最近は住まいの取得に際して夫婦共有名義にするケースが多いと思います。状況に応じて所有形態はいろいろありますが、特定の条件がなく共働き夫婦が住まいを取得するときは共有名義にするのが一般的でしょう。ローンを組む際に、夫婦ともに住宅ローン減税をフルに活用するにはどうすればよいのでしょうか。

住宅ローン控除とは(2021年度)

住宅ローン控除とは、住宅ローンを組んで住宅を取得した場合、年末の借入残高や性能に応じて、一定期間、一定金額、所得税が減税される制度です。表の注意書きにあるように、控除しきれなかった場合は翌年の住民税が減税されます。11~13年間に延長する特例の要件の契約締結日は一部過ぎていますので、ご注意ください。

  • 住宅ローン控除(消費税10%の場合)

ペアローンとは

ペアローンとは夫と妻それぞれ住宅ローンを借り入れる方式です。住宅ローン控除もそれぞれ受けられます。二人分の収入に対して借り入れられますので借入額を多くできます。お財布は別々という夫婦もありますので、財産管理が明確になるメリットもあります。

半面契約は2つになりますので、経費は余分にかかります。団体信用生命保険も別々に加入するので、万一どちらかかが亡くなっても弁済されるのは、亡くなった方の分のみで、残された配偶者は自分のローンを返済し続ける必要があります。どちらかの収入が減ってしまった場合でも家計が破綻しないような配慮が大切です。

またペアローンを利用する際、住宅ローン控除を有利に受けるための持分比率は頭金とローン負担に応じた比率にする必要があります。

ペアローンを利用する場合の注意点

その物件を購入(建設)するのに、二人で4,000万円の借り入れ予定だとします。仮に初年度の残債も4,000万円とすると所得税の控除額は最大40万円です。

夫婦のどちらも40万円以上の所得税があれば、どちらか一方が多くローンを組んでも、2,000万円ずつ夫婦で分担しても、結果は夫婦で40万円の減税に変わりはありません。どちらかの所得税額が25万円、もう一方が15万円であれば、その比率でローンを分担すれば、やはり夫婦で40万円の減税になるでしょう。

厳密には住民税からも減税可能ですので、もう少し複雑にはなります。所得税は育児休業等で収入が減少する予定がないかなど、先々まで安定しているかどうかも重要です。

また頭金の拠出額と名義の持分比率もローン負担に合わせる必要があります。贈与になることを避けるためと、ローン控除の対象となる借入金と実際の借入金の差を生まないために重要です(下記の連帯債務を参照)。

ローン負担に差があり、名義を50%ずつにしたい場合は、差額を現金で供出することになります。夫2,400万円の全額ローンと妻1,600万円のローン+800万円の現金供出であれば持ち分は50%ずつとなります。

二人の所得税を把握し、最も控除額が大きくなる配分を把握します。しかし減税をメインに考えるよりは、夫婦にとって安全で最適な資金の組み合わせは何かという視点で考えるべきです。

参考: 連帯債務を利用する場合

債務者単独の所有とした場合は、連帯債務者は住宅ローン控除を受けられません。共用名義にした場合は、それぞれ控除を受けられますが、頭金、ローン負担共に持ち分に応じて負担するように取り決めが必要です。または負担比率に応じて持ち分を決める必要があります。

持ち分が50%ずつで、頭金と4,000万円のローンの負担比率をそれぞれ50%ずつと取り決めた場合は、夫婦それぞれの控除の対象となる借入金は2,000万円ずつとなります。

持ち分を50%ずつ、頭金負担も50%ずつとし、ローン負担が夫60%、妻40%と取り決めた場合は、夫の控除の対象となる金額は持ち分50%の2,000万円にしかなりません。妻は1,600万円が対象となり、400万円分は夫からの贈与となります。頭金も夫が負担したとなると、さらにローン控除の対象額は減少します。

住宅ローン控除が適用できないケース・控除額が少なくなるケースとは?

ペアローンに限らず、住宅ローン控除を受けるには様々な規制があります。代表的なものを挙げてみましょう。

控除適用年分の合計所得が3,000万円を超える

その年のローン減税は適用されません。

返済期間が10年未満

繰り上げ返済等で返済期間が10年未満となれば、適用外となります

床面積が50m2以上(控除適用年分の合計所得が1,000万円以下の場合は40m2以上)ではない

床面積が50m2未満で、いずれ合計所得が1,000万円を超えそうなケースは要注意

個人間の売買により取得した場合

個人間の売買には消費税が適用されませんので、下表の通りのローン控除計算となります。

  • 住宅ローン控除(個人間売買の場合)

戸建て住宅を購入、土地と建物の所有者が違う

土地は妻がローンを組んで実家の隣の土地を購入、建物は夫がローンを組んで建設した場合は、妻は住宅ローン控除を受けられません。夫の建物新築のためのローンは可能です。

住宅新築用の土地を先に購入

土地を夫がローンを組んで購入、3年後に夫名義でローンを組んで住宅を新築した場合は、土地の分のローン控除は受けられません。家屋を新築する際のローンについては控除を受けられます。なお、家屋の新築の引き渡し日前2年以内にその家屋の敷地を購入した場合は土地にも住宅ローン控除を適用できます。


住宅ローン控除は額も大きく、長期の特典です。所得税を直接控除するものですのですので、いろいろ制約があります。紹介できるのは極一部ですので、ローン借入先に詳細をお問い合わせください。また目先の損得よりも、将来的に考えられるリスクを少なくするためにはどうしたらよいかを考えて、それぞれの負担や持分を決定してください。