歴代のさまざまなiPhoneを使ってきた私。一時期はバカ高くても「大は小を兼ねる」的な発想からハイエンドモデルをメインに購入していたものの、昨年からすっかり“mini”のトリコになってしまいました。iPhone 12 miniを購入した筆者がminiを推す理由は、以前の記事「売れてないといわれる『iPhone 12 mini』は本当にガッカリ端末なのか?」を読んでいただくとして、今回はiPhone 13 miniとiPhone 13を試す機会があったので、その使用感をレポートしたいと思います。
iPhone 13 miniはどう進化したのか、iPhone 13と比べて何が違うのか。iPhone 13シリーズの中で比較的安価な両モデルのどちらを購入すべきか悩んでいる人は多いでしょうし、現在も併売されているiPhone 12 miniが気になっている人もいると思います。ぜひ参考にしてください。
12 miniと13 miniの違いはおもに“8つ”
では、まずiPhone 12 miniと比べたときのPhone 13 miniの違いについて見ていきましょう。大きく異なるのは以下の8つの点です。
1)カラー…全6色だったカラーラインアップが全5色に。グリーンとパープルがなくなり、ピンクが追加されています
2)デザイン…ディスプレイ上部にあるノッチ(画面の切り欠き)のサイズが20%縮小されています
3)サイズ/重量…高さ(131.5mm)と幅(64.2mm)は同じものの、厚さが0.25mm増して7.65mmになっています。重量も7gアップし、140gになりました
4)チップ…A14 BionicチップからA15 Bionicチップへと進化したほか、Neural Engineも刷新されています
5)ディスプレイ…標準時の最大輝度が200ニト明るくなり、800ニトにアップしています
6)ストレージ…64GB、128GB、256GBから128GB、256GB、512GBの3構成に容量が底上げされています
7)カメラ…新たに、フォトグラフスタイルとシネマティックモードに対応。また、センサーシフト式の光学手ブレ補正をサポートしたほか、スマートHDRが3から4に進化しています
8)バッテリー…最大15時間のビデオ再生/最大50時間のオーディオ再生から、最大17時間のビデオ再生/最大55時間のオーディオ再生にバッテリー寿命が延びています
チップとディスプレイは僅差
このうち、1~3に関しては多くの人にとって大きな違いではないと思いますので、4~7のポイントについて詳しく見ていきます。
まず、チップに関してですが、「Geekbench 5」を使ってベンチマークテストを行ったところ、iPhone 12 miniのCPU性能が1586(シングルコア)/3990(マルチコア)であるのに対し、iPhone 13 miniは1736(シングルコア)/4629(マルチコア)という結果に。最新のチップだけあって、数値的に見れば性能が向上しているものの、実際に体感できる違いはまったくないため、チップの差が大きな購入理由になることはないでしょう。もちろん、A13 Bionicとは約30~40%の性能差がありますので、iPhone 11以前の機種を使っているなら買い替えの価値は十分あると思います。
ディスプレイに関しても、数値上は高いに超したことはないものの、200ニトの差は「若干明るいかな」と感じる程度。しかも、両モデルを横に並べて比べないと分からないレベルなので、大きな差別化要因にはならないでしょう。
イニシャルコストがアップしたのが残念、価格重視なら12 miniを選ぶ手も
ストレージに関しては、見方によってやや意見が分かれるところです。iPhone 12 miniの最小構成が64GBモデル(74,800円:リリース時の価格)からだったのに対し、iPhone 13 miniは128GB(86,800円)からになっています。単純に見れば、ストレージ容量が2倍になっているのでうれしいのですが、一方で最安モデルの価格が12,000円もアップしています。
iPhone 12 miniの64GBモデルを使っている私は、現在35GB程度しか使っていませんので、正直iPhone 13 miniでも64GBモデルがあればそれで十分でした。また、リリース時のiPhone 12 miniの128GBの価格は79,800円だったので、容量アップして価格をつり上げているように思えて仕方ありません。
iPhone 13 miniの64GBモデルはないので致し方ありませんが、その一方で併売されているiPhone 12 miniの64GBモデルの価格は69,800円にまで値下げされています(128GBモデルを選んでも75,800円です)。つまり、iPhone 13 miniと比べると最大17,000円も違うので、iPhone 12 miniを買うのも十分アリのように思えます。
カメラの進化は「実際に試してみて」
ただし、それを判断するのはカメラとバッテリーの違いをしっかりと理解してからにしたほうがいいでしょう。実際に使ってみて、この2つのポイントこそが、13 miniと12 miniを大きく隔てる部分だと感じたからです。
まずカメラで大きな違いとなるのが、12 miniにはない「フォトグラフスタイル」(写真撮影時に好みの色合いを反映できる機能)と「シネマティックモード」(動画撮影時にiPhoneのカメラが被写体に合わせて自動でピントの位置を変える機能)です。それぞれの機能の詳細は以前書いた「iPhone 13の“すごい”と“ガッカリ” よく言えば『正当進化』だが…」の記事を参照いただきたいのですが、これらの機能にどれだけの価値を見出すかが製品選びに大きく左右します。ただし、これらは実際に撮影してみないと実感できない部分ですので、できれば店頭で実際に触って試してみることをおすすめします。
私の正直な感想を述べるとすれば、フォトグラフスタイルにはそこまで魅力を感じませんでした。この機能を使うと、撮影時に[標準]に加えて[リッチなコントラスト][鮮やか][暖かい][冷たい]という4つのスタイルから好みを選び、写真の印象を変えることができます。スタイルによって違いは出るので、あとからレタッチする手間を考えれば最初からそのスタイルで撮影しておいたほうが便利ですが、私の目には[標準]状態と比べて違いは若干程度にしか映りませんでした。
また、被写体によって好みのスタイルが変わることもあったりするので毎回設定を切り替えて撮影するのは面倒です。ソフトウェア的な写真へのアプローチはAppleだからこそ可能な部分なので非常に期待はしていたのですが、「写真にこだわりたいカメラ好きな人」でない限り、その恩恵はあまり感じないのではないでしょうか。それに、そもそも写真好きであればiPhone 13や13 miniよりもカメラ性能が高い、ProやPro Maxを選んだほうがいいと思いますし…。
それに対して、シネマティックモードは「違い」が明らかに分かる機能です。動画撮影時にピントが自動的に被写体に合い、背景がしっかりとぼける映画のような動画をいとも簡単に撮影できます。被写体やシーンによってはピント切り替えのスムースさに欠けたり、被写体の輪郭や背景のぼけ感に不自然さがあったり、まだ進化の過程な部分もありますが、特に動画をたくさん撮る人はこれまでとは一変する映像体験が可能なので、十分な価値を感じることがあるでしょう。
なお、センサーシフト式の手ぶれ補正が搭載されたことで、特に夜間時の手ぶれによる失敗写真が減ったり、光学式手ぶれ補正のiPhone 12 miniと比べて映像のぶらつきの少ない安定した動画が撮れるようになった点も、カメラを使う人ほど体感できる進化でしょう。とはいえ、最近のiPhoneのカメラは静止画も動画もかなり悪条件でなければ品質の差はあまり出ないので、そのあたりは個人間の判断に委ねられそうです(少なくとも私は、12 miniで十分です)。
バッテリの持ちこそが最重要検討項目
カメラの進化の価値は人によって判断が分かれる一方で、多くの人に共通する明らかなメリットがバッテリー寿命の向上でしょう。個人的にはこの点こそが、iPhone 12 miniと13 miniの使い勝手に大きく左右するポイントだと思います。というのも、ほかのiPhoneシリーズと比べて“mini”唯一の弱点といわれるのがバッテリーの持ちだからです。
日々のiPhoneの使い方によって変わってきますが、私の場合、ライトな使い方をしている場合は朝から夜まで普通に使っても、40%ほどバッテリーが残っていることがあります。しかし、たとえばキャンプや旅行、イベントなどで写真や動画をたくさん撮影したり、動画を長時間を見たり、マップでナビゲーションしたりする場合は1日も持たないこともあります。もちろん、頻繁にモバイルバッテリーや車のシガーソケットで充電すれば問題ないのですが、少しでもそうした手間なく使えるに超したことはありません。
では、13 miniと12 miniでバッテリーの持ちはどれだけ違うのでしょうか。試しに、フル充電の状態で4KのYouTube動画をフル画面で2時間視聴したところ(画面輝度は最大)、iPhone 12 miniのバッテリー残量は82%だったのに対し、iPhone 13 miniは85%でした。6時間後のバッテリー残量はiPhone 12 miniが46%であるのに対し、iPhone 13 miniは55%も残っています。
このように、バッテリーの持ちがよくなっているのは明らかで、普段の私の利用用途では1時間~1時間半ほど長く使えるような感じです。たかが1時間程度と思われるかもしれませんが、これは大きな使用感の違いです。この部分だけは、13 miniを待てばよかったと強く思います!
ちなみに、「Mrwhosetheboss」というYouTubeチャネルが行った実験結果によると、動画再生やゲーム、カメラ撮影を順に動作させてバッテリーが切れるまでの時間は、iPhone 13 miniが6時間26分なのに対し、iPhone 12が5時間54分で上回っています(ちなみに、iPhone 13は7時間45分)。
17,000円の差をどう考えるか
ここまでをまとめると、iPhone 13 miniと12 miniのどちらを購入するかで迷った場合は、カメラとバッテリー、そして人によってはストレージとシネマティックモードに重きを置いて、それらの違いが17,000円の価格差に見合うどうかが判断のポイントとなるでしょう。
もし、私が12 miniを持っていなかったとしたら…。先にも書いたように、やはり毎日の使用感に大きく影響するバッテリーが決め手になってくるでしょうか。iPhoneを1~2時間ほど長く使うためにプラス17,000円支払うか、です。とても悩みますが、今はお財布の事情がやや厳しいこともあり、12 miniを選びつつ、浮いたお金をAirPods第3世代またはHomePod miniの購入資金に充てたほうが満足度が高い気がします。
iPhone 13と比べてminiはどこが違う?
さて最後に、13 miniと13で購入を迷っている場合の判断ポイントについても見ていきましょう。ただ、こちらはそこまで比較に苦労することはありません。Appleの「iPhoneのモデルを比較する」のWebページで実際にスペックを比べてもらえれば分かりますが、両者で異なるのは以下の4点しかないからです。
1)サイズ…13 miniが高さ131.5mm×幅64.2mm×厚さ7.65mmであるのに対し、13は高さ146.7mm×幅71.5mm、厚さ7.65mmです
2)重量…13 miniが140gであるのに対し、13は173gです
3)ディスプレイ…13 miniが5.4インチに対して13は6.1インチです
4)バッテリー…13 miniが最大17時間のビデオ再生/最大55時間のオーディオ再生に対して、13は最大19時間のビデオ再生/最大75時間です
つまり、これら以外の仕様はすべて同じなので、純粋に本体サイズに起因するディスプレイサイズとバッテリー容量をどう捉えるかのみが判断のポイントとなります。13 miniと13の価格差は、最小構成の128GBモデルで86,800円と98,800円なので、両者は12,000円差となります(256GB、512GBモデルでも差額は同じ)。
最近のiPhoneは高すぎで、12 miniでも価格に見合うほどの恩恵を感じ取れていないと感じています。「もっとも優れたiPhoneは、もっともリーズナブルなiPhoneだ」と考える私は、ディスプレイサイズはminiで十分だと思っています。画面は大きいほうがいいと思うかもしれませんが、そこには慣れの部分も大きく、本体サイズが大きいことは取り回しが不便というデメリットも抱えます。ポケットや鞄にさくっと入れられたり、片手でスピーディーに操作できる機動性の高さと、それに伴うエクスペリエンスの良さはサイズの小さいminiだけが持つ特権です。
確かに、13 miniと比べたときもそうであるように、13のより長く持つバッテリーには後ろ髪を強く引かれます。13のバッテリー性能を持ちつつ、チップ性能を落としたiPhone miniがあれば一番なのでしょうね。