モトローラが10月1日に発売した「moto g50 5G」は、5G対応と大容量のバッテリーが特徴のエントリーモデルです。1週間ほど試用して、その使い心地を確かめてみました。
moto g50 5Gはどんなスマホ?
SIMフリースマホのブランドとして存在感があるモトローラ。その多くの機種に共通する設計思想のは、シンプルで低価格なこと。“全部入り”を求める人には向きませんが、使い勝手の良いスマホを手頃な価格で手に入れたいという人には、検討の価値があるブランドです。
今回のmoto g50 5Gの価格は32,800円(モトローラ公式ストアでの販売価格)。OPPO A54 5Gなどと同じ価格帯で、5G対応のSIMフリースマホの中では最安値クラスに入ります。
筆者なりにmoto g50 5Gの長所と短所をまとめると、以下のようになるかなと感じました。
moto g50 5Gの長所
- 5G対応ながらお手頃価格
- 大画面+90Hz駆動
- 大容量バッテリー
- かゆいところに手が届くジェスチャー
- オールマイティーな3眼カメラ
- nanoSIM 2枚とmicroSDを併用可
moto g50 5Gの弱点
- やや大きく厚め
- ディスプレイ解像度が低め
- 性能控えめ
- 防水ではなく防滴
- おサイフケータイ無し
これを踏まえて、製品をくわしく見ていきましょう。
「髙見え」な外観
moto g50 5Gは“ザ・格安スマホ”な価格帯のモデルですが、ぱっと見の印象では安っぽさを感じさせることはありません。側面、背面のどちらも樹脂素材ですが、まるでアルミニウム合金とカーブガラスのような「高見え」な外観に仕上げられています。長く使うスマホとして選ぶ上でも、愛着がわきやすい見た目だと感じました。
ただし、ちょっとボディに厚みがあるのは気になりました。カタログスペック上の大きさは約167×76.4×9.26mm(最薄部)と全体的に厚め。ディスプレイも側面フレームから1mmほど浮き出たような形状です。重さも約206gとそこそこあります。
ボタン類は右側面に集約されており、上からGoogle アシスタントキー、音量上下ボタン、電源ボタンという構成。電源ボタンは指紋センサーも兼ねています。
端子類は本体下部にUSB Type-C端子と3.5mmイヤホンジャックを装備。左側面にはSIM/microSDスロットを備えています。
箱を空けた時から装着済みの付属のクリアケースも、そのまま使い続けたいと思えるような、質の良いものになっています。
大画面で90Hz駆動
ディスプレイは6.5インチのIPS液晶を搭載。縦横比は20:9と縦長よりの形状。狭額縁ではありますが、下あごのベゼルが若干太めになっています。
このディスプレイは低価格なスマホとしては珍しく、90Hz駆動のハイフレームレート対応となっています。Webサイトのスクロールなど、画面切り替え時のアニメーションがなめらかに表示されるため、長時間使っても目が疲れにくいという特徴があります。
大きめでなめらかなディスプレイは、使っている中で電子書籍との相性が良好だと感じました。6.5インチという大きさは、マンガの1ページを程よい大きさで表示できます。
ただし、大きさの割に解像度は低く、1,600×720ドット(HD+)となっています。特にWebブラウザーを見るときや、動画再生時などは、あまりクリアに見えないような印象も受けました。
シンプルな中身と小技の効いたジェスチャー
モトローラのスマホは、カスタマイズを必要最小限にとどめていることに特徴があります。携帯キャリアが販売するスマホでは最初から多数のアプリがインストールされていることがままありますが、モトローラのスマホには使わないプリインストールアプリはほとんどありません。
Google系アプリの他にはカメラ、電卓やFMラジオといったツール群を搭載。モトローラらしいアプリとしては独自機能を紹介する「Moto」アプリ、スマホの使い方と保証サービスの情報を提供する「デバイスのヘルプ」、独自の壁紙をセットする「インタラクティブ壁紙」がプリインストールされていますが、新製品の情報を通知するようなアプリは入っていません。
そして、「Moto」アプリから設定できるジェスチャー機能には、“かゆいところに手が届く”ようなものが揃っています。
例えば、本体をクルッと2回ひねるとカメラが起動する「クイックキャプチャー」や、2回振り下ろしてライトを点灯する「簡易ライト」といった機能は直感的に使いこなせる便利な機能です。
また、指紋センサー(電源ボタン)をダブルタップして、アプリのショートカットを開ける「パワータッチ」も実用的な小技機能と言えるでしょう。
他にも、分割表示やスクリーンショット撮影を簡単に起動するジェスチャーや、ゲームプレイ中に画面や自分の様子を録画する機能など、Androidの使い勝手をさらに良くするようなジェスチャーが盛り込まれています。
マクロが撮れる3眼カメラ
メインカメラは4,800万画素(f/1.7)+200万画素深度センサー(f/2.4)+200万画素マクロ (f/2.4)という3眼(トリプル)カメラ構成。実質的には4,800万画素の単眼カメラで、深度センサーとマクロカメラが一部のシーンで補助的に働くという形です。
4,800万画素と大きなセンサーを積んでいますが、撮れる写真の解像度は1,200万画素に設定されています。これは、4つの画素を1つの大きな画素として扱うことで、夜景などのシーンを明るく撮れるという仕組みのため。深度センサーは、ポートレートモードでボケ効果を追加する時などに使われます。
マクロカメラには専用のモードが用意されていて、小さな被写体に近づくと、カメラアプリ上でマクロモードをおすすめする表示が出ます。4cmほどまで近寄って、小さな被写体を大きく写せます。
今回の検証ではカメラを十分に試す期間がなかったため、あくまで1週間程度の試用の中での印象になりますが、風景や屋外でのポートレート撮影、明るい屋内といった、スマホで日常的に撮るようなシーンならば十分にこなせます。
写りは全般的に色味を盛りすぎず、見た目に忠実に再現する傾向があり、特に夕焼けに染まるビル群を撮った時の空の表現は好印象でした。
一方で、マクロ撮影機能は光量が足りず、色あせたような写りになる傾向があり「もう少し鮮やかに写るといいのに」と思う場面もありました。
カメラではいくつかユニークな機能も盛り込まれています。モトローラスマホではもはやお馴染みとなった「スポットカラー」は、モノクロ写真の中で特定の色を強調するもの。上手く使いこなせばシンプルですが記憶に残る写真が撮れます。このスポットカラー機能は、動画撮影にも対応しています。
インカメラでは、「グループショット」も面白い機能です。パノラマ写真を撮る要領で、スマホを傾けて横長のセルフィーが撮影できます。
細かい部分ですが、シャッター音はやや耳障りに感じました。カシッというくっきりとした音で、マナーモードに設定していても最大音量で鳴ります。スクリーンショットの撮影時も大きな音が鳴るため、電車の中などで使うときには配慮が必要になりそうです。
5Gと4Gの同時待ち受けに対応
5GはSub6の周波数帯をサポートし、ミリ波には非対応。対応周波数はband n1/n3/n5/n7/n8/n20/n28/n38/n40/n41/n66/n77/n78と、国内主要キャリアが展開する周波数帯のうちのほとんどをカバーしています。4G LTEも同様で、ドコモのBand19やauのBand18/26など特に地方で重要な帯域もふくめて幅広い周波数帯をサポートします。
実際に使ってみても、5Gエリアに入るとすぐ5Gピクトになり、動画再生やWebサイトの表示も高速に表示できました。現状では5Gエリアは拡大途上にありますが、エリア展開が進むと快適に使えるシーンが増えてきそうです。
モトローラのスマホではnanoSIMを2枚使った2回線同時待ち受け(DSDV)と、microSDカードの併用が可能となっている機種が多く存在します。moto g50 5Gの場合、「5Gと4G LTEでのDSDV」をサポートします。
2回線同時待ち受けは、使い方次第では役立ちます。例えば、普段は低価格なMVNOの回線をメインで使いつつ、旅行などの際にはpovo 2.0の「24時間使い放題トッピング」で高速な通信を堪能するといった使い方では、SIMの2枚差しが生かせるでしょう。
なお、2枚目のSIMスロットはmicroSDスロットとの排他利用となっています。SIMカードを2枚使いたい場合は、microSDカードを差すことはできません。
電池持ちはほどほど
バッテリー容量は5,000mAhと大容量で、モトローラいわく「標準的な使い方で、1回の充電で約2日の使用が可能」としています。ただし、筆者が検証の中で使い込んだ実感から言えば、他のスマホと比べて格段に電池持ちが良いというほどではありません。
ブラウジングやTwitterの閲覧を3時間、NHKプラスやAmazonプライム・ビデオで計2時間ほどの動画再生、写真を数枚撮ってと、筆者としては普通の使い方ですが、5,000mAhのバッテリーは半日ほどでほぼ使い切ってしまいました。
急速充電は付属の充電器で最大10W、つまり5V/2Aの充電をサポート。電池残量5%程度から満充電までは約1時間半ほどかかります。
USB-PD準拠の充電器やAnker PowerIQ3.0対応の充電器もつないでみましたが、どちらも最大10Wで充電されていました。バッテリーの大きさに対して、もう少し充電スピードはもう少し速くても良いのに……とも感じます。
性能は控えめ
プロセッサはMediaTek製のDimensity 700(8コア)を搭載。5Gをサポートするミドルハイクラスのプロセッサです。プロセッサの性能としては、Quallcomm製のプロセッサで比較すると、AQUOS sense6などが採用するSnapdragon 690とおおよそ同じくらいの性能を備えています。メモリ容量は4GBと少な目です。
実際の使用感としては、5G環境下でTwitterアプリやブラウザーなどを動かす程度なら、全くストレスなく使えると感じました。カメラアプリも安定してしています。
ゲームもシンプルなものなら快適に遊べますが、3Dグラフィックスをバリバリ使うようなゲームはさすがに厳しいでしょう。後者の代表格として、『原神』を試してみましたが、解像度を「低」に設定した状態でも表示遅延が目立つ印象でした。
気になる部分:防水・おサイフ非対応
モトローラのほかのスマホと同様に、moto g50 5Gはおサイフケータイに非対応です。これについては、おサイフケータイを使っていない人は、特に困ることはないでしょう。
防水防じん性能については、IP52相当となっています。つまり、防水ではなく防滴、つまり雨に濡れた程度では壊れません、という程度です。こちらも使わない人は気にならない機能かもしれませんが、低価格なスマホでも防水対応が進んでいる中で、できれば対応してほしかったと思うところです。
まとめ:5Gスマホを価格重視で選ぶなら選択の余地あり
moto g50 5Gの特筆すべき点は、5Gに対応しながらも3万円台前半という低価格を実現したことにあります。その価格の制約の中で、90Hz駆動の大画面ディスプレイや夜景も強いカメラなど、多くの人がスマホに求める要素は可能な限り盛り込んできたという印象です。
モトローラならではと言えるところは、独自のアプリを極力減らしたシンプルさにあります。その上で、独自のジェスチャー操作を盛り込むことで、細かな点での使い勝手を高めるように配慮されています。その独自機能はどれも直感的に使えるもので、ユーザーに分かりやすいように整理して案内している点でも好感が持てます。
ただし、大画面に対して解像度があまり高くなく、急速充電もそれほど速くない、メモリがやや少な目など、「もう一声」と思う部分は多々あります。シンプルな使い心地は「オールラウンダー」ということになりますが、一方で「帯に短し襷に長し」という印象も否めません。
とはいえ、5Gスマホで3万円という価格の安さは、それ自体が魅力とも言えます。MVNOのセール時には、それを上回る安さで手に入れることもできるでしょう。「OCNモバイルONE」(参考:https://www.ntt.com/personal/services/mobile/one/set/motog505g.html)のように、音声SIMとのセットで5500円という価格で販売しているMVNOも存在します。
5Gのエリア展開は現時点では東京都心など一部に限られていますが、2022年前半にかけてグッと広がっていくものと予想されます。4キャリアの5G周波数帯をサポートしているmoto g50 5Gは、その高速通信を味わえるにはもっとも手ごろなスマホとなりそうです。