感染症対策の観点から、マスクをつけて生活することが日常となりました。マスクにも様々な種類がありますが、不織布マスクはその代表格。店頭にも不織布マスクが山積みされているのを見る人は多いのではないでしょうか。
ところで「不織布」の読み方は知っていますか? また不織布とはそもそもどんなものなのかを知らないという人も多いかもしれません。
この記事では不織布の正しい読み方や、特徴、不織布マスクの効果などを詳しく紹介します。
不織布とは
不織布とは「ふしょくふ」と読みます。漢字が示すとおり、「織らずに作った布」を指します。
「ふおりぬの」は間違い
不織布を「ふおりぬの」と読んでしまう人も多いようですが、これは間違いです。
「織」は音読みで「ショク」と読みます。これを知らずに、店員さんにうっかり「ふおりぬのマスクありますか」などと尋ねると恥をかいてしまうことに。
不織布の読み方である「ふしょくふ」を、この機会にしっかり覚えておきましょう。
一般的な布との違い
一般的な布は、縦糸と横糸を交互に組み合わせて織りあげます。これに対して不織布は、原材料を織らずに並べてシート状にしたものを指します。シート状にする際には、水の圧力で繊維を編む、熱処理をする、接着剤を使うなどの方法があります。
不織布の原材料や製造方法については、後ほど詳しく紹介します。
不織布の特徴とは
不織布はシートの密度や厚みによって、強度や手触りを調整することができます。そのため衣服や工業用品まで幅広い分野で使われています。
一般的に、以下のような特徴があるとされています。
・弾力がある
・通気性にすぐれている
・ほつれない
・しわにならない
・縮まない
・方向性がない(縦横という制限がない)
不織布が使われている製品
不織布が使われている製品はたくさんあります。
日用品
- マスク
- ティーバッグやコーヒーバッグ
- 排水溝の水切りシート
- クッキングペーパー
- 化学カイロ
- フェルトペンの芯
言われてみれば、確かにマスクと同じような素材だと感じるものもあるのではないでしょうか。不織布は日常生活に欠かせない素材だといえるでしょう。
医療・衛生用品
肌に直接触れる医療・衛生用品にも、不織布は使われています。
- 紙おむつ
- ばんそうこう
- 綿棒
- ウェットティッシュ
- 生理用品
- 手術着
普通の布や紙ではなく「これの素材は何だろう」と不思議に思うものに、実は不織布が使われています。
その他
そのほかにも不織布は、造花やカーペットなどのインテリア用品、AV機器のスピーカー振動板や吸音板といった産業用資材にも使われています。
日常なじみのない製品機材や機器部材にも、不織布は活躍しています。
不織布の原材料・製造方法とは
マスクにも使われる不織布とは、どのようなものなのでしょうか。
一般的に合成繊維が使われる
不織布の原材料には、羊毛や綿などの天然繊維のほかポリエステルなどの合成繊維が使われます。天然繊維で作った不織布にはフェルトなどがありますが、不織布のほとんどにはポリエステルなどの合成繊維が使われています。
不織布マスクは水圧を利用して作られる
不織布は、繊維を織らずにシート状にしたものだと紹介しました。不織布はその製造方法からいくつかの種類がありますので、代表的なものを紹介します。なお、名称はメーカーによって異なる場合があります。
・スパンレース不織布
不織布マスクの多くに用いられる製造方法です。不織布の原材料をシート状に並べたもの(ウェッブ)を、水圧を利用して編み込んでいきます。接着剤を使用しないため、化粧品や衛生用品に採用されています。
<使用例>
マスク、ガーゼ、カウンタークロス、フェイスマスクなど
・スパンボンド不織布
原材料に樹脂チップを使い、そのチップを熱処理によって糸状にし、シート状に並べて結着させたものです。スピーディに作れることや高い強度があるのが特徴です。
<使用例>
紙おむつ、サニタリーナプキン、農業用シートなど
・ニードルパンチ不織布
不織布の原材料をシート状に並べ、針を細かく刺しながら繊維を交絡させていくものです。耐久性があり、ふんわりとした弾力を出せることが特徴です。
<商品例>
たわし、コースター、すべり防止用のマットなど
不織布マスクの効果とは
不織布といえば、マスクとして使うことが多いという人も多いはず。不織布マスクにはどれくらいウイルスを防ぐ効果があるのか、気になっている人も多いでしょう。
不織布マスクの効果や構造、着用するときの注意点について紹介していきます。
不織布マスクの効果は高いとされる
厚生労働省は公式サイトにおいて、新型コロナウイルス対策にはマスク素材の中でも不織布マスクが一番効果が高いとしています。
感染予防にマスクをつける目的は2つあります。相手がウイルスを吸い込んでしまう量を減らすこと、そして自分の飛沫によってウイルスを拡散させないことです。マスクはとくに後者の効果を高くするとされています。ウイルスを吸い込む量がどの程度減るのか、以下のような研究結果があります。
※飛沫を出す側を「自分」、飛沫を吸い込む側を「相手」として記載しています。
- 相手だけがマスクを着用した場合: 布マスクで17%減、不織布マスクで47%減
- 自分だけがマスクを着用した場合: 布マスク又は不織布マスクで7割以上減
- 自分と相手の双方がマスクを着用した場合: 双方が布マスクで7割減、不織布マスクで75%減
つまり、不織布マスクを双方が着用した場合が、もっともウイルスを吸い込む量が減るということになります。
不織布マスクの構造
不織布マスクは、一般的に数枚の不織布が重なって作られています。顔に触れる部分、外側の表面の部分など、部分ごとに異なる種類の不織布を使い、ウイルスを通さないための工夫が施されています。なかには中間の不織布に帯電加工などをして、ウイルスの捕集機能を高めている不織布マスクも。
また、不織布を立体型にしたりプリーツ加工したり、呼吸がしやすい形状の不織布マスクも数多く出回っています。素材や形状などと併せてこうした機能性も選べるのもうれしいですね。
不織布マスク着用の注意点
新型コロナウイルス対策に効果が高いとされる不織布マスクですが、ただつけていれば安心というわけではありません。
不織布マスクの効果を最大限に発揮させるには、自分の顔にぴったりと合うマスクを選ぶ必要があります。マスクと顔の間に隙間ができると、そこから飛沫が拡散してしまうからです。特に室内で会話をする時には、相手との距離が近くなりやすいため、マスクを正しく着用するように心掛けましょう。
また、マスクは長時間使用することにより、雑菌が繁殖していまいます。1日1枚を目安に、交換するのがよいでしょう。
不織布マスクで感染症対策を
不織布について紹介してきました。読み方は「ふおりぬの」ではなく「ふしょくふ」です。
不織布は紅茶のティーバッグやおむつなど、身の回りの様々な商品に使われています。なかでも一番身近なものはやはりマスクでしょうか。
厚生労働省は、マスクの中でも不織布マスクがもっとも効果が高いとしています。ただし、鼻や口の付近に隙間ができないよう、しっかり顔にフィットさせることが重要です。また、雑菌が繁殖するので1日に1枚を目安に交換するようにしましょう。