FOOD & LIFE COMPANIESは11月5日、2021年9月期決算を発表。それによれば、過去最高益を達成したという。国内スシローの既存店では緊急事態宣言下の営業制限によりイートインの売上が減少したものの、テイクアウト / デリバリーが拡大し、通期では104.3%とコロナ禍前と同水準まで売上が回復している。
■過去最高益を達成
決算発表会の冒頭、水留浩一社長CEOは「コロナ禍の状況でも様々な営業努力を重ねて今日の決算を迎えました。当社としては過去最高の売上、利益を達成できたことを非常に喜ばしく思います。まだまだ油断できる状況ではありませんので、引き続き気を引き締めて会社運営に努めていきます」と語った。
決算の詳細については常務執行役員の小河博嗣氏が説明した。売上収益は2,408億円(前年比17.5%増)、営業利益は229億円(同89.9%増)、当期利益は131億円(同104.3%増)で、店舗数はグループ全体で999店舗(同375店舗増)となった。
小川氏は「2021年8月発表の修正業績予想より上振れして着地しました」と説明する。ただ利益面ではコロナ禍による一過性の特殊要因があり、有利買付による利益増が約40億円、時短要請協力金が年間を通じて110億円あったと報告。当期の売上収益の変化については「コロナ禍でも国内外の出店を緩めず、店舗数増加により売上17.5%増を達成しました」とした。
次は、国内・海外の出退店実績について。小川氏は「当期の国内スシローブランドは従来の郊外型・都市型に加えて、新たにテイクアウト専門店の『スシローTo Go』も15店舗を出店しました」とする一方で、「一部はコロナ禍による退店もありました。杉玉ブランドの4店舗はコロナ禍でクローズしました」と説明する。なお京樽社の買収により、京樽ブランドが154店舗、海鮮三崎港ブランドが106店舗加わっており、大幅に店舗数が増えたのも当期の特徴。
最後は海外事業について。海外の市場も、日本国内と同様、もしくはそれ以上の厳しい営業規制があったようだ。小川氏は「国により規制の中身、温度感はかなり違うものでしたが、全般的にかなり厳しい規制がありました」としつつも、「グループ全体の成長に向けた基盤が確立できた1年でした」とポジティブに振り返る。既存展開地域でも積極的に出店を継続したほか、タイ、中国大陸にも新たな店舗をオープンしている。
■新規事業の展開に必要なこととは?
質疑応答では、水留社長がメディアの質問に対応した。
テイクアウト専門店の手応えについて聞かれると、まずは「コロナ禍の持ち帰り需要に向けて15店舗を出店しました。テストマーケティングの側面も大きく、駅の構内の小さなブースだったり、商店街の中だったりと、様々な場所で展開しています」と説明。そのうえで「すべての店舗が想定どおりの売上ではありませんが、ようやく勝ちパターンが見えてきた、というのが現時点の状況です。今後は、その勝ちパターンに沿って展開していきます」。商品構成についても、スシロー店舗のテイクアウト商品だけでなく、これからはスシローTo Go専用の商品開発を進めていく、と明かした。
新規事業を見極めるスピード感について聞かれると「机の上で考えたものが100%成功することはないと思っています。様々なアイデアをクイックにマーケットで試して、その結果を見てうまくいくものはアクセルを踏み、そうでないものはブレーキをかけて撤退する。そのサイクルを高回転でまわすことが、新規事業の展開には重要だと考えています」。基本的には異なるロケーションに2~3店舗を出店してみて、成功事例が見つかれば進化させていく、そんなスタンスで考えていると説明した。
大衆寿司居酒屋の「杉玉」について、競合他社も同じような業態の店舗を出店したが、と聞かれると「もともと母体のスシローの調達力を活かし、異なる価値を杉玉で提供しようという考え方があります。そういった部分での競争力は、他社さんでは真似しにくいのでは。だから我々の競争優位性は変わらないのでは、と思っています。しっかり競争して、お客さんに選んでいただけるブランドにしていく、というのが基本的な姿勢です」と回答した。