来年で創業90年を迎える『京樽』は創業以来初、メニューの全品一新を10月19日に実施し、同日に発表会を開催。今回のリニューアルに伴って、「鯛茶きん寿司」(300円)と「胡麻香る 鯛ちらし」(890円)の2つの新たな商品も発売している。

この2つの新商品を監修したのは京都の二つ星老舗料理旅館 野草一味庵『美山荘』の四代目主人である中東久人氏。『京樽』の人気商品である「茶きん寿司」と「ちらし寿司」だが、新たに加わった2品の特徴を聞いた。

  • 京樽と老舗料理旅館がコラボ! 新メニューを発売

    京樽と老舗料理旅館がコラボ! 新メニューを発売

■包み方やサイズにもこだわり

「我々は京都発祥の会社で、食の世界でも同じ京都でお仕事をされていて、100年以上続く歴史、日本料理へのこだわり、おもてなしの心を持つ中東さんだからこそ今回オファーしました」とは、京樽の石井憲社長。

山里の野趣と京都の風雅を併せ持つ美しい料理で、国内外の文化人からも高い評価を受けている中東氏に、京樽から熱いラブコールを送った結果、今回の新商品は実現したという。

  • 野草一味庵『美山荘』の中東久人氏と京樽の石井憲社長

    野草一味庵『美山荘』の中東久人氏と京樽の石井憲社長

一方の中東氏は商品開発のオファーを引き受けた背景について、こう語った

「私は料亭旅館『美山荘』では旬のものを使って懐石料理という形で提供しています。今回のお話をいただいた当初は私に務まるのかなとも思いましたが、普段やっている懐石のスタイルを、ひと箱のお寿司、一握りのお寿司にどれだけ表現できるか。トライしてみたくなりました」

  • 「鯛茶きん鮨」(300円)

    「鯛茶きん鮨」(300円)

今回、「鯛茶きん鮨」では鯛のだし汁でふっくら炊き上げた“混ぜしゃり”を使用し、鯛の身やゴボウ・山椒を混ぜ合わせた新感覚の仕立て。発売から約70年となる『京樽』の看板商品「茶きん鮨」に、新たな自信作が加わることとなった。

「茶きん鮨はうす焼きたまご、シャリ、そして具材が口の中で渾然一体となって旨味のハーモニーが生まれる料理ですが、従来の茶きんが大きいので、寿司のようにバラして食べる人も少なくない。せっかくの見た目の一体感の意味があまりないと思い、そこから自分の再構築が始まりました」(中東氏、以下同)

うす焼きたまごはたまご本来の美味しさと滑らかさを活かすように黄身と白身の割合を調整。さらに、食べる所作も美しくなるように包み方も新たに変更した。また、包み方やサイズも「鯛茶きん鮨」の新しい味わいのポイントとなっている。

「シャリは鯛からとったダシでご飯を炊いていますが、寿司酢にもこだわっています。企業秘密ですが天然のものに由来する旨みを添加しました。具材については特に関西では鯛の身を甘辛く炊き込む“あら炊き”という料理からインスピレーションを得て、すし飯と合わせたつくりになっています。食べやすくするため小ぶりにして、一口で口に入りやすい大きさにしました」

■職人の手仕事で実現した「胡麻香る 鯛ちらし」

  • 「胡麻香る 鯛ちらし」(890円)

    「胡麻香る 鯛ちらし」(890円)

「『鯛茶きん鮨』で一番苦労したのはうす焼きたまごでした。例えば我々が一日20名のお客様をもてなすのとは全くレベルが違って、京樽さんくらいの規模だとたくさん作るためにレシピにも工夫しないと商品化できません。結果的には食感もしっとりとした、美味しい卵の味わいが楽しめるうす焼きたまごに仕上がりました」

同じく中東氏が監修した透き通った鯛の美しさが楽しめる「胡麻香る 鯛ちらし」でも、そんな現場の職人の手仕事が光っている。切り身の一枚一枚の裏側に香り高い“ごまだれ”を仕込んだ一品だ。

今回は鯛をより美味しく食べる方法として、鯛茶漬けに欠かせない胡麻だれから発想を得た商品を展開。試行錯誤を繰り返しながら綺麗な見た目にする方法を考え、鯛の身の一枚一枚の裏側にごまだれをつけることにしたという。

鯛とごま、イクラのママみが舌の上でとけ合い、さんど豆の旨味と、すだちの涼やかな後味が締めくくり、一段と香り高くコクが感じられる鯛ちらしに仕上がっている。

中東氏は、「さんど豆は単なる彩りではなく、私は若い頃、フランスで修行していたんですが、フレンチではさんど豆の湯掻き方に非常にこだわるんです。多くのグルタミン酸が含まれているさんど豆には旨味がたくさんあって、他の素材にプラスさせる役割があるんですね。ごまだれ、鯛、さんど豆と単に旨味を重ねていくだけでは味わいが茫洋としたものになるので、すだちのスライスを添え、それらの旨味をひとつにまとめています」と細部までこだわりを見せていた。

今後も中東氏と京樽は共同でさまざまな商品を展開していく予定だという。