JR東海は、リニア・鉄道館で展示している「国鉄バス第1号車」が文化庁の文化審議会答申(10月15日)を受け、重要文化財(美術工芸品)として指定されることになったと発表した。リニア・鉄道館の展示車両としては、蒸気動車「ホジ6014号」に続く2例目となる。
「国鉄バス第1号車」(鉄道省営乗合自動車)は、1930(昭和5)年11月に東京瓦斯電気工業で製造された、車体長さ約7m・自重4.0トン・定員20人(立席を含めると30人)の車両。省営バス岡多線の開業時(1930年12月20日)に使用された旅客用の国産自動車であり、当初使用された旅客用車両7台のうちの1台で、現存する唯一の車両だという。
官民共同で国産自動車の製造に取り組んで完成した車両であり、鉄道省の国産車両を使用する方針にもとづく商工省標準形自動車の誕生に貢献した。車両の保守整備を通じて自動車部品の品質補償に係る制度も実現している。
リニア・鉄道館に展示されている車両は、1930(昭和5)年に省営バス岡多線で運行開始した後、1937(昭和12)年まで活躍し、約25万km走行した。1938年から旧鉄道博物館(交通博物館)で展示され、2006年の閉館後、2007年から鉄道博物館(さいたま市大宮区)で展示。2011年からリニア・鉄道館で展示され、現在に至る。
文化審議会からは、「本形式は最初の鉄道省営乗合自動車で現存する唯一の車両である。わが国における乗合自動車事業が発展し、また乗用車を含めた自動車一般の国産化において多大な貢献を果たした本車両の先駆性や規範性は高く評価され、交通史上・産業技術史上に価値が高い」(2021年10月15日発表の文化審議会答申より要約)と評価されている。