傷病手当を受給するとき、いくらもらえるのか、あらかじめ知っておきたいですよね。傷病手当金には計算式があり、人によって支給額が異なります。

本記事では、傷病手当金の計算方法や受給中でも必要となる支払いなどを解説します。

  • 傷病手当金の支給額は?

    傷病手当金の計算方法などを解説します

傷病手当金の支給額は?

傷病手当金の支給額は、給与のおよそ3分の2といわれます。くわしい計算方法をみていきましょう。

傷病手当金の計算方法

傷病手当金の基本的な計算式は、以下の通りです。

【支給開始日の以前12か月間の各標準報酬月額の平均額】÷30×2/3 

傷病手当金の支給額の算出には、被保険者の給料ではなく、健康保険関連で基準のひとつとされている「標準報酬月額」が用いられます。入社から12か月未満の場合は、入社月から支給月までの標準報酬月額を平均とします。

ただし、【会社が加入している健康保険組合における全被保険者の標準報酬月額の平均額】÷30×2/3で計算された数字の方が少ないときは、加入している健康保険のデータで算出した金額が適用されます。

傷病手当金は給料やほかの社会保険などの給付があると調整される

給与を支払われている間は、傷病手当金の支給はありません。しかし、給与が傷病手当金より少ない場合は、差額が支払われます。ほかの社会保険からの給付も同様、傷病手当金より少なければ、その差額が支払われる形になります。

いずれにせよ、被保険者は傷病手当金の計算式で算定された金額を受け取れるように調整されるということです。

傷病手当金はいくらもらえる?

傷病手当金の最終的な手取り額は、給与の約3分の2となります。働いて得られる給与より少ない傾向にありますが、傷病手当金は被保険者とその家族の生活を保護することを主な目的としている手当です。

  • 傷病手当金を受給していても必要な支払い

    傷病手当の金額を計算すると給与の約2/3です

傷病手当金の受給中でも必要になる支払いは?

傷病手当金を受給しているということは、けがや病気の療養中であるわけですが、その働けない期間においても必要な支払いがあります。具体的には、「社会保険料」と「住民税」です。

社会保険料

健康保険料や厚生年金保険料は、けがや病気で休職する前と同じだけ支払う必要があります。傷病手当金の支給を受けていても、社会保険の被保険者であることに変わりはありません。

住民税や所得税

傷病手当金は非課税ですが、住民税は前年の所得に対して課税されるため、休職をしていても住民税は支払う必要があります。また、休職中でも株の利益や不動産収入がある場合には、その所得分は課税対象です。

  • 退職後の申請や手続き方法

    傷病手当金の受給中でも社会保険料と住民税は支払わなければなりません

傷病手当金は退職後も申請できる?

傷病手当金は退職後であっても、申請して受給することが可能です。ただし、以下の受給条件を満たす必要があります。

・健康保険の被保険者としての資格が失われる日の前日(退職日)まで、被保険者期間が継続して1年以上あった場合

・健康保険の被保険者としての資格が失われる日の前日(退職日)に傷病手当金を受給している、もしくは受給条件を満たしている場合

健康保険の資格を喪失する日は「その事実があった日」、つまり「退職日の翌日」です。

傷病手当金の申請書は、退職前の人が記入する書類と変わりありません。被保険者記号・番号は、退職前と同じものを使用してください。

事業主の証明書類は不要ですが、申請期間に退職日が含まれていれば、退職日までの事業主の証明が必要になるので注意しましょう。

傷病手当金を退職後にはじめて申請する場合

傷病手当金を退職後にはじめて申請するケースでは、次の5つの条件を満たしている必要があります。

1. 在職中に業務外での病気やけがから会社を休んでいた

2.健康保険には、被保険者の資格を失う日の前日(退職日)までに1年以上加入している

3.連続する3日間を含み、4日以上仕事を休む「待機」が在職中に完成している

4.退職日に出勤していない(荷物の整理や挨拶が目的でも会社にいくと出勤扱いになります)

5.医師から労働不能の証明書を受け取れる

定年退職などの直前に傷病手当金の申請を行う場合

定年退職直前に傷病手当金の申請を行うには、次の2つの条件を満たしていることが必要です。

1.退職の前日までに連続する3日間を含み、4日以上出勤しない「待機」が完成していること

2.退職の前日までに1年以上継続して健康保険の被保険者であること

傷病手当金を退職後に受給するときの注意点

傷病手当金を退職後に申請する際の注意点としては、「退職日に出勤しない」ということです。

退職日に出勤してしまうと、給付条件を満たすことができなくなるため、退職日の翌日以降の傷病手当金を受給することが不可能になってしまいます。退職の挨拶は電話やメールで済ませましょう。

  • 傷病手当金に関するQ&A

    退職後の傷病手当金の受給条件について解説しました

傷病手当金についてよくある疑問

傷病手当金に関して、よくある疑問をQ&A方式で解説していきます。

傷病手当金は有給休暇も受給条件の期間に数えられる?

有給休暇は給与をもらいながら休む日のことですので、傷病手当金は支給されません。ただし、傷病手当金の支給を受ける条件のひとつとなる「待機」、つまり連続する3日間には土日、祝日とあわせて有給休暇を含めることができます。

傷病手当金はうつ病も支給対象になる?

うつ病などの精神疾患でも、傷病手当金の支給対象になります。ただし、業務外でのけがや病気による療養である必要があります。

医師が記入する申請書内で、発病や負傷の原因が「不詳」となっていれば問題ありませんが、申請書内の原因に「業務上」であると書かれている場合は労災保険に該当します。このケースでは労災保険の申請をする必要があるので注意しましょう。

  • 傷病手当金を正しく計算しよう

    傷病手当金はうつ病でも支給対象となります

傷病手当金を正しく計算しよう

傷病手当金は給与の約3分の2となりますが、受給中も税金住民税や健康保険料、厚生年金保険料の支払い義務は発生するため注意が必要です。

また、退職後も傷病手当金の申請は可能ですが、退職日に出社してしまうと、労働ができない期間がそこで途切れてしまいます。その結果、傷病手当金の条件を満たさず支給されないことになるかもしれません。

傷病手当金は、働けない期間の強い味方です。正しく理解して、有効に活用しましょう。