電動キックボードのシェアリングサービスを手掛けるLuupが東京海上ホールディングスと資本業務提携を結んだ。手軽で便利な電動キックボードだが、ここ最近はユーザーのマナー違反や法律違反がニュースになるなど普及に向けた課題も多い。保険会社と手を組むことで、Luupは何を狙うのか。

  • 電動キックボード

    電動キックボード普及の課題は?

リスクの洗い出しへビッグデータ分析

自動車と違って走行中にCO2を排出しない電動キックボードは、世界的に普及が進む移動手段だ。小型で小回りが利くため、特に都市部のチョイ乗りに便利な乗り物である。

一方で、最近は一部ユーザーのマナー・法律違反が社会問題化している。運転免許の登録や走行ルール確認テストの満点合格など、厳しい利用条件を課す「LUUP」においてもアカウントの無期限停止、いわゆる「垢BAN」されるケースは僅かながら発生しているそう。今後はより安全に利用できるルール整備が急務となっている。

「電動キックボードの安全な走行条件についてはまだ結論が出ておらず、関係省庁において現在話し合われているところです。新規事業者特例制度で実証実験として行なっているLUUPの現状の着地点も、最も望ましい形ではないと認識しています」というのが、Luup岡井CEOの考えだ。

  • Luup代表取締役社長兼CEOの岡井大輝氏(左)と東京海上日動火災保険の中西光氏

    資本業務提携を結んだLuup代表取締役社長兼CEOの岡井大輝氏(左)と東京海上日動火災保険 イノベーション部長の中西光氏(右)。Luupは電動キックボードのシェアリングサービス「LUUP」を手掛けている

今回の資本業務提携の主な目的は2つあるという。

ひとつは「電動キックボードの安全性向上」。これは、「LUUP」のサービス提供に関わるメンテナンスや給電、製造などのリスクマネジメントのほか、違反車両の撲滅や市場の啓蒙活動などを含む電動キックボード全体の安全性も対象とする。

  • LUUPの注意喚起シール

    現在「LUUP」の電動キックボードでは、機体のハンドル間に注意喚起シールを貼るなどユーザーにルール厳守を促している

安全性向上の鍵となるのが、東京と大阪での実証実験を通じてLuupに蓄積された走行データだ。その規模は国内事業者最多となる累計30万キロ以上に達する。

東京海上ホールディングスはこのデータを第三者的観点で分析し、包括的なリスクアセスメントを行った上で、現状の安全性の強化や考えられるリスクの洗い出しを行い、電動キックボードの安心・安全な利用環境をアシストしていきたいとしている。

そして2つ目が「マイクロモビリティ向けの新たなサービスの研究」だ。原動機付き自転車に該当する電動キックボードは日本の現行ルール上、自賠責保険や自動車保険で保証するものとなっている。東京海上ホールディングスでは、Luupとともにまずは現状ルールの周知徹底を図り、将来的には国や政府が検討中の新たなルールや被害者の観点を踏まえて、電動キックボードを含むマイクロモビリティに対する適切な保証方法を検討していくとした。

  • 東京海上の中西氏

    「新たな社会ニーズの変化には、必ず新たなリスクが伴います。そうした新たなリスクに対する不安を解消して、新たな商品やサービスの普及を促すのも損害保険会社の大きな役割です」と語った中西氏

新たな社会課題に関するサービスの開発を目指す東京海上ホールディングスは、今回の協業を契機とし、マイクロモビリティ領域において新たな社会ニーズに即した価値提供を目指していくとした。