退職後の傷病手当金の手続き方法は? 受給条件や必要な書類をくわしく解説
傷病手当金は、業務外のけがや病気で休職したときに申請できる制度です。「退職後も受給できるのか?」「うつ病でも対象になるのか?」などいろいろと気になるところですよね。
本記事では、傷病手当金の退職してからの手続き方法や、受給するための条件、必要な書類などを解説します。
傷病手当金とは
傷病手当金は、要件を満たした場合に健康保険から支給されるお金のことです。業務外での傷病により、療養のために仕事を休んだ場合に受給できる手当金を指しています。
傷病手当金の目的
傷病手当金は、怪我や病気で働けなくなり、仕事を休んでしまったときに、被保険者とその家族の生活を保障するために設けられた制度です。業務外での怪我や病気が原因で仕事ができず、会社などの事業主から十分な報酬が得られない場合に支給されます。
傷病手当金の受給条件
傷病手当金の受給条件は、以下の通りです。
- 業務外の事由による病気や怪我のため療養中であること
- 仕事ができない状態であること
- 連続する3日間を含めた4日以上仕事に行けないこと
- 事業主から報酬が支給されないこと (報酬を受けている場合でも、傷病手当金の支給額より少なければ、その差額が支給されます)
傷病手当金は業務外の怪我や病気が原因で仕事ができない場合に、健康保険より支給され、退職後は一定の要件を満たしていれば受け取ることができます。
また、健康保険法第104条による「継続給付」の要件を満たしている人を除き、任意継続被保険者は、傷病手当金が支給されないので注意しましょう。
傷病手当金の支給額
支給される傷病手当金の金額は、おおよそ給与の2/3です。計算式は以下の通りとなります。
1日あたりの金額 = 【支給開始日の以前12か月間の各標準報酬月額の平均額】÷ 30日(1日当たりの報酬額) × (2/3)
ただし、働き始めたばかりなどで支給日以前の期間が12か月に満たない場合には、上記の計算式中の【】に、以下のA、Bのどちらか低い方を当てはめて算出します。
A.支給開始日の属する月以前の継続した各月の標準報酬月額の平均額
B.支給開始日の属する年度の前年度9月30日における全被保険者の平均標準報酬月額
Bでは、支給が開始される年ではなく、前年度9月30日の時点での、全被保険者の標準報酬月額を平均して金額を算出します。実際に用いられる金額は、健康保険組合等から公表されています。
傷病手当金の受給期間は?
傷病手当金が支給される期間は、支給開始日より最長1年6か月間です。あくまでも暦の上での計算であり、実際に受給した期間を指すものではありません。
例えば、怪我や病気が良くなり仕事に復帰して受給していない期間があっても、受給を開始した日から1年6か月後には、傷病手当金を受け取れる期間が満了します。
期間内に怪我や病気が回復して仕事に復帰できた場合は、復帰する前日で支給が停止されます。また、同じ病気や怪我により再休職となると、1年6か月が経過するまでの働けなかった再休業期間も支給対象の期間となるので覚えておきましょう。
退職前から傷病手当金を受け取っていたら?
会社に在籍中から怪我や病気で仕事ができなくなり、休業中に傷病手当金を受け取っていた場合には、退職しても以下の要件を満たしていれば、継続して傷病手当金を受け取れます。
■退職後に傷病手当を受給できる要件
- 退職するその日の前日まで連続して1年以上健康保険の被保険者であること
- 退職する日に傷病手当金を受給していた、または受給できる状態であること
- 退職日に出勤していないこと
上記3点を満たしていれば、退職後も支給開始日より1年6か月を限度に傷病手当金を受給できます。
退職日に出勤すると、継続して給付できる条件を満たしていないことになり、受給できなくなるため注意が必要です。また、在職中とは異なり、一旦回復した後に、再び療養が必要な状態になったとしても傷病手当金は支給されません。
退職後に、老齢厚生年金などの老齢退職年金が受給できる年齢に達した場合も、支給対象外となります。例外として、傷病手当金の1日あたりの金額よりも年金額の1日当たり(360分の1)の金額が低いときには、その差額が支給されます。
退職後に傷病手当金の申請をしたいときは?
退職しても受給資格が消滅したわけではありませんので、条件を満たしていれば傷病手当金の申請が可能です。
傷病手当金の退職後の手続き方法
退職した後に傷病手当金を申請するには、どのような手順を踏めばいいのでしょうか。
■退職後の申請の流れ
- 手続き書類の準備
- 【被保険者記入用】を書く
- 【療養担当者記入用】への記載を医師へ依頼する
- 【事業主記入用】への記載を会社へ依頼する
- 傷病手当金の支給申請をする
手続き書類の準備
業務外の怪我や病気で働けない状態であることを前提に、協会けんぽや保険組合など加入していた保険者に問い合わせをして、傷病手当金支給申請書を取り寄せ(またはダウンロード)ます。
傷病手当金支給申請書は、4ページで構成されており、1~2ページ目は申請者の情報や申請内容、3ページ目は事業主の証明、4ページ目は医療担当者の意見書となっています。
【被保険者記入用】を書く
申請者本人用の【被保険者記入用】2枚を書きます。基本的には被保険者本人が記載しますが、被保険者が亡くなっている場合は相続人による記入が必要です。
【療養担当者記入用】への記載を医師へ依頼する
【療養担当者記入用】を各医療機関に提出して、必要事項を記入してもらいます。これは、怪我や病気により、医師の診断を受けて療養していることを示す書類です。
医療機関にもよりますが、一般的に作成に2週間程度の時間を要するため、早めに依頼をしておきましょう。
【事業主記入用】の記載を会社へ依頼する
怪我や病気が原因で働けなくなり、在職中の療養期間中に給与が支払われていないことを証明する書類です。
【事業主記入用】を郵送などで会社へ提出し、必要事項を記入してもらった上で申請しましょう。
■必要書類一覧
- 被保険者記入用 2枚
- 療養担当者記入用 1枚
- 事業主記入用 1枚
傷病手当金支給申請書の提出が遅れれば遅れるほど、受給できる日も先送りになってしまうため、早めに準備をして申請することが大切です。
傷病手当金は退職後に同じ病気が再発しても支給される?
傷病手当金は退職後において、うつ病など再発する可能性が高い病気になったときにも受給することは可能なのでしょうか。
同じ傷病で休職するときは条件がある
同じ傷病が再発し休業するケースでは、注意すべきポイントがあります。
- 同一疾病による再休業の場合は、最初の傷病手当金の起算日から数えて、1年6か月を上限とする
- 同一疾病の場合でも、一旦症状がよくなり、相当の期間就業した後に再発した場合でも、支給される可能性がある
退職後にうつ病が再発した場合
うつ病は、一般的に治療に時間がかかることでも知られる病気です。
傷病手当金はうつ病も怪我や病気と同じように、待機期間や療養などの要件を満たしていれば受給可能ですが、退職後では再休業の場合(2回目以降)の受給はできませんので注意が必要です。
退職後でも条件を満たせば傷病手当金は受給できる
たとえ退職した後でも、必要な条件を満たして申請を行えば、健康保険より傷病手当金を受け取ることができます。そのためには、退職後の受給できる要件を確認しておく必要があります。
実際に申請する際に焦ることがないよう、手続きの流れをしっかりと理解して正しく受給しましょう。