JR西日本が導入する総合検測車の新型車両DEC741形。11月2日に近畿車輛(大阪府東大阪市)を出場し、学研都市線(片町線)・おおさか東線・JR京都線(東海道本線)経由で湖西線へ試運転を行った。
DEC741形は「DEC741-1」「DEC741-101」の2両編成。JR西日本および他会社エリアの在来線架線検測を実施していた電気検測用交直流電車クモヤ443系の置換え用車両として導入され、11月に落成予定と発表されていた。
従来からの架線検測装置に加え、現在、人が現地で実施している地上検査を車上化するための各種装置を搭載した総合検測車となっており、この車両で設備管理のシステム化・効率化・安全性向上等を図るとともに、将来の最適な設備管理体制の構築に向けた技術検証を実施するとしている。
DEC741形では、新たな装置として屋根上に50台のカメラを配置し、電柱・信号機等の設備を広範囲にさまざまな角度から撮影する「電気設備撮像装置」、架線周りの設備の位置・高さ等を測定する「電気設備測定装置」を設置。車上で得た画像情報をAI技術で解析する「画像解析装置」も設置し、これら一連の装置を「電気設備診断システム」として構築することで、地上検査の車上化とAIによる自動判定を進めていくという。
同車両はすでに試運転を実施しているDEC700形と同様の走行システムを採用した電気式気動車で、非電化区間を含めたJR西日本の在来線全線区を走行可能な仕様に。JR四国・JR九州をはじめ、IRいしかわ鉄道、あいの風とやま鉄道、えちごトキめき鉄道、肥薩おれんじ鉄道、京都丹後鉄道(WILLER TRAINS)といった他社線区も走行するとのこと。
11月に試験運用を開始した後、2022年4月頃からクモヤ443系に代わり、従来の架線検測装置を使用開始する予定となっている。人が目視で実施している電気設備の地上検査について、2025年度からの車上化をめざす。
この取組みの効果として、現地での目視検査を減らすことによる労働安全の向上を図るほか、総合検測車の導入と車両モニタによる状態監視、IoTインフラネットワークなどの取組みと合わせ、各種設備の検査業務について、2030年までに約1割の労働投入量削減をめざすとしている。装置導入によるランニングコストなど考慮し、年間約16億円のコスト削減効果も見込んでいる。