豊島竜王は連覇を懸けて藤井聡太三冠VS永瀬拓矢王座戦の勝者と対戦
第42回将棋日本シリーズJTプロ公式戦(主催:地方新聞11社)の準決勝第一局、▲豊島将之JT杯覇者(竜王)-△渡辺明名人(棋王・王将)戦が10月16日に大阪府「丸善インテックアリーナ大阪(大阪市中央体育館) メインアリーナ」で行われました。結果は215手で豊島JT杯覇者が勝利。決勝進出を決め、連覇まであと1勝としています。
振り駒で先手番になった豊島竜王は角換わり早繰り銀を採用。4六に上がった豊島竜王の右銀は、▲5五銀~▲6四銀と斜めに一気に駆け上がって行きました。
このまま激しい戦いに突入するのかと思いきや、本局は意外な展開になります。豊島竜王の銀はスルスルと元来た道を通って撤退。そして両者玉を囲い合い、改めての駒組み合戦となりました。
豊島竜王は金矢倉、渡辺名人は銀矢倉にがっちりと玉を囲い、両者手待ちで仕掛けのタイミングを伺います。結局、一時は四段目まで進出した先手の右銀は、仕掛け所を失って5七にまで戻ってきました。
膠着状態を打開したのは後手の渡辺名人でした。次々に歩を突き捨てていき、先手の桂頭攻めを狙います。豊島竜王は自然に対応して9筋を突破し、駒得を果たしました。
駒損が大きく、攻めが止まってしまうと勝負所がなくなってしまう渡辺名人は、角を切って飛車交換をし、飛車を敵陣に打ち下ろしたものの、攻め駒は飛車と金の2枚だけ。豊島玉を捕まえることはできません。
上部へ脱出口が開いている豊島玉は、逃走を開始します。馬とと金が待ち構えている敵陣に一気に駆け込み、入玉を成功させました。これで絶対に玉が捕まることがなくなりました。
相手玉を寄せる術がなくなった渡辺名人。先手は駒数も豊富なため、この将棋で勝つことはできなくなりました。望みは自らも入玉しての持将棋のみ。持将棋になれば指し直しとなります。
2二にいた渡辺玉も上部を目指して脱出を開始します。豊島竜王はこの玉を捕まえるのではなく、相手の駒を取る方針を採りました。持将棋成立には双方の点数が24点以上必要になるため、後手の駒数を減らして点数を23点以下にして勝利しようという狙いです。
豊島竜王はと金を量産して、渡辺陣に取り残された駒をどんどん取っていきます。やがて渡辺玉は豊島陣に入玉を果たすことに成功しましたが、点数は22点止まり。取れそうな先手の駒は残り1枚だけで、どんなに頑張っても23点までしか届きません。渡辺名人は215手目の豊島竜王の着手を見て、投了を告げました。
持ち時間10分、切れたら1手30秒未満、他に1分単位で合計5分の考慮時間という、超早指し棋戦にも関わらず、約2時間の激闘を制した豊島竜王。これで2年連続で決勝に進出です。前期は決勝戦で永瀬拓矢王座を破って優勝を果たしましたが、今期はどうなるでしょうか。
豊島竜王と決勝を戦うのは、11月3日に行われる準決勝第二局の藤井聡太三冠-永瀬王座戦の勝者です。永瀬王座が勝ち上がり、2期連続で同一カードの決勝戦になるのか。それとも藤井三冠が勝利して、今年大舞台で幾度となく対戦しているカードとなるのか。注目です。