Micronの個人向けブランド「Crucial」から、初のPCI Express 4.0 x4対応ハイエンドNVMe SSD「Crucial P5 Plus」が登場した。実アプリでの処理速度を重視したチューニングが光る新モデルの実力をチェックしてみたい。
オール自社製で速度と信頼性の両立を狙う
PCI Express 4.0 x4対応のNVMe SSDは2019年に登場。2020年にはシーケンシャルリード7,000MB/秒を超える製品も出ており、人気のCrucialブランドからの発売はまだかと思っていた人も多いのではないだろうか。ついに2021年8月にPCI Express 4.0 x4対応の「Crucial P5 Plus」が発表。10月から発売がスタートした。
4.0 x4対応としては後発とはなるが、Micron製の最新176層TLC 3D NANDフラッシュメモリを採用、コントローラーもMicron製と自社製で固めた構成が特徴。容量は500GB、1TB、2TBの3種類があり、シーケンシャルリードはすべて6,600MB/秒、シーケンシャルライトは500GBが3,600MB/秒、1TB/2TBが5,000MB/秒と3.0 x4対応だった前モデルの「Crucial P5」から大幅に性能がアップした。そのほかスペックは下記の表にまとめている。
容量 | 500GB | 1TB | 2TB |
---|---|---|---|
実売価格 | 12,000円前後 | 21,000円前後 | 44,000円前後 |
フォームファクタ | M.2 2280 | ||
インタフェース | PCI Express 4.0 x4 | ||
プロトコル | NVMe 1.3 | ||
NANDフラッシュメモリ | Micron製176層3D TLC NAND | ||
コントローラ | Micron製コントローラ | ||
シーケンシャルリード | 6,600MB/秒 | ||
シーケンシャルライト | 3,600MB/秒 | 5,000MB/秒 | |
総書き込み容量(TBW) | 300TB | 600TB | 1,200TB |
保証期間 | 5年(制限付保証) |
シーケンシャルの速度だけを見ると、7,000MB/秒を超える製品が登場しているだけに見劣りするが、Micronでは「ゲーム、動画編集、コンテンツ作成はもちろん、高い処理能力を必要とするエンジニアリングアプリケーションなど負荷の高い用途にも最適」としており、最大速度よりも実アプリにおける処理スピードを重視した設計であることが分かる。
コントローラの詳細は公表されていないがMicron製だ。NANDもキャッシュ用のDRAMもMicron製とオール自社製で固めて信頼性を高めているのはCrucial P5と同様だ。
初のPCI Express 4.0 x4モデル、実力をテスト
まずは、CrystalDiskMark 8.0.4で最大性能をチェックしてみたい。用意したのは、Crucial P5 Plusの1TB版、比較対象としてCrucial P5の1TBも入れている。テスト環境は以下の通りだ。
■テスト環境 | |
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CPU | AMD Ryzen 9 5900X(12コア24スレッド) |
マザーボード | MSI MPG X570 GAMING EDGE WIFI(AMD X570) |
メモリ | Micron Crucial Ballistix RGB BL2K8G36C16U4BL(DDR4-3600 8GB×2)※DDR4-3200で動作 |
ビデオカード | NVIDIA GeForce RTX 3070 |
システムSSD | Kingston KC600 SKC600/1024G(Serial ATA 3.0、1TB) |
OS | Windows 10 Pro 64bit |
シーケンシャルリードは6813.58MB/秒、シーケンシャルライトは5004.37MB/秒と公称通りの性能を見せた。注目はランダムアクセスだろう。実アプリに影響が出やすいRAND4KQ1T1の結果もCrucial P5を上回っている。
次は、実際のアプリケーションを使用するPCMark 10のStorageテストを実行する。Crucial P5 Plusの「3,231」というスコアは現役のNVMe SSDの中でもトップクラスだ。Crucial P5の約1.57倍ものスコアと実アプリでの強さがよく分かる結果と言える。
実アプリのテストとしてファイナルファンタジーXIV: 漆黒のヴィランズ ベンチマークのローディングタイムもチェックしておこう。ここでもCrucial P5に比べて1秒以上のロード時間短縮を実現している。ゲームのロード時間を少しでも短くしたいという人にもオススメだ。
Crucial P5 Plusには、P5と同様に容量の一部をSLCキャッシュとして使い高速化する「Dynamic Write Acceleration」を備えている。HD Tune ProのFile Benchmarkを用いて、そのSLCキャッシュ容量と、そのキャッシュが切れた時の速度をチェックする。
下の画面が200GBのデータを連続して読み出しと書き込みを実行した結果だ。青色のラインが読み出し、オレンジ色のラインが書き込み。SLCキャッシュは書き込み時に利用されるのでオレンジ色のラインに注目してほしい。連続書き込み95GB付近でSLCキャッシュが切れたのが分かる。SLCキャッシュ切れ後は大幅に速度が落ちてはいるが、それでも約1,200MB/秒とSerial ATA接続のSSDを大幅に上回るデータ転送速度を維持。動画編集などで大容量のファイルを扱ってもそれほど不満を感じることはないだろう。
最後に温度をチェックしたい。TxBENCHでシーケンシャルライト(データサイズ32GB)を5分間連続して実行した時の温度とデータ転送速度の推移をHWiNFO64で測定している。パターンは2種類。ヒートシンクを搭載していない環境と今回のテストで使用しているマザーボード、MSI MPG X570 GAMING EDGE WIFIのM.2スロットに搭載されてるヒートシンクを装着した状態で測定を実施した。なお、ケースに組み込んでいないバラック状態でテストを行っている。
ヒートシンクのない標準状態では、テスト開始から50秒程度で70℃を超え、サーマルスロットリングが発生。1,300MB/秒前後まで書き込み速度が落ちてしまった。140秒付近では75℃を超えて500MB/秒程度までさらに落ちた。その後は温度が下がると少し速度が回復、また温度が上がると速度が落ちるという挙動になる。
その一方で、マザーボードのヒートシンクを装着した状態では最大64℃と十分に冷却されており、サーマルスロットリングは発生しなかった。ほとんどのNVMe SSDに言えることだが、安定した運用にはヒートシンクが必須と言える。
実環境で高い性能、価格競争力もアリ
Crucial P5 Plusは、PCI Express 4.0対応のNVMe SSDとして最大性能は最速クラスではないものの、実アプリにおいては高い処理性能を発揮しており、OSをはじめ、クリエイティブ系、ゲーム系アプリのインストール先としては優秀と言える。保証期間は5年間と長く、オールMicronという安心感もある。1TB版で実売価格21,000円前後と価格面の競争力も十分。2021年末の定番SSDの一つになるだろう。