フジテレビ系ニュース番組『Live News イット!』(平日版 毎週月~金曜15:45~)のメインキャスターに就任して1年が経った同局の榎並大二郎アナウンサー。コロナ禍の社会変化や、世界情勢が大きく動く中で、新型コロナウイルスに感染した妊婦が入院できず、自宅出産した新生児が死亡したという痛ましいニュースにショックを受けたという。

このニュースを伝えた際、生放送中に涙で言葉が詰まってしまった榎並アナの姿に、多くの視聴者が胸を打たれたが、本人はニュースを伝えるプロとして「猛省」。その経験を糧にして、日々のニュースに向き合っている――。

  • 『Live News イット!』メインキャスターの榎並大二郎アナウンサー

    『Live News イット!』メインキャスターの榎並大二郎アナウンサー

■『イット!』で「これまでとは全く違う1年」

榎並アナが『イット!』のメインキャスターに就任したのは、菅前内閣が発足した直後。それからこの1年、東日本大震災10年、熱海の土石流、東京オリンピック・パラリンピックに岸田内閣の発足、海外に目を向けるとアメリカのバイデン大統領誕生、タイの反政府デモ、ミャンマーのクーデター、香港情勢、アフガニスタン情勢、そしてもちろんコロナ禍における様々な状況変化もあり、「本当にあっという間で、いろいろあったなと感じます」と振り返る。

ともにメインキャスターを務めるフジ同期入社の加藤綾子キャスターとも「突発的に何か起きたときのスタジオワークの呼吸が分かってきましたし、すごく学びが多かった1年でした」と充実の表情を見せた。

熱海の土石流災害は公休日の土曜日に発生したが、緊急報道特番を組むことになり、そのキャスターとして急きょ出社・出演することに。「こうしたカットインで入る特番は、野島(卓)や奥寺(健)といった先輩方が担当していたのですが、初めてこの立場を経験して、自分もそこを担う年次になったのだなと強く感じました」といい、さらに、「普段は現場に出てからスタジオでプレゼンするという順番ですが、スタジオでニュースを伝えてから現場に行くというのもまた別の感じ方があって、これまで13年やってきた中でも全く違う1年でした」と語る。

  • 榎並大二郎アナ(左)と加藤綾子キャスター (C)フジテレビ

■生放送で言葉が詰まる「助かる命だったのかと…」

そんな1年の中で今年8月、千葉県で新型コロナウイルスに感染した妊婦が入院できず、自宅出産した新生児が死亡したというニュースを伝えた。当時、妻の妊娠を発表していた榎並アナは、生放送で「適切な医療を受けていれば、助かる命だったのかと…」と話すと、涙を抑えることができなかった。

「自分の中で子供が生まれるということが、私生活の中でとても大きくて、子を授かるということが奇跡のようなことなんだと本当に実感したんです。妻のお腹の中で育っていき、適宜検査も受けてきましたけど、楽しみより心配のほうがずっと勝っていました。そんなことを感じていた中で、あのニュースを伝えたときにあまりにも境遇が重なってしまったということもあって、言葉に詰まってしまいました」

あのニュースを伝えた際の心境を思い出したのか、榎並アナはこのインタビュー中も時折大きく呼吸して気持ちを落ち着かせながら、「ハイリスクな妊婦さんが家にいて、自分が万が一感染してしまったら…ということを考えると、その不安というのがとてつもなく大きかったんです」「自分にとっては不体裁であり反省なんですが、ニュースへの向き合い方がこんなにも変わったのかということを実感する出来事でもありました」と明かした。