投資信託など、資産運用を考えたときに重要となるのが金利の方式です。金利の方式には「複利」と「単利」があり、その違いはしっかりと押さえておきたいもの。
この記事では複利の仕組みについてわかりやすく解説し、単利との違いや複利の方式の計算方法、運用シミュレーションなどをご紹介します。最後まで読んで資産運用にぜひ役立ててください。
複利とは
複利とはどのようなものなのでしょうか。
複利とは金利の方式のこと
複利とは、金利の方式のひとつ。定期預金や投資信託などをすると、利息や分配金が付きますよね。その付き方を定めているのが金利の方式です。
金利の方式には、複利のほかに単利があります。
利子と利息の違い
ここで利子と利息の言葉の違いについて確認します。どちらも金銭の貸借があった場合に、借り手が貸し手へ支払う金銭のことを指しており、どちらも同じ意味です。金融機関などによって、利子というか利息というか、異なっているようです。
複利と単利の違い
金利の方式には複利と単利があると紹介しました。それでは複利と単利の違いとは何なのでしょうか。
・単利
単利とは、最初の元本にのみ利息が発生することを言います。
定期預金や投資信託などでは利息や分配金などが割り当てられますが、単利ではこれらは元本に組み込まれません。元本は最初から変わらず、利息や分配金は利息付与の対象にはなりません。
・複利
複利とは、利息や分配金も元本に組み込まれることを言います。
定期預金や投資信託などで発生した利息や分配金が元本に組み込まれ、その利息や分配金も利息付与の対象となります。利息が利息を生み、元本が増えていきます。
複利のメリットとデメリット
複利で定期預金や投資信託などをした際の、メリットとデメリットをみていきます。
【メリット: 利息や分配金が元本に組み込まれる】
複利のメリットは、利息や分配金が元本に組み込まれることでしょう。元本が増えるにつれて、利息や分配金も増えていきます。短期的には単利との大きな違いを感じることはできないかもしれませんが、20年、30年と長期的にみると、単利と比較して運用成果に大きな差が生まれます。
短期的な資産運用ではなく、老後資金の確保など長期的な目的で運用したい方におすすめです。
【デメリット: 資金が長期間、拘束される】
複利のデメリットは、資金が長期間、拘束されることにあります。これは長期間の運用によってその効果が大きくなるという複利の特性上、やむを得ないことです。そのため、発生した利息や分配金をすぐに使いたいと考えている方や、近い将来にその資金を使う予定があるという方にはおすすめできません。
複利で借金をすると
複利のメリットなどを紹介してきましたが、これは定期預金や投資信託など、こちらが投資をする立場にある場合です。反対に借金をする場合には、利息が利息を生み、返済額が大きくなっていってしまいます。このことを「借金が雪だるま式に増える」などと表現されることもあります。
複利の計算方法とは
複利の計算方法を知る前に、単利の計算方法を確認しておきましょう。単利による利息額は以下の計算方法によって得ることができます。
「単利方式の利息額=元本×金利(年率)×期間」
一方、複利で毎回発生する利息がいくらになるかを計算するのは、少し複雑です。というのも、元本が変わらない単利に対して、複利は利息が発生するごとに元本が変化していくからです。N年後とした場合の元本と利息の合計額(元利合計額)は、以下の計算方法で得ることができます。
「複利方式の元利合計額=元本×(1+金利)^N」
インターネット上には計算サイトなども公開されているので、利用してみるのもおすすめです。
複利の運用シミュレーション
長期的な運用では単利よりも複利の方が得だと紹介しました。でも実際にどのくらい違うのでしょうか。ここでは単利と複利で運用した場合の利息額をシミュレーションして比較してみます。
複利と単利の利息額の比較
300万円の元本を年利1%で20年間運用した場合の、単利と複利の利息額の差を見てみましょう。
・単利
期間 | 元本 | 利息合計 |
運用開始 | 3,000,000円 | |
1年目 | 3,000,000円 | 30,000円 |
2年目 | 3,000,000円 | 60,000円 |
3年目 | 3,000,000円 | 90,000円 |
4年目 | 3,000,000円 | 120,000円 |
5年目 | 3,000,000円 | 150,000円 |
10年目 | 3,000,000円 | 300,000円 |
20年目 | 3,000,000円 | 600,000円 |
・複利
期間 | 元本 | 利息合計 |
運用開始 | 3,000,000円 | |
1年目 | 3,030,000円 | 30,000円 |
2年目 | 3,060,300円 | 60,300円 |
3年目 | 3,090,903円 | 90,903円 |
4年目 | 3,121,812円 | 121,812円 |
5年目 | 3,153,030円 | 153,030円 |
10年目 | 3,313,866円 | 313,866円 |
20年目 | 3,660,570円 | 660,570円 |
20年目の利息の合計額は、
単利の場合は600,000円、
複利の場合は660,570円
となります。
つまり【複利の方が60,570円多い】ということになります。
利息額の差は2~3年のうちはわずかですが、長くなればなるほどに開いていくことが分かります。長期間の運用を考えている場合には複利の方が得だと言えます。
「72の法則」について
複利の効果によって元本を2倍にする場合、どのくらいの投資期間が必要なのでしょうか。これは「72の法則」によって求めることができます。
投資期間(年数)=72÷金利(%)
例)100万円を複利で運用する場合、元本が2倍になるまでには
・金利1%なら「72÷1=72」となり、72年かかる
・金利3%なら「72÷3=24」となり、24年かかる
ということが分かります。
複利型の投資商品について
複利で運用する金融商品の主なものに、定期預金(複利型)、分配再投資型の投資信託などがあります。
定期預金(複利型)
銀行の定期預金には複利型と単利型のものがあります。複利型では、満期日以降に元本と利息を合わせて、一括で払い戻しができます。満期日まで利息を受け取ることはできませんが、長期間預けることで単利よりも多い利息を受け取ることができます。
投資信託
分配再投資型の投資信託は、ファンドが生んだ収益(分配金)を再度投資へ回しながら運用を続けるものです。投資金額が増えるにつれ、分配金も増えていくという仕組みです。長期間の投資を考えている方におすすめです。
半年複利とは
金利は、利息を計算する期間によって、1年複利や半年複利といった種類に分けられます。1年複利では1年ごとに発生した利息が元本に組み込まれ、半年複利なら半年ごとに発生した利息が元本に組み込まれます。そのため元本が短い期間で増えていく半年複利のほうが、1年複利より得だと言えます。
例えば100万円を年利3%で運用するとします。半年複利では利率が「3%×6カ月÷12カ月=1.5%」となり、この分の利息が半年ごとに支払われることになります。
期間 | 1年複利 | 半年複利 |
運用開始 | 1,000,000円 | 1,000,000円 |
半年 | - | 1,015,000円 |
1年 | 1,030,000円 | 1,030,225円 |
1.5年 | - | 1,045,678円 |
2年 | 1,060,900円 | 1,061,363円 |
上記の図から、1年複利と半年複利では、2年運用したときの利息金額が【半年複利の方が463円多い】ということが分かります。
複利のメリットとデメリットを理解しよう
複利とは、預金や投資信託などをする際に発生する、利息の付き方を決める金利の方式のひとつです。複利は長期的な資産運用で効果をより発揮しますが、そもそも投資信託などといった商品には元本割れのリスクがあるものもあります。資産運用を考えるなら、メリットとデメリットをしっかりと踏まえてから検討しましょう。