年金の受給スタートの基本は現在65歳です。しかし人生100年の時代をうけて、令和4年4月1日より75歳(現在70歳)まで繰下げ可能となります。65歳過ぎても働いている人も少なくありませんが、どのような年金受給するのがベストなのでしょうか。

年金は損得で判断してはダメ!

よく「何歳から年金をもらうと得か」という質問や文章を見かけますが、それに確実に答えられる人はいません。

現在元気な方がいつ亡くなるかは、誰にもわからないからです。確かに遅くから受給を受けてすぐに亡くなってしまったら、その方の総受給額はわずかであり、若いうちからもらっておけばと良かったとなりがちです。また早くから受給した方が、長生きしていることにより貯金も少なくなり、月々の年金額が少なく、もっと遅くからスタートして月々の年金額を増やした方がよかったとなることもあります。しかしそれらは結果論であり、だれも予測はつかないのです。

大切なことは、これからの長い人生を安心して過ごせるかどうかであり、損得ではないのです。年金は若い方にとっても決して先々の問題ではありません。一定の障害を負ってしまったら、障害年金が支給されます。多くが生命保険に加入しているとは思います。子育て世代などは万一の事を考えて定期保険に加入しているでしょう。掛け捨てであっても、もらえなかったら損をしたと思うでしょうか。健康であって良かったはずです。

年金の仕組み

ここでは詳しい年金の仕組みは別のレポートに譲りますが、受給時期に関することを少し整理しておきましょう。

繰り上げ・繰り下げの仕組み

年金の制度は、少しずつ改正されています。受給開始年齢も同様です。老齢基礎年金はS16.4.2生まれ以降、老齢厚生年金はS29.04.02(女性はS41.04.02)生まれ以降の方は、原則65歳から受給開始となります。

ただし、60歳~64歳の範囲で繰上げして受給したり、66歳~70歳(令和4年4月1日より75歳)まで繰り下げて受給したりすることもできます。下記の表は令和4年4月1日から施行される改正事項を反映した繰上げ、繰下げした場合の減額率、増額率の一覧です。75歳から受給開始すると年金は1.84倍にもなるのです。

  • 年金の繰上げ・繰下げ支給(令4.4.1以降適用)

働きながら年金をもらう制度

65歳以降の在職老齢厚生年金

65歳以上の方が一定以上の年金と給与額があると、老齢厚生年金の一部または全部が支給停止となります。働きながら年金をもらう在職老齢厚生年金の仕組みは下記のとおりです。対象となるのは老齢厚生年金で、老齢基礎年金は減額されません。

  • 65歳以降の在職老齢厚生年金

60歳以上65歳未満の在職老齢厚生年金の仕組み

現在この制度はありますが、老齢厚生年金はS29.04.02(女性はS41.04.02)生まれ以降の方は、原則65歳から受給開始となりますので、それ以前の方が対象となります。

人生3分割で考えよう

よく定年後の人生を「第二の人生」「セカンドライフ」などと言います。しかし人生100年時代に向けて、「人生3分割」を提案しています。総務省は2021年9月20日に、65歳以上の高齢者に関する統計を公表しました。65歳以上の就業率は25.1%(男性34.2%、女性18%)となっており、男性は3割以上が働いているのです。

第1の人生

60歳までのバリバリの現役時代です。子育てを終了し、住宅ローンを完済し、住まいのリフォームやメンテナンスもこの期間に済ませて起きます。75歳以降の年金が不足するようであれば、その分もこの期間に準備しておきます。

第2の人生

第一線を退き、仕事はペースダウンして現役時代にはできなかった旅行や趣味に力を入れることもできます。この時代のポイントは60歳までに蓄財した資産を温存することです。趣味のための費用と、日々の生活費程度の収入を確保します。

第3の人生

75歳以降を第3の期間と考えます。年金を受給しながら、不足分があれば今まで蓄財してきた資産を切り崩しつつ過ごす期間です。元気であれば、まだまだいろいろなことが楽しめる年齢です。

  • 老後生活費の準備の仕方


老齢になっても、その先のリスクを回避し安心して暮らしていく方法は何かという視点で年金の受給を考えることが大切です。人生3分割で年金は繰下げるのが良いとは思いますが、年金額が相当多い、資産が多いなど、将来の年金額を増やす必要がない場合は、繰り上げてまだ元気な間に外国旅行などに使いたいと考えても問題はありません。