米VMwareは10月5日~7日(現地時間)、年次イベント「VMworld 2021」を開催し、多くの発表を行った。同社は今年6月にラグー・ラグラム氏がCEO(最高経営責任者)に就任、同イベントで、マルチクラウドへの注力を新たな戦略として披露した。

そして、マルチクラウドでアプリをビルド・実行・保護するためのサービス群として、「VMware Cross-Cloud Services」が発表された。「VMware Cross-Cloud Services」は、以下の5つの主要な機能から構成される。

  • クラウドネイティブなアプリを構築・展開するためのプラットフォーム
  • エンタープライズアプリを運用・実行するためのクラウドインフラ
  • 異種混在のクラウド間でアプリのパフォーマンスやコストを監視・管理するクラウド管理機能
  • マルチクラウドの運用全体にまたがるセキュリティとネットワーキングによる、すべてのアプリの接続と保護
  • 分散化された業務環境を実現するデジタルワークスペースと、エッジ ネイティブ アプリを展開・管理するエッジ ソリューション
  • 「VMware Cross-Cloud Services」の概要

VMworldではこのポートフォリオに基づき、さまざまなソリューションが発表された。本稿では、「アプリケーションプラットフォーム」「クラウド」「エッジ」「セキュリティ」の分野ごとに、同イベントで発表された注目のソリューションを紹介する。

アプリケーションプラットフォーム

VMwareは、クラウドネイティブなモダンアプリケーションを開発・運用するためのプラットフォームとして、Kubernetesをベースとした「VMware Tanzu」を提供している。今回、モダンアプリケーションの開発におけるコスト、パフォーマンス、セキュリティの問題を解決するため、「VMware Tanzu Community Edition」が発表された。

「VMware Tanzu Community Edition」は、VMware Tanzuを無料で利用できるエディションだ。VMware Tanzuの商用エディションで使われているソフトと同等のオープンソースソフトウェアで構成されており、数分でデプロイすることができる。

  • 「VMware Tanzu Community Edition」の構成

また、「VMware Tanzu Application Platform」のベータ版には、アプリケーションのデプロイに関するフローを簡略する機能が追加された。オープンソースのCartographerプロジェクトをベースとしたこの機能により、運用担当者はKubernetesのリソースと既存のツールを連携して作業をする開発者のために、事前に承認された本番環境へのデプロイパスを作成することができる。加えて、アプリケーション開発者は、ローカルのソースコードからワークロードを作成・更新することが可能になった。

さらに、VMware vSphere with Tanzuに含まれるTanzu Kubernetes Grid ServiceがNVIDIA AI Enterpriseと統合された。これにより、ユーザーはNVIDIA AI Enterprise上のAIプロジェクトをvSphere with Tanzuで試行することができる。VMware Tanzu Kubernetes Grid 1.4では、Amazon Web Services(AWS)、Microsoft Azure環境でもNVIDIA GPUがサポートされることが発表された。

クラウド

クラウドプラットフォーム「VMware Cloud」においては、「VMware Cloud with Tanzu services」が発表された。同サービスはKubernetesベースのコンテナとインフラをサービスとして提供するもので、VMware Cloud on AWSの一部として、追加料金なしに利用できる。運用管理者は、仮想マシンとコンテナの管理もVMware vCenterで行えるようになり、数分でKubernetes クラスタを開発者に提供することが可能になる。

AWSのベアメタルのインフラ上でVMwareのSDDCを利用できる「VMware Cloud on AWS」においては、上述たように、VMware Tanzu Servicesが標準で搭載され、VMware Cloud Disaster Recoveryが拡張された。災害対策を目的として、第3四半期には、今年3月に稼働開始した大阪リージョンでVMware Cloud on AWSの提供が予定されている。

加えて、AWSのサービスを利用できるアプライアンス「AWS Outposts」でVMware Cloud on AWSで利用することを可能にする「VMware Cloud on AWS Outposts」が、2022年度の第3四半期に提供される予定であることも発表された。

  • 「VMware Cloud on AWS Outposts」の概要

さらに、DellのAPEXエコシステムにVMware Cloudの機能を提供する「Dell Technologies APEX Cloud Services with VMware Cloud」が2022年第4四半期から提供が開始される予定だ(現在はプレビュー版)。同サービスを利用すると、事前設定済みのクラウド インスタンスを自社データセンタやエッジ ロケーション、コロケーション施設にデプロイできるという。

そのほか、「VMware vSphere」の次の進化として、「Project Arctic」が発表された。同プロジェクトは、vSphereにクラウドへの接続機能を付加し、ハイブリッドクラウドをデフォルトの運用モデルにすることを目指している。例えば、「Project Arctic」では、容量が不足した時、VMware Cloudにアクセスして、オンデマンドでキャパシティを拡張できるほか、VMware Cross-Cloud Servicesを利用して、脅威の検出やランサムウェアの保護を行うことも可能だという。