10月15日に第1話が放送されると、SNSを中心に大きな反響があったTBS系金曜ドラマ『最愛』(毎週金曜22:00~)。本作は同枠で『アンナチュラル』や『MIU404』など話題作を世に送り出してきた演出・塚原あゆ子氏、プロデューサー・新井順子氏という黄金コンビが再びタッグを組んだ。完全オリジナルで挑むシリアスなサスペンスは、どのように生まれたのか。新井プロデューサーに制作の裏話を聞いた。
『最愛』は、殺人事件の重要参考人となった実業家・真田梨央と、梨央の初恋の相手であり事件の真相を追う刑事、そして、あらゆる手段で梨央を守ろうとする弁護士の3人を中心に展開するサスペンスラブストーリーだ。
企画の発端は、新井プロデューサーが手掛けた『わたし、定時で帰ります。』(2019/TBS)で、吉高演じる結衣が、上司である向井理扮する晃太郎と対峙するシーンで魅せた表情を見て「吉高さんでサスペンスをやったら面白い」と思ったからだという。
そこから、『わたし、定時で帰ります。』でもタッグを組んだ脚本家の奥寺佐渡子氏、清水友佳子氏と共に「今回はオリジナルのサスペンスを作ろう」と意気込んだ。
ミステリアスな過去を持つ女性実業家・真田梨央を演じるのは吉高由里子。企画段階でイメージした女優が、そのままキャスティングできた。『わたし、定時で帰ります。』でも新井プロデューサーとは仕事を共にしているが、本作でも「天才だな」と思うシーンが随所にあったという。
「とにかく切り替えがすごいんです。第1話で血だらけの服を燃やすシーンがありましたが、『ヨーイスタート』と声が掛かる直前まで現場でケラケラ笑っていて、まったく涙を流すような雰囲気がなかったんです。でもいざ本番になると、涙がスーっと流れる。見ている側からすると、どうしたらああなるんだろうって驚きます。ものすごく反応が良いというか、細かい表現にも脱帽です」。
物語のスタートとして考えたのが「初恋の人と久々に再会したとき、刑事と容疑者という関係性だったら嫌だな」というアイデア。そのためには過去のパートとして学生時代が必要だなということになった。必然的に昔の事件と、いまの事件が交差していくという構成は「『Nのために』に似ていますよね」と言うと「そこにもう少しサスペンス的な要素を乗せて、殺人がなぜ起こるのかを推理しやすい感じにしました」と説明する。
また、サスペンスだけに、あえて説明過多にならないように気をつけた。「いまはより丁寧に説明するような風潮がありますが、それはつまらないと思うんです。視聴者に想像力を掻き立ててもらえるような作りにするために台本を考えました」と狙いを語る。