産が値上がりしているか値下がりしているかで判断を

非課税期間終了時に保有資産が値上がりしているか、値下がりしているかで判断が分かれるでしょう。値上がりしている場合は、売却して利益を確定するか、ロールオーバーをしてさらに値上がりを期待するのもよいでしょう。値下がりしている場合は、NISA口座では売却せず、課税口座に移してから売却するか、ロールオーバーをして、値上がりするまで運用を継続する方法もあります。運用状況や今後の動向も踏まえて検討しましょう。

ロールオーバーの手続き

1.ロールオーバーをするための準備

翌年分のNISA(一般NISA・ジュニアNISA)が開設されている必要があります。つみたてNISAではロールオーバーはできないので注意しましょう。つみたてNISAで取引している場合に、ロールオーバーを希望する場合は、事前に一般NISAへの変更手続きをしておく必要があります。

2.WEBまたは書面で申込みをする

2017年に買い付けしたNISA預かりの金融商品が2022年の非課税投資枠へのロールオーバーの対象となります。

<WEBで手続きする方法(一例)>
(1)NISA口座内にあるロールオーバーの手続き画面からロールオーバーをする銘柄を設定する。
(2)銘柄の資産評価額を確認し、移管先を「NISA預かり」にする。
(3)設定内容を確認し、取引パスワードを入力する。
(4)届出事項の内容を確認後、申込みを確定し、手続き完了。
※取引している金融機関によって手続きの方法は異なります。

ジュニアNISAはどうなる?

令和2年度税制改正で、NISA制度は見直され、5年延長することが決まりました。しかし、ジュニアNISAは利用実績が乏しいことから、2023年末で廃止となります。

ジュニアNISAは、いわば子ども用のNISAで、子ども1人あたり80万円の非課税投資枠を得ることができ、最長5年間非課税で運用できます。ただし、子どもが18歳になるまでは払い出しができないというデメリットがありました。今回のジュニアNISAの廃止によって、2024年以降払い出しが可能となりました。これによって、使い勝手が良くなったと言えるでしょう。

新規で投資できるのは2023年末まで、そのあとはどうなる?

2023年までにジュニアNISAで購入した株式や投資信託は、ロールオーバーをすることで引き続き20歳になるまで(1月1日時点で20歳である年の前年12月31日まで)非課税で保有することができます。2024年以降は新規買い付けができませんが、売却は可能です。

ロールオーバーをしない場合は、課税ジュニア口座(払い出し制限付き課税口座)に払い出されます。ジュニアNISA制度が終了する前に20歳になる場合は、20歳である年の1月1日に自動的にNISA口座が開設され、移し替えが可能となります。

NISAの5年間の非課税期間はロールオーバーによって、最大10年間非課税で運用ができます。ロールオーバーをするには、定められた期間までに所定の手続きをする必要があります。2017年に購入した金融商品を2022年の非課税投資枠にロールオーバーをする手続きは2021年内にしなければなりませんが、期限は各金融機関で異なります。期限を確認して忘れずに手続きをしましょう。