マーケティングオートメーションはMAとも呼ばれ、マーケティング活動を自動化するためのツールです。見込み顧客や顧客に合った施策を効率的に実行できることから、近年導入する企業が増えています。
この記事ではMAの概要や具体的な機能、導入するメリットについて解説します。導入した成功事例も紹介するので、参考にしてみてください。
MAとはマーケティング活動を自動化するツール
MAは顧客開拓のマーケティング活動を可視化・自動化するツールで、主にB to Bのマーケティングで使われています。見込み顧客を獲得するには、興味関心に応じて必要な施策を必要な時に打つ必要があります。
しかしマーケターは日頃からさまざまな業務を抱え、見込み顧客まで手が回らないことも多いという課題があります。そこで役に立つのがマーケティング活動を効率化・自動化するMAです。
MAは顧客のリスト作成、選別、メール配信などの機能があります。リード(見込み顧客)をリスト化して管理し、各リードに合わせたコミュニケーションを実施することで顧客を育成し、最終的には契約獲得を目指します。
MAの重要性が高まっている背景
矢野経済研究所の「DMP/MA市場に関する調査(2020年)」によると、MAツールの市場規模は2019年に400億円を突破しており、2025年には737億円に達すると予測されています。
MAツールのニーズが高まっている背景として、オンラインによって顧客の情報収集がしやすくなったことが挙げられます。インターネットに掲載される情報が充実したことで、顧客のサービス選定の検討が進みやすくなり、実際にアプローチしてくるときはすでに検討を終えていることも多いです。
よってアプローチしてくる前の段階でいかに顧客と接点を持ち、育成していくかが重要です。そのため、オンラインでの顧客開拓を効率的に進められるMAツールが注目されていると考えられます。
MAの具体的な機能
MAツールの主な機能について見ていきましょう。
顧客リストの作成
獲得したリードの情報をデータベースに登録・管理する機能です。セグメントで分けたりタグを付けたりすることもできます。
たとえば資料請求フォームで入力・送信される情報を自動的に登録し、見込み顧客のリストとすることができます。
顧客の育成
リードに対して一斉にメールを送信する機能を使えます。またリードが何にどの程度興味を持っているのかに応じて表示するコンテンツを切り替えたり、配信メールに関してA/Bテストを実施したりする機能もあります。
またWEBサイトのポップアップやリターゲティング広告なども活用して、購買意欲も高めることも可能です。これらの活動はリードナーチャリングとも呼び、リードを育成するために行われます。
リードの選別
リードを分類してスコアリングし、優先順位や点数などを付けることができます。特に受注確度の高いリードを選出することで、よりマーケティング施策も成果を上げやすくなります。
抽出したリードのリストを営業部門のSFAツールにつなげられるものもあり、マーケティング部門と営業部門の連携に役立ちます。
営業との情報共有・サポート
リードのWEBサイトでの行動を、営業メンバーに通知できる機能もあります。リードの行動をいち早く察知した営業が、最適なタイミングでアプローチをかけることが可能です。
MAを導入する効果やメリット
MAツールを導入することにより、下記のような効果が期待されます。
資産となる顧客情報を構築できる
リードの情報をMAツール上で保管してコミュニケーションを取ることで、顧客情報をマーケティングに活用できます。見込み顧客の行動を可視化することで、営業が良いタイミングでフォローできれば、リードの情報は貴重な資産となるのです。
営業のいわゆる「KKD(勘・経験・度胸)」に頼るのではなく、リアルタイムの顧客情報・データに基づいたマーケティングを展開できます。今までの営業では見逃していた顧客も獲得できる可能性があります。
マーケティングや営業の作業効率化
マーケティング部門では、これまで行っていたメール配信や配信のターゲット抽出などの作業が効率的に進められるため、別の作業に充てられる時間が増えます。
営業にとっても顧客となる可能性の高いリードのリストを受け取れるので、営業活動の効率化につながります。
PDCAサイクルが円滑になる
リードに対するコミュニケーションの結果をデータで測定できるため、改善して次の施策へとつなげることができます。マーケティングのPDCAサイクルが円滑になり、リードとのコミュニケーションも進化させることが可能です。
MAに関する注意点
メリットの多いMAですが、導入の際には下記の点に注意が必要です。
人材を確保する必要がある
MAは近年注目されるようになったツールであり、長年利用した経験のある人材はあまり多くありません。ツールを導入しても担当者が不慣れだと活用できず、ツールに精通した人材が必要となる可能性もあります。
導入する際は自社メンバーが習得するのにどのくらいかかるか、サポートサービスを利用できるかを検討しましょう。
コストがかかる
MAツールの導入コストはもちろんのこと、社員の教育費用や人件費なども発生します。導入時だけでなく、長期的な運営コストも考慮することが大切です。
MAを用いたマーケティング施策の成功例
MAを導入し、成果を上げることに成功した事例を2つ紹介します。
事例1.日立製作所
日立製作所が2016年に立ち上げた「Lumada(ルマーダ)」は、デジタルイノベーションを加速するためのソリューションです。鉄道・エネルギー・金融など幅広い事業を横断する新たなビジネスモデルお提供するため、従来のマーケティングから脱却する必要がありました。
同社は顧客育成の機能がもっとも使いやすそうと判断したMAツールの「Marketo Engage」を導入。わずか半年で以下3つの効果があったそうです。
・コーポレートサイトの訪問者に合わせて表示内容を最適化し、クリック率が向上
・顧客の態度変容に基づいたナーチャリングプロセスの確立
・マーケティング・営業間での顧客情報共有の効率化
複数の事業部門での本格導入を経て、コーポレートサイトのトップページの改訂、パーソナライズ機能を生かした事業部門への送客につながったそうです。
事例2.日本経済新聞社
日本経済新聞社はMAツールを導入する以前、ナーチャリングの効率化やクロスセルに課題を抱えていたそうです。そこで組織体制の見直しと情報基盤の整備に着手しました。
採用したMAツールはSalesforce社の「Pardot」で、同社の「Sales Cloud」を2012年からすでに利用していたことが主な理由でした。
Pardotを「インバウンド対応」「アウトバウンド」「ナーチャリング」「既存顧客とのコミュニケーション」の4種類の業務に活用。Sales CloudとMAツールを統合したことで、顧客の属性情報を生かしたアプローチが容易になったそうです。
PDCAサイクルが迅速に回せるようになり、案件創出が以前の2倍に増加するという成果につながりました。
以上、MAはマーケティング活動を自動化し、効率を上げて収益拡大するためのツールです。SFA(営業支援システム)やCRM(顧客関係管理)などの他のツールと連携や統合して活用することも可能です。現在、様々なMAツールが提供されているので、自社の目的や商品サービスや運用体制にあわせて導入を検討するようにしましょう。