「疾風怒濤」と聞いて思い浮かべるのは、激しいイメージではないでしょうか。音の響きと漢字からなんとなく意味はわかっても、正しい意味や使い方まで把握している人は少ないでしょう。
本記事では、正しい意味や由来、類義語対義語について解説します。例文を交えながら使い方もご紹介するので、実際に使える場面を想定しながら見ていきましょう。
疾風怒濤とは
疾風怒濤の読み方
「疾風怒濤」は「しっぷうどとう」と読みます。
疾風怒濤の意味
激しい風と荒れ狂う波の様子を表す言葉です。
これが転じて、時代などが大きく動き、激しい変化が社会にもたらされることも意味するようになりました。劇的な変化のあった時代や勢いのあるものの様子などに使う四字熟語です。
疾風怒濤の由来はドイツ語?
言葉の由来は、ドイツでの文学革新運動だと考えられています。
ドイツでは18世紀後半に文学革新運動が起こり、激しい時代の変化を迎えました。この時代をドイツ語で「シュトゥルム・ウント・ドラング(Sturm und Drang)」といい、これを和訳したものが「疾風怒濤」です。
それが由来となって、激しい時代やそれによる変化などを疾風怒濤と表現するようになったとされます。
疾風怒濤と疾風怒涛の違いは?
同じく「しっぷうどとう」と読む四字熟語で、「疾風怒涛」という表記を見たことがある人もいるでしょう。
4文字目のトウの漢字が違いますが、どちらの表記であっても意味は同じで、激しく勢いのある様子や時代の激しい変化などを意味しています。
疾風怒濤の使い方と例文
「疾風怒濤」の意味や由来、類義語や対義語が把握できたところで、使い方を例文と一緒に解説していきます。
実際に使える例文を紹介していくので、日常生活でどう使えるか考えてみましょう。激しく勢いのある様子を表したいときには、「疾風怒濤」を使って表現してみてください。
「~のごとく」とあわせて使える
「~のごとく」は、「如し」の活用形で比喩や例示を表している言葉です。「~のように/~のとおりに」と言い換えられ、たとえを使って文章を構成したいときに使います。
・疾風怒濤のごとく課題が押し寄せた。
・疾風怒濤のごとき台風が過ぎ去った。
以上の例文のように、勢いがあり激しいことを表現したい場合に使えます。勢いのある様子を比喩を用いて表現したいときは、「~のごとく」と一緒に使ってみましょう。
時代の様子を表現できる
疾風怒濤は、時代や世間の様子を表すときに使える表現でもあり、日本史では幕末から明治維新の時代を「疾風怒濤の時代」と表現することもあります。激しく情勢が移り変わり、世間に大きな変化を与えた時代を表現できる四字熟語です。
また、歴史的な背景や政治的な背景による時代変革だけでなく、企業の激しい移り変わりを意味することもあります。成長期や大きく内部事情が変わったときなど、激しい変化を要するのであれば使っても問題ありません。
・疾風怒濤の時代がやっと幕を閉じた。
・社長が変わり疾風怒濤の時代に突入しそうだ。
上記の例文のように、激しく勢いのある時代や期間を表現してみましょう。企業の成長期などにも活用できます。
勢いのあるものに対しても使える
時代や企業情勢以外にも、勢いがあり激しいものに疾風怒濤を使うことができます。
・明日から台風が上陸するので、疾風怒濤の海模様が予想されます。
・早とちりな性格の人が多いので、疾風怒濤な状態になるかもしれない。
以上の例文のように、激しくて勢いのある状況や激しい変化などにも使えます。勢いのある激しいものを対象にすればどのようなものでも使える四字熟語なので、日常生活でも使いやすい言葉でしょう。
疾風怒濤の類義語は?
ここでは、「疾風怒濤」と似た意味を持つ言葉について解説していきます。
言い換え表現を把握しておくことで、適切な言葉を使って表現できるでしょう。シーンや表現したい様子にあわせて、どの言葉を使ったらいいのか考えてみてください。
疾風迅雷(しっぷうじんらい)
疾風迅雷は「しっぷうじんらい」と読み、速い風と激しい雷のことを意味しています。この意味から転じて、行動が素早く激しいことを表現する言葉となりました。
素早くて激しい様子を表したいときに使いましょう。
・疾風迅雷の勢いで到着しました。
・疾風迅雷の機動力がある舞台を率いる。
迅速果敢(じんそくかかん)
迅速果敢は「じんそくかかん」と読み、素早く物事を処理して決断することを意味する言葉です。また、物事に対面したときにすぐ決断できる能力のことを表現する場合もあります。
以下の例文のように、素早く大胆な決断ができるという意味で使います。
・彼の長所は迅速果敢なところです。
・迅速果敢に対応しなくてはならない問題に直面した。
電光石火(でんこうせっか)
電光石火の読みは「でんこうせっか」です。稲妻のような光や、石を打ったときに発生する火、という意味から、動作が非常に素早いことやとても短い時間のたとえに使われます。
具体的には、ボクシングのような格闘技の必殺技や素早い攻撃などのことを表現するときに使います。また、仕事をテキパキと片づけられる人や、足が速い人など、人物に対しても使うことができる言葉です。
・電光石火の決断で間に合わせた。
・あの人は電光石火のごとく走り去った。
疾風怒濤の対義語は?
続いては、疾風怒濤の対義語について解説していきます。
疾風怒濤の反対の意味の言葉では、穏やかでのんびりしたさまを表現する言葉が多いです。それでは、対義語を把握して、さらに理解を深めていきましょう。
悠々閑々・悠悠閑閑(ゆうゆうかんかん)
悠々閑々(悠悠閑閑)は、「ゆうゆうかんかん」と読み、「悠々」は落ち着いてのんびりした様子、「閑々」は静かで落ち着いている様子を意味しています。
この2つの言葉が組み合わさり、ゆったりと落ち着いてのんびりしている、という意味になります。静かで閑静な様を表現できる四字熟語です。
・あの老人は悠々閑々たる生活を送っている。
春風駘蕩(しゅんぷうたいとう)
春風駘蕩は「しゅんぷうたいとう」と読み、春風が優しく吹き気持ちのいい季節、春の季節ののどかな雰囲気を意味しています。穏やかで優しい様子を表し、「春風駘蕩たる穏やかな風景」のように使います。
また、景色だけでなく温和でのんびりした穏やかな人柄を表したいときにも使われます。「春風駘蕩な人柄で話しやすい」のように、人にも景色にも使える四字熟語です。
疾風怒濤は激しく勢いのある様子を表す言葉
「疾風怒濤」は素早い風と激しい波を意味しており、転じて、激しく勢いのある時代や変化を意味する四字熟語です。この言葉の由来はドイツから来ており、18世紀後半の文学革新運動を表す言葉から生まれました。
激動の時代や、変化の激しい企業情勢、勢いのあるスポーツの様子などを表すことが多く、激しさや勢いを感じさせる言葉です。似た意味を持つ言葉は、激しさや素早さを共通の意味として持っており、反対の言葉は穏やかで温厚なさまを意味しています。
使い方をマスターして、表現の幅を広げましょう。日常生活でも使える言葉なので、豊かな表現を楽しめますよ。