Googleは日本時間の10月20日午前2時より、同社の最新スマートフォン「Google Pixel 6」「Google Pixel 6 Pro」の新製品発表イベントをオンラインで開催した。イベントではGoogle Tensor搭載、AIを活用したカメラなど、Google Pixel 6の機能が次々に紹介され、新製品への自信をうかがわせました。
なお、イベントの内容はGoogleのサイトで公開されています(英語のみ)。興味のある方はごらんになってみてはいかがでしょうか。
進行役を務めたのはハードウェア事業を統括するシニアバイスプレジデントのRick Osterloh氏。同氏は冒頭、新製品について「もっとも個人的で、もっとも役に立つスマートフォン」であり、「これこそが本当のGoogleのスマートフォンです」とGoogle Pixel 6を紹介しました。そして搭載するプロセッサのGoogle Tensorについて、このチップはGoogleのAI技術を直接Pixelに搭載するためのものであり、TensorによってGoogleが持つスマートフォンのビジョンを追求できるようになったといいます。そのビジョンを具現したのがGoogle Pixel 6であるというわけです。
ここでGoogle Pixel 6とGoogle Pixel 6 Proの概要と価格、発売日を紹介(概要と日本での価格/発売日は別記事を参照)。そして個別の特徴の紹介に移りました。
外観だけでなく、UIを含めたデザインを一新
まずはデザイン・外観について。Google Pixel 6では、従来モデルからデザインを完全に一新しています。
外観でもっとも目に付くのが、背面のカメラバー。これは高機能になり大型化したカメラユニットをできるだけ小さいボディに収めるための工夫であると同時に、カメラを背面の中心に配置することにもつながっています。また、カラーリングについて、Goole Pixel 6ではSorta Seaform/Kinda Coral(日本語にすると「海の泡っぽい」「珊瑚みたいな」といったところでしょうか)のようにカメラバーの黒とコントラストをなす活気のある色と、シンプルでありながら平板ではないStormy Blackを用意したといいます。
一方のGoogle Pixel 6 Proではジュエリーや腕時計のような高品位の仕上げを行っており、Cloudy Whiteはホワイトとグレーを組み合わせてクリーンな印象、Sorta Sunnyはラグジュアリー感・高揚感を与えるゴールドと暖色、そしてStormy Blackはモダンでエレガントなイメージというそれぞれの狙いを説明しました。
ディスプレイは最大90/120Hzでリフレッシュレートが動的に変化。スムーズなスクロールと消費電力の抑制を両立させています。Corning Gorilla Glass Victusにより、防水/防塵性能をもたせるとともに、キズへの強さはこれまでの2倍になっています。
ここでサステナビリティ、持続可能性の話になります。Google Pixel 6はこの点にも配慮されており、フレームの素材に再生アルミニウムを使用するなどしていますが、サステナビリティの観点からより重視しているのはユーザーの手に渡った端末にアップデートを提供することだといいます。最新の機能を利用できれば、ひとつの端末を長く使い続けることができ、環境にもよいというわけです。加えて、不要になった端末を回収してリサイクルしたり、純正ケースには再生資源を使用したりといったことも行っています。
そしてデザイン面の再検討は外観だけにはとどまりません。Gooole Pixel 6はAndroid 12を搭載しますが、Android 12は「Material You」という新しいUIデザインの枠組みをもっており、選択した壁紙の色調に合わせてアイコンや検索バーといったシステムUI要素のカラーリングも変更するなど、自由なカスタマイズが可能でありながら全体の調和がとれたUIを利用できます。このMaterial YouはシステムUIだけでなく、Google PhotosやMap、Gmail、YouTubeなどのアプリにも適用されます。
専用チップTitan M2搭載などセキュリティも強化
続いて紹介されたのはセキュリティ機能。ここでも、Google Pixel 6はこれまででもっともセキュアなPixelスマートフォンだといいます。
そのカギを握るのがGoogle Tensorのセキュリティコアと、セキュリティチップTitan M2。これらがユーザーデータやPIN、パスワードを保護します。こういったセキュリティ面の取り組みにより、Google Pixel 6ではセキュリティアップデートの提供期間が5年間となります。
セキュリティの設定ではカメラ/マイクのオンオフやカメラ/マイク/位置情報へのアプリからのアクセスを許可するかどうかなどを簡単に設定できます。プライバシーダッシュボードで利用状況を確認することも可能。機械学習をサンドボックス内で実行することで個人データを保護し、メールやリンクのクリックなどだけでなく音声通話でのフィッシングにも警告を発するといった機能も搭載しています。
Google Tensor
そして話題はGoogle Tensorに移ります。「Google Tensorは、Googleの歴史において、もっとも大きなハードウェアの革新です」と語り、同社のAI研究を結実させたチップだといいます。そのネーミングはTensorFlowやTensor Processing UnitsといったAI・機械学習関連の技術につながるもの。AIにおけるGoogleの成果をモバイル機器にもたらし、AIによるスマートフォン革新の新しい扉を開くためのチップです。
その性能について、CPU/GPUのパフォーマンスがPixel 5にくらべて大幅に向上しているとしながらも、CPUやGPUのピーク時性能はベンチマーク上では大事だが実際のユーザーエクスペリエンスには必ずしも反映されないといいます。大事なのは、これまで実現できなくて、Google Tensorによって可能になったことだというのです。
Google Tensorの機能・性能を活かしたカメラ機能
その「Google Tensorによって可能になったこと」の例として挙げられたのが、これもまた「世界中でもっと進化したスマートフォンカメラ」として紹介されたカメラ機能です。50メガピクセルの広角カメラ、12メガピクセルの超広角カメラ、Google Pixel 6 Proの48メガピクセル望遠カメラといったデバイスを薄型ボディに収めていますが、本機のカメラ機能はそういったハードウェア面だけがすごいのではありません。
最大20倍となるズーム機能は光学ズームとデジタルズームを組み合わせるのに新たなアプローチを行ったといいます。また動画撮影においては、HDRnetによる各フレームの処理の一部をTensorのISPに組み込むことで高速かつ効果的に行えるようにし、4K/60fpsの動画撮影が可能となりました。また色彩の再現性も、センサーの大型化とTensorの機械学習の恩恵を受けているそうです。
このほか、写真に写り込んでしまった人物や物を消去する「Magic Eraser」、人物の顔のブレ除去、被写体の動きを強調するモーションモードといった機能も紹介されました。
また写真に関しては、さまざまな人種・民族の肌の色を適切に写し、露出やカラーバランスを調整する「Real Tone」機能についても詳しく解説されました。人種・民族により肌の色/顔の色はさまざまであるにもかかわらず、それを考慮しないことの問題については、近年さまざまなメディアでの意識が広がっているところ。この点の改善を図ったGoogle Pixel 6は「もっともインクルーシブな(=排他的でない)スマートフォン」であるとも語っていました。
自然言語処理もGoogle Tensorで性能向上
自然言語処理も、Google Tensorの恩恵を受ける領域となります。英語でのデモンストレーションでは、音声認識によるメッセージ入力、絵文字入力などが正確に行われていました。タッチ入力よりも音声入力のほうが3倍速いという結果も示されましたが、漢字変換を伴う日本語ではどれくらい実用的なものか、どれくらいのスピードになるか、気になるところです。
また翻訳機能もTensorによって改善されます。Google Pixel 6では、翻訳の品質が18%向上。専用ハードウェアなしにスマートフォンだけで最高レベルの処理速度と正確さが実現されたといい、しかもプロセッサパワーの半分も使わないとのことです。コピー&ペーストでGoogle翻訳を利用するような煩雑さもなく、音声入力してワンタップで翻訳を行うリアルタイム翻訳が、Instagram、Twitter、LINEといったメッセージングアプリで利用できるそうです。
そして音声入力とリアルタイム翻訳ができるとなれば、Pixel 6単体で外国語コンテンツへの字幕表示、カメラ映像に含まれる外国語の文章の翻訳といったこともできます。最後にそのデモンストレーションとして、「こんまり」こと近藤麻理恵さんがGoogle Pixel 6を翻訳機として使って米国人スタッフと会話する様子も紹介されました。
とにかく盛り沢山という印象だったGoogle Pixel 6の新製品発表。10月28日の発売日に向けて、マイナビニュースでも製品レビューをお届けする予定です。お楽しみに!