楽天モバイルは北海道から沖縄まで39都道府県について、エリアを補うために提供していたKDDIのローミングサービスを一部地域を除いて順次終了し、自社回線へ切り替えると発表しました。

月額3,278円で使い放題の料金プラン「Rakuten UN-LIMIT VI」には現在、ローミングエリアでのデータ利用は5GBまでという制限が設けられています。楽天回線へ切り替わればこうした制限はなくなりますが、一方でSNSには、ローミングの終了により「つながりにくくなくなるのでは?」といった不安の声もあがっています。

楽天回線の人口カバー率は9月末時点で93.3%。楽天グループの三木谷浩史社長は「2022年度第1四半期には96%を超える」と説明していますが、ドコモ、KDDI、ソフトバンクに比べると、そのエリアカバレッジはまだ十分とは言えないのも事実です。

エリア展開を担当する矢澤俊介副社長に、KDDIのローミング終了や今後のエリア展開について聞きました。

  • 楽天モバイル 代表取締役副社長の矢澤俊介氏

――39都道府県という広いエリアでローミングが終了します。ユーザーからつながらなくなったなどの声は出ていないのでしょうか?

矢澤氏: 今回10月の更新のタイミングで、かなり広いエリアに対してローミングの終了を申請しました。ただすべてのエリアで一斉に楽天回線へ切り替わるというわけではありません。KDDIさんの方でこれから1局1局作業していただくので、少しずつ切り替わっていくことになります。

  • 10月1日からKDDIのローミングエリアを順次、楽天回線に切り替えていく。毎年10月、3月が契約の更新時期とのこと

どの場所でいつというのは我々の方ではわからないのですが、今回発表させていただいたエリアについて、今の段階でお客様からつながらなくなったというような声はいただいておりません。

もちろん以前から、そうした声をお寄せいただける窓口は設けていますし、SNS等もチェックさせていただいています。お客様からの声に1件、1件対応させていただくということは、従来から変わらず粛々と続けています。

お客様にご迷惑をおかけしないことが大前提ですので、切り替えは楽天回線の通信が安定しているエリアで予定していますが、KDDIさんからお借りしていた800MHz帯の電波は強力です。それがなくなることで、想定外の影響が出る可能性も否定はできません。

そういう可能性のある地域にお住まいのお客様には、事前にお電話でご連絡をさせていただいています。有り難いことにそのうち98%のお客様には、ポジティブな反応と言いますか、応援の声をいただいております。

またあわせて、社内のサポート体制も大幅に強化しました。お客様から声をお寄せいただいたときにできるだけスピーディーに対応できるよう、100人強のメンバーを新たに投入して、専用のチームも作りました。

――一部エリアでは引き続きローミングサービスが提供されるということですが、どういった場所が切り替わって、どういう場所がローミングを継続するのでしょうか。

矢澤氏: 詳しいエリアマップを近日中に公開する予定ですが、切り替えにあたってはエリアカバレッジだけでなく電波の密度が担保されていること、お客様が移動された際にも連続性が保たれていることの2点を基準に判断しています。

  • ローミングサービスの切り替え詳細。東京はすでに一部を除き、2021年3月に楽天回線に切り替わっている

  • KDDIが公開している、楽天モバイル向けローミングサービス提供エリア。2021年12月末をめどに順次停波していくという

この半年ほどはエリアを拡大することと並行して、電波の密度を高めることに特に注力して取り組んできました。

エリアを広げることと、密度を高めることは相反するところもあるのですが、過去の経験からそうしないとローミングから切り替えたときに、お客様にご迷惑をおかけすることもわかっているので、今回はそういったことがないようにかなり密度を上げています。

――この半年の間に、広いエリアで切り替えが可能なところまで基地局の整備を進められた理由を教えてください。

矢澤氏: AIチームのデータを元にエリア設計を進める一方で、サービス開始後にお客様の声を聞きながらそれを改善できたことが大きかったと思います。

スタート当初は叱咤激励も含めてかなり厳しいお声もいただきましたが、そのお声に一件一件対応させていただく中で、多くの経験を蓄積することができました。ロジカルな計算だけでなく、お客様の声を元に設計し直せたことで、より確実にエリアを構築することができたと思っています。

――SNSには特に屋内や地下でつながりにくいというユーザーの声もあがっています。そうした場所に対して取り組みはしていますか?

矢澤氏: 地上エリアの用地取得の見通しが立ってきたこともありますが、ここ3、4カ月は特に屋内や地下にリソースを集中して取り組んでいます。

具体的な数は公表していませんが、我々が「Rakuten Casa」と呼んでいる屋内用の小型基地局を、かなりの規模感で展開しています。電子決済を使うスーパーマーケットのレジや、電子チケットを使う空港のチェックインなど、つながらないと多大なご迷惑をかけてしまう場所もありますので、社内のいろいろなリソースを活用して、そういった場所のカバレッジも細かくチェックしています。

たとえばQRコード決済の「楽天ペイ」と合同チームを作り、「楽天ペイ」と「Rakuten Casa」を一緒に営業させていただくといった取り組みもしていますし、実際にその相乗効果も出ています。来年(2022年)の前半には屋内や地下でも、お客様につながりやすさを体感いただけるようにしていきたいと思っています。

  • 東京メトロにおいても、2021年10月から大部分が楽天回線に切り替わる

――人口カバー率については夏までに96%を掲げていたのが、半導体不足を理由に後ろ倒しになっている現状もあります。見通しはどうでしょうか。

矢澤氏: 半導体の供給が遅れているのは事実ですが、今はその目処も立ってスケジュールも見えてきました。半導体を必要とするる部品以外は完成している基地局がすでに1万カ所ありますので、今年から来年にかけてそこを一気に開通していけるのではないかと思っています。

次のローミングの更新が来年(2022年)の3月になりますので、もちろんお客様にご迷惑をおかけしないことが前提ですが、楽天回線に切り替わるエリアをさらに増やしたい。47都道府県すべてで切り替えられるように、エリアもしっかり広げていきたいと思っています。

  • 楽天回線エリアの人口カバー率は、2021年8月末時点で92.6%。2022年3月にくる次のローミング更新にあわせ、さらに楽天回線へ切り替えたい考えだ

――楽天グループは日本郵政グループと資本・業務提携していますが、今後のエリア展開にその影響は出てくるのでしょうか。

矢澤氏: 日本郵政さんとは、アンテナを設置させていただくこともそうですが、新規申込みの窓口として利用させていただくことも含めて、かなり細かく打ち合わせさせていただいています。

4Gの基地局については以前からご協力いただいていますが、これから5Gを展開していくにあたってもご協力いただく予定です。郵便局で5Gが使えるということが郵便局をご利用されるお客様にもメリットになるなど、両者にとって良い形にしていきたいと思います。

――最後にプラチナバンドについても聞かせてください。引き続き再配分を求めていきますか?

矢澤氏: すでに電波政策懇談会に意見を提出いただいておりますし、引き続き意見は主張させていただくつもりです。

ただ主張するだけでもダメだと思っています。まずは今いただいている1.7GHzで、できる限り強いカバレッジを作ることが最優先だと思うので、そこは引き続き集中してやっていたいと考えています。

――ありがとうございました。