ソフトバンク、au、楽天モバイルから発売中のシャープ製の5Gスマートフォン「AQUOS zero6」の最大の特徴は、約146gという軽さ。発表時には「軽いが正義」というキャッチコピーも付けられていましたが、しばらく使ってみると「本当にそうかも」と思えてきます。約6.4インチと最近のスマホの中でも大画面と言っていいディスプレイを搭載していますが、その見た目と重さのギャップは大きく、持ってもらうと大抵の人が驚きます。
他のスマホと持ち比べてみると、その差はより明らか。たとえば同じシャープ製のフラッグシップモデル「AQUOS R6」は、ディスプレイが約6.6インチで重さは約207g。筆者所有の「iPhone 13 Pro」は、ディスプレイが6.1インチで重さは203g。どちらも「AQUOS zero6」の方がだいたい卵1個分くらいは軽いのです。
この軽さを実現するために部品を減らしたり、内部フレームにマグネシウム合金を採用したり、バックパネルを薄くしたりと様々な工夫がされています。素材にはよくあるメタル×ガラスではなく樹脂が採用されていますが、手にするとしっかりとした剛性が感じられます。ディスプレイには傷に強い「Gorilla Glass Victus」が採用されていますし、フレームには全体をぐるっと取り囲むように指がかりの良い凹みが設けられていて、しっかりとホールドできます。筆者ならこの軽さを活かすために、敢えてケースはつけずに使いたいです。
フレームの上部にはヘッドフォン端子、左サイドにはSIM&microSDスロットが配置されています。SIMスロットに入るのはnanoSIMが1つだけですが、eSIMにも対応していて、サブ回線も設定できます。またフレーム下部のUSB-Type Cコネクタも含めて、IP68相当の防水、防塵に対応。こんなに軽いのに、意外にタフに使えるスマホと言えるでしょう。
ディスプレイはフルHD+(1,080×2,340ドット)のOLED。OLEDらしく黒が締まってコントラストが高く、精細で見やすいディスプレイですが、シャープ独自の省電力機能であるIGZOは採用されていません。一方でリフレッシュレートは60~240Hzまで対応。「ハイレスポンスモード」に登録することで、ゲームアプリは240Hz相当、ゲーム以外のアプリはも120Hz相当までアップできます。SNSアプリなどを登録するとタイムラインをざーっとスクロールして見るときの動きが少し滑らかになりますが、ただしこれはじっくり見比べたらわかる程度。率直なところ筆者には、ゲーム以外ではその変化はあまり感じられませんでした。
一方でリフレッシュレートを高くすると、その分だけバッテリーも消費します。実際に「ハイレスポンスモード」に登録したアプリばかり使っていたら、バッテリーの減りが明らかに早くなりました。バッテリーは4,010mAhと、この軽さにしてはたっぷり搭載されていますが、筆者のように頻繁にスマホを触るような使い方だと、体感でのバッテリー持ちはだいたい1日強といったところ。もちろんバッテリー駆動時間は使い方によっても大きく変わりますが、電池持ちを気にするのであれば、「ハイレスポンスモード」への登録アプリは厳選した方が良さそうです。
CPUはミドルレンジ向けのQualcomm Snapdragon 750Gで、メモリーはRAM8GB、ROM128GB。microSDにも対応していて、同クラスのチップを採用する他のスマートフォンと比べても少し余裕のある構成です。生体認証は顔認証のほかに、ディスプレイ内指紋認証も搭載。スリープしていても本体を持ち上げると明るくなるので位置がわかりやすく、スムーズにロック解除ができます。指紋認証を使って利用できる、シャープ独自の「Payトリガー」という機能が用意されているのですが、これがとにかく便利。あらかじめ登録した決済アプリなどを、ロック画面からスマートに起動できるもので、「AQUOS zero6」では決済アプリの起動と同時に、複数のアプリを登録したランチャーも開けるようになっています。コンビニなどのレジ前では決済アプリだけでなく、ポイントアプリの提示を求められることも多いので、かなり実用的な機能と言えます。もちろんおサイフケータイにも対応しています。
背面には3眼カメラを搭載。ライカとカメラを共同開発した「AQUOS R6」でブラッシュアップされた、高画質エンジン「ProPix3」の恩恵もあるのか、自然な色味かつ、なかなか雰囲気のある写真が撮れます。静止画だけでなくビデオでもマニュアル撮影ができるほか、動画撮影中に自動で写真を撮ってくれる「AIライブシャッター」、撮影終了後に自動でダイジェスト動画を作成してくれる「AIライブストーリーPro」など、特に動画周りの機能が充実。また静止画では、背景のぼけ味を調整できる「背景ぼかし」がモードとして用意されています。
個人的に気に入っているのは、これもまたシャープの独自機能である「インテリジェンスフレーミング」。カメラの設定で機能をオンにしておくと、構図をベストな状態に自動補正してくれるというもので、自動的に傾きを補正した写真が保存され、あとから修正する手間が省けます。
このようにカメラの満足度は全般に高いのですが、一方で少し気になったのがカメラの切替え時の動作です。広角、標準、望遠と切り替える際の反応や、撮影モードを切り替える際の反応がもたつくように感じました。特に4,800万画素の高画質で撮影をすると、保存に少し時間がかかります。他のアプリ操作などではほとんど感じませんが、このあたりがハイエンドモデルとの差かもしれません。
「AQUOS zero6」は5Gに対応しているだけでなく、ソフトバンクと楽天モバイルではミリ波にも対応しています。その実力はどれほどか、ソフトバンクが公開している28GHzのエリアに出向いて速度テストをしてみたところ、約1.9Gbpsという筆者が過去に5Gエリアでテストした中では、かなり好成績な速度が記録されました。まだまだピンポイントではありますが、この先しばらく使うことを考えると、5Gの速さを体感できるミリ波対応は魅力的なポイントと言えます。
シンプルで飽きの来ないデザインに、高リフレッシュレートもカバーする大きく見やすいディスプレイ。ヘッドフォン端子やmicroSD対応といった基本を押さえつつ、eSIM、ミリ波対応などトレンドもしっかり踏まえた不足のない構成も魅力です。さらに広角からズーム、動画まで満足度の高い3眼カメラも搭載しています。価格はキャリアによっても違いますが、だいたい7万円前後。基本性能、トレンド機能、満足度の高いカメラにコスパと、なかなかバランスのとれたスマートフォンと言えます。
なんといっても、6.4インチのディスプレイで146gという軽さは、ほかに選択肢がありません。最近、筆者は腱鞘炎に悩まされているですが、「AQUOS zero6」を試用している間は手が疲れることがなくて本当に助かりました。スマートフォンはますます大きく重くなる傾向にありますが、そんな風潮に嫌気がさしている人におすすめしたい一台です。