ソフトバンクグループは11月8日、2022年3月期 第2四半期の決算説明会を開催しました。それによれば2021年4月から9月までの連結決算は前年同期比で80%減の3,636億円に。登壇した孫正義会長は「21年度6月末に27兆円あった時価純資産(NAV)は、この3カ月で6兆円も減って20.9兆円になりました。実質、6兆円の大赤字です」と力なく繰り返しました。
中国のハイテク株が暴落へ
プレゼンの冒頭、「今日は半年前に開催した決算説明会の続編です。あのとき、日本の経済史でも最大級となる5兆円の純利益を出した、と胸を張ったわけですが、それから半年が経ってソフトバンクグループは、また冬の大嵐のなかに突入です」と苦笑いした孫会長。その主な原因は、ソフトバンクグループの持ち株のなかでイチバン大きな割合を占めていたアリババの株式が急激に価値を減らしたことにありました。
「言い訳抜きで、我々の時価純資産(NAV)が6兆円も減った、という事実をお伝えします。中国のハイテク株は、いま受難の時期。中国におけるハイテク企業の株価は、ことごとく大幅に暴落しています。アリババもDiDiも、そのほか我々の中国銘柄はこの3カ月間でその価値を大いに減らしました」(孫会長)
その結果もあり、グループの本業であるSVF(ソフトバンク・ビジョン・ファンド事業)が占める比率は44%まで拡大しています。
ところで、孫会長が以前から「ソフトバンクグループにとって会計上の利益よりも大事な2つの指標」と説明しているのが、時価純資産(NAV)とLTV(純負債 / 保有株式)でした。LTVについては現在、保有株式25.7兆円に対して純負債4.8兆円という「充分に安心して良いレベル」(孫会長)で推移しています。
時価純資産(NAV)の減少理由には、SVFの中国銘柄の不調も絡んでいました。この3カ月で1兆円も下落しています。孫会長は「それでもSVFを開始して以来、累積では約6兆円の利益を持っています。SVFは充分に成功していると言えるのでは」と話します。
そして、プレゼンの終盤には「嵐の真っ只中でも、青い芽が見えている。しっかり育てていきたいと考えています」と話し、新たなユニコーン企業を上場させていく計画を明かします。上期だけで、すでに18社を上場済み。昨年の14社と比較するとおよそ倍の、今年は30社の『金の卵』が生まれそうだと力を込めました。
保有株式が25.7兆円、純負債が4.8兆円、NAVが20.9兆円。しかし、時価総額は11.1兆円であることから、ディスカウント幅が50%前後もある、と孫会長。そのうえで「私もソフトバンクグループの大株主。時価純資産に対して5割も6割もディスカウントが入っている状況なら、自己株式を取得します」と話し、取締役会にて1兆円の自己株式の取得を決議したと発表しました。
今後の中国市場への投資は?
発表のあとは、記者団からの質問に、引き続き孫会長が回答しました。
SVFが国内の製薬ベンチャーである「アキュリスファーマ」に投資していることが明らかになりました。この件について聞かれると「これから日本企業への投資も増やしていきたいと思っています。いま3,000社くらいのディールフローを見ています。以前から、日本にユニコーン企業が少ないことを残念だと思っていました。SVFの投資第1号が生まれましたので、これから続々と増やしていけることを心から願っています」と回答。第2号となる企業とも、すでに具体的な条件を詰めている最中だと明かしました。
PayPayについて聞かれると「必ず大きく伸びると信じています。ソフトバンクグループ、ソフトバンク株式会社、Zホールディングスの3社による共同プログラムで始まったPayPayですが、アプリのダウンロード数で、全カテゴリ中の1位になりました。ペイメントのアプリがすべてのカテゴリの中で1位になるのは、ほかの国ではないことでは。しかも伸び続けています。取り扱い金額も倍々で伸びている状況です。いま現在は赤字ですが、粗利では遂に『黒字化した』との報告も受けました。いずれかの段階で上場したいけれど、時期、株式価値について語るのは、まだ時期尚早だと思っています」と回答します。
中国市場におけるテクノロジー企業の今後について聞かれると「中国の状況は私も非常に心配しています。でも、新たなAI関連企業は続々と生まれ続けている。我々も投資を続けていきます。今朝も、中国で目覚ましい成長を見せる企業と投資交渉をしたばかり。新たなAI関連企業が、これからも中国で生まれ、大きく育っていくことを願っていますし、そうあると信じています」と期待を寄せます。
最後には「嵐が来たら、それもチャンス。めげず、懲りず、これからもトコトンがんばっていきたい。私にはやれる自信がある、と申し上げたい」と話して、決算説明会を締めくくりました。