シャープは10月26日、新ブランド「AQUOS XLED」のテレビ5機種を発表。12月の発売に先がけて、一足先に実機の映像を見てきました。

  • AQUOS XLEDの85V型8Kモデル「8T-C85DX1」

製品のラインナップや概要についてはニュース記事で紹介しているように、55V型から85V型までの大型ゾーンで、BS8Kチューナーを搭載した8Kテレビ「DX1」と、BS4Kチューナー搭載の4Kテレビ「DP1」の2ラインを用意します。

  • AQUOS XLED DX1ライン(8Kテレビ)の3機種。左から8T-C85DX1/75DX1/65DX1

  • AQUOS XLED DP1ライン(4Kテレビ)の2機種。左から4T-C55DP1/65DP1

どちらも6月にシャープが開発発表した「mini LED 次世代ディスプレイ」の技術を採用しているのが最大の特徴。技術関連の総合展示会「CEATEC 2021 ONLINE」では、mini LED搭載テレビに新しいブランド名「AQUOS XLED」を冠することを発表していました。今回披露した5機種は同ブランドの最初の製品として、12月から順次市場投入していくことになります。

  • AQUOS XLEDで採用しているmini LED基板(右)。左は従来のバックライト用LED

DX1シリーズは8K/7,680×4,320ドットの液晶パネルを採用し、85/75/65V型の3サイズで展開。照明などの映り込みを抑える、低反射かつ広視野角の「N-Wideパネル」を搭載しており、パネル表面に低反射コートによる映り込み抑制効果と、斜めから見ても高コントラスト性能を保つ素材を使っています。

DP1シリーズは4K/3,840×2,160ドットの液晶パネルを採用し、65/55V型の2サイズを用意。映り込みを抑えながら、つややかな黒を実現する「N-Blackパネル」を搭載しました。

DX1/DP1のどちらも、映像の残像感を抑えてなめらかに表示する倍速駆動に対応。サポートするHDR方式は、HDR10、HLG、Dolby Visionの3種類で共通です。

価格はいずれもオープンプライス。店頭予想価格と発売日は以下の通りです。

■8K「DX1」シリーズの想定売価 / 発売日

  • 85V型「8T-C85DX1」:176万円前後 / 12月10日
  • 75V型「8T-C75DX1」:82万5,000円前後 / 12月10日
  • 65V型「8T-C65DX1」:66万円前後 / 12月10日

■4K「DP1」シリーズの想定売価 / 発売時期

  • 65V型「4T-C65DP1」:44万円前後 / 12月10日
  • 55V型「4T-C55DP1」:36万3,000円前後 / 2022年2月26日

ミニLED×量子ドットが魅せる映像美

CEATECに先がけて同社が開催したメディア向け内覧会でも、mini LED 次世代ディスプレイのハイレベルな映像を目の当たりにしていましたが、その技術を投入したAQUOS XLEDの映像を改めて見てみました。

“有機ELパネルと液晶パネルのいいとこ取りをしたディスプレイ”とアピールしているだけあって、まぶしいほどの明るさや鮮烈なコントラスト感、キレイな発色、有機ELに迫るほどの引き締まった黒の表現が見る者の目を惹きます。比較用に置かれた、2020年発売の4K有機ELテレビ(4T-C65CQ1)の映像描写にかなり近い印象を受けました。

  • 画質の比較デモ展示。中央に据えられているAQUOS XLEDの65V型4Kテレビ「4T-C65DP1」は、鮮烈なコントラスト感や有機ELに迫る引き締まった黒の表現が一目瞭然だ。比較用として、左にスタンダード4K液晶AQUOS(4T-C65CH1)、右に4K有機ELテレビ(4T-C65CQ1)が置かれていた

  • AQUOS XLED(中央)の発色のよさも感じられる。この写真では、左右のテレビは多少斜めから見えているということもあってややくすんで見えるが、実際に正面に立って見ても、映像のキレイさや違いはすぐに分かった

今回は蛍光灯が並ぶ明るいオフィス内で、店頭で目立つように“映える”モード(ダイナミックモード)に設定し、デモ用に作り込まれた映像を見るという限定的な環境での視聴となりましたが、同じく比較用として用意された4K液晶AQUOSのスタンダード機(4T-C65CH1、2020年発売)が、まるで数世代前の4Kテレビのように感じられるほど、画質の差は歴然としています。

色に関しては、ダイナミックモードのおかげもあってやや派手めに出るシーンも見受けられましたが、カラーマネジメントや色温度調整の設定項目も従来通り備えているので、好みに合わせて細かく追い込むこともできそう。何にせよ、最新AQUOSの底力を見せつけられた思いがしました。

  • プロ設定の項目から、好みに合わせて色の傾向を細かく追い込むこともできる

デザイン面でも、シルバーフレームやパンチング加工を施すなど、従来のAQUOSとは趣が変わってスタイリッシュさや精悍さが増した印象です。

  • DX1シリーズは狭額縁設計を採用。周囲はパンチング加工を施したシルバーフレームで覆われている

  • DP1シリーズもシルバーフレームで、ヘアラインのような加工が施されているのが見てとれる

特に、DX1シリーズは狭額縁設計によって映像が浮き立つ「フローティングディスプレイ」デザインを採用している点に注目。別売の壁寄せスタンドなどに装着すると、部屋の中で“映える”存在になりそうです。

  • 65V型「8T-C65DX1」を、別売のEQUALS(イコールズ)製インテリアテレビスタンドに載せたところ

AQUOS XLEDの主な特徴

AQUOS XLEDのハイレベルな映像を実現する要素のひとつが、光源であるバックライトに採用した「mini LED」です。

  • バックライトに採用したmini LED(右)。デモ展示のmini LEDはかなり輝度を落とした状態で青く光っているが、実際には直視が難しいくらい明るく光るようだ。左は従来のバックライト用白色LEDのサンプル。丸く大きな透明パーツはLEDの光を拡散させるドームとして機能する

AQUOS XLEDの65V型4Kテレビ(4T-C65DP1)の場合、シャープの従来機(4T-C65DN1、2021年発売)と比べて約72倍という数のmini LEDを高密度に敷き詰めており、これを新開発の「アクティブmini LED駆動」技術により、表示する映像に応じてエリアごとの明暗をきめ細かく制御。コントラストなどの表示性能を向上させました。

ピーク輝度は4T-C65DP1の場合、従来機比で約3倍まで引き上げており、「まばゆいばかりの輝きから締まった黒の表現まで、ダイナミックな映像が楽しめる」とのこと。夕日のきらめきなどを美しくクリアに映し出せるとしています。

  • mini LEDの間に等間隔で立っているトゲのようなパーツは、後述する量子ドットシートを支えるためのもの

量子ドット技術を導入しているのも大きな特徴です。従来の液晶ディスプレイでは、白色のバックライト(LED)に重ねた液晶とカラーフィルターを通して映像を映し出していましたが、AQUOS XLEDでは青色LEDと量子ドットシート、液晶、カラーフィルターという組み合わせを採用。バックライトの青い光から純度の高い光の3原色(青・緑・赤)を生み出すことで、広色域かつ鮮やかな発色を実現します。バックライトの光波長を変換するこの技術を、シャープでは「量子ドットリッチカラー」と名付けています。

さらに、まばゆい輝きや締まった黒などのコントラスト表示性能を際立たせる新設計「フレアブライトネス」回路も搭載。表示する映像の局所的な明るさやコントラストを解析し、明暗差をさらに伸長するもので、「まるで目の前に実物があるかのような、豊かな明暗表現力のある映像」の再現で効果を発揮します。

高画質な映像に欠かせない画像処理エンジンも刷新しました。シャープは2019年発売のAQUOSテレビから、画像処理エンジンに「Medalist」という名前を付けてブランディングしてきましたが、このMedalistエンジンを進化させてAQUOS XLEDの画質に最適化。8Kテレビの開発で培った超解像アップコンバート技術をDX1/DP1の両方に採用しています。

DX1の画像処理エンジンは「Medalist Z2X」、DP1では「Medalist S2X」と名付けており、どちらも解像度や映像フォーマットを解析し、被写体が本来持つ質感や輪郭などを緻密に再現。地デジ放送やネット動画も細部まで美しく、臨場感豊かに表現するそうです。

また、映像信号に含まれる被写体の動きや輪郭、質感などをリアルタイムで解析し、本来持っている精細感やコントラスト、色合いの情報を復元する「オブジェクト プロファイリング」処理も装備しました。

オブジェクト プロファイリングには、新機能「輝き復元」が備わっています。これは、明暗差(ダイナミックレンジ)を圧縮して収録された映像の輝度信号を解析して、元の映像が本来持っている輝きを推測し、よりリアルな輝き感を自動で復元するというもの。

ほかにも、被写体が本来持っている精細感を推測して補う「精細感復元」、周囲の画素から被写体が本来持っている形状を推測して滑らかにする「リアリティ復元」、HDR形式など入力フォーマットに応じて明暗描写を最適化する「スマートアクティブコントラスト」といった高画質化機能を盛り込みました。

スピーカーシステムも刷新。イマーシブな音場を実現するという新開発の「ARSS+」音響システムを採用し、「画面の中央付近から音が聴こえるような感覚で、映像と音声が一体となった臨場感を味わえる」としています。

スピーカーの構成はDX1とDP1で若干異なります。DX1は画面下部と背面上部、サイドにスピーカーを計8基配置し、実用最大出力は70W。また、スピーカーシステムを薄さ約2.6cm(凸部除く)のフォルムに収め、高音質と薄型デザインを両立させています。

  • DX1を側面から見たところ。薄さ約2.6cm(凸部除く)のフォルムにスピーカーシステムを収め、高音質と薄型デザインを両立させた

DP1は画面下部と背面上部にスピーカーを計11基配しており、実用最大出力は80W。背面上部は、スピーカーを前向きに20度傾斜させ、音を斜め前方向に放出する独自構造ハイトスピーカーになっています。サイドスピーカーはありませんが、実用最大出力は80Wと、DX1よりもやや出力が高くなっています。

サウンド面ではこのほか、空間全体の音響パワーの変化をとらえて補正する「Eilex PRISM」技術も採用しました。

  • DP1の画面下部のスピーカー

  • DP1の背面には、独自構造ハイトスピーカーを搭載

DX1/DP1のどちらもBS4K/110度CS 4Kチューナーを2基搭載。DX1はさらにBS8Kチューナーも備えています。別売の外付けUSB HDDを用意することで、4K放送を見ながら、別の4K放送と地上/BS/CSデジタル放送の2番組同時録画が可能となります。番組録画時に、シーン(音声)の切り換わりに自動でチャプターを記録する「おまかせオートチャプター」にも対応します。

  • DX1の付属リモコン。右上「アプリ」ボタンの下にBS4K/BS8K番組を見るための「4K/8K」ボタンがある

  • DP1の付属リモコン。BS4K番組を見るための「4K」ボタンが右上「アプリ」ボタンの下にある

HDMI入力は4系統装備。このうち入力4がARC対応、入力3/4が4K/120Hz入力に対応します。なお、ゲーミング機能で昨今注目を集めている、HDMI 2.1のVRR(Variable Refresh Rate)やALLM(Auto Low Latency Mode)には対応しておらず、eARC(Enhanced ARC)にも非対応とのこと。

後日のアップデートでVRRなどに対応するかどうかも含めて、執筆時点では明らかにしていません。ただ、説明員によると、既存ユーザーからの反応は受け止めているということなので、今後に期待したいところです。

  • DX1の側面のインタフェース。一番上のUSB-A端子も8K対応で、8K/60pのMP4動画を保存したUSBメモリーを接続して使うことを想定している

システムにはAndroid TVを採用。付属のリモコンのGoogleアシスタントボタンを押して、音声で映画などのコンテンツを検索できるほか、音声によるテレビのハンズフリー操作に対応します。Chromecast built-inをサポートしており、モバイルデバイスから写真や動画、音楽をキャスト再生することもできます。エンタメ・生活情報サポートアプリ「COCORO VISION」など、Android TVを搭載した従来のAQUOSテレビと変わらない操作性を備えています。

DX1については、YouTubeの8K動画再生に対応するほか、8Kカメラを備えたAQUOSスマホとの連携機能を備えているそうです。

  • Android TVのホーム画面

  • YouTubeの8K動画を再生したところ。プレーヤーの設定で8K解像度が選べる

シャープでは調査会社の予測データを元に、今後は「ミニLEDテレビがハイエンドモデルの基軸になる」と見ています。そこで同社はミニLED×量子ドットのAQUOS XLEDをフラッグシップとして位置づけ、既存の液晶AQUOSと有機ELのAQUOS OLEDを加えた3つをテレビ事業の柱にしていくと表明しました。

「液晶テレビと有機ELテレビ、どちらを買えばいいのか?」と購入検討時に悩んだ人も少なくないと思われますが、そこへ新たに登場したAQUOS XLEDが“3つめの勢力”として伸びていくのか、今後の動向に注目です。