こんにちは。冒険活劇『レイダース 失われたアーク《聖櫃》』を見て考古学者にあこがれた昭和のオジサンです。同作には、エジプトで発掘調査する場面が登場し、現地徴用された大量の工夫たちが土木作業しています。
しかし最近の調査には、そうした人の手に加え、最新テクノロジーも活躍するようです。
上野の国立科学博物館で開催されている『大英博物館ミイラ展 古代エジプト6つの物語』でそれを見ることができる! ということで、のぞいてきました。
6体のミイラが展示
10月14日~2022年1月12日まで開催されている本特別展、6体のミイラを最新のCTスキャンで画像解析した展示が目玉です。しかもこの6体、階級、性別、年齢、さらに埋葬された時代が異なります。
同じ「ミイラ」と一括りにできず、さまざまな違いが細かく解説されているのが面白い!
ちなみに15年くらい前にも、同じ内容の展示を行い、「その時のCTスキャン技術で分かったこと」を明かしたそうですが、それから技術が進化し、さらに細かいことが分かってきたと、国立科学博物館の館長である篠田謙一氏は言います。
その上で、ミイラからは「人の死」が分かる、それは同時にどういう生きたのかも分かる、と話します。そのため、豪華な副葬品も合わせて展示されているので、鑑賞する私たちに当時の生活をイメージさせる内容となっているのです。
ミイラを最新CTスキャンで調査
それでは早速、ミイラのCT映像と合わせて見どころを幾つか紹介しましょう。まず目に付いたのは、裕福な既婚女性「タケネメト」のミイラです。凝った装飾を施した3重の棺に納められていて、その棺も登場します。
CTスキャンの分析を踏まえた展示映像では、タケネメトが心血管疾患を理由に亡くなったこと、歯が著しく摩耗していることから中年女性だったことなどが推測としつつ結論付けています。
そして、当時食べられたパンには石や砂の粒が混じっていて、それらが摩耗の原因だろうと紹介する説明や、当時の食生活に関する展示品もあります。こんな風に横展開していくと、どんどん想像がふくらみ、面白いなーとインディ・ジョーンズ博士にあこがれたオジサンは感心しました(小波感)。
またCTスキャンによる恩恵として、金沢大学教授の河合望氏は「(ミイラが)未開封の状態で確認できるため、装身具や護符が埋葬時の位置のまま置かれていています。これには意味があることなので、例えばパピルスに書かれた内容との照合もできます」と説明します。
実際、テーベの神官だったネスペルエンネウブウのミイラの展示では、上半身の3次元構築画像と護符との陳列がされ、当時の風習を分かりやすく説明されていました。
ミイラの匂いを再現
国立科学博物館 人類研究部の坂上和弘氏は「これまでのエジプト展は社会全般をテーマにしたり、ツタンカーメン王のような有名な人物にフォーカスしたりすることが多かったです。しかし、今回はさまざまな社会、時代に生きてきた人たちを展示しています」と言います。
今回の6体のミイラを通して、より古代エジプトへの理解が進むのは間違いないでしょう。あまり歴史になじみのない筆者でも、数多くの展示を集中して夢中で見ることができたのは、当時の生活をイメージさせる展示方法が効果的だからでしょう。
もちろん、難しいことを考える必要はなく、説明に耳を傾け、映像を眺め、豪華な副葬品や黄金のマスクなどに目を奪われるだけでも十分楽しめます。
なお最後に紹介したいのが、国立科学博物館が保有している「猫のミイラ」です。これはCTスキャン映像が無いですが、面白い試みとして「ミイラの匂い」を再現しています。
ミイラの匂い!? なかなか貴重な経験だと思いますので、行く機会があるなら、ぜひ試してほしいです。筆者も挑戦しました!
※記事内の写真はすべて「報道内覧会で許可を得て」撮影されたもので、猫のミイラを除く展示作品はすべて大英博物館蔵となります。
●information
展覧会名:特別展「大英博物館ミイラ展 古代エジプト6つの物語」
会期:2021年10月14日~2022年1月12日
※会期等は変更になる場合があります
会場:国立科学博物館(東京・上野公園)
〒110-8718 東京都台東区上野公園7-20