柿の名前を聞いたことがない方は少ないでしょう。しかし、現代ではほかの果物に比べて食べる機会が減っているかもしれません。なかには「あまり食べたことがない」なんていう方もいるのではないでしょうか。
しかし、柿は栄養が豊富で、健康や美容に期待できる効能も多くある果物です。本記事では、柿に含まれる栄養成分や期待できる効果・効能、栄養を無駄なく摂取する方法を紹介します。また、食べ方の注意点や、柿の基本情報についても解説するので、ぜひ参考にしてみてください。
柿に含まれる栄養成分
柿にはさまざまな栄養が含まれた果物です。ここでは代表的な栄養素について紹介します。
ビタミンC
ビタミンCは水溶性ビタミンのひとつで、コラーゲンを合成するのに必要な栄養成分。皮膚や骨、血管などの健康を保つために必要な成分です。ビタミンCは免疫機能に関わる細胞に多く含まれていることから、病気への抵抗力が高まるとされています。
甘柿には可食部100gあたりに70mgのビタミンCが含有。12歳以上の男女の推奨量が100mg/1日で、柿の重量が1個あたり200g前後と考えると、柿ひとつで十分な量が摂取できる計算です。
タンニン
タンニンはポリフェノールの一種。柿を渋いと感じるときはタンニンが口の中で溶けたためです。甘柿にも渋柿にもタンニンは含まれています。
カリウム
カリウムは体内の余分なナトリウムを体外へと排出する働きがあり、塩分の摂りすぎを調節します。日本人の摂取目標量が男性で3,000mg以上、女性で2,600mg以上です。甘柿には可食部100gあたり170mg、干し柿には670mgものカリウムが含まれています。
βカロテン
βカロテンは体内でビタミンAに変わる栄養素です。皮膚や粘膜の健康維持や、細胞の増殖などの働きに関係しています。抗酸化作用もあり、ビタミンCと一緒に摂ると肌荒れなどにも期待が持てる成分です。
ペクチン
ペクチンは柑橘類などに含まれる食物繊維の一種です。腸内環境を整える効果があり、便秘や下痢の解消効果、コレステロール低下、血糖値に上昇の抑制などの働きが期待できます。
柿の期待できる効果・効能
柿に含まれる栄養素にはどんな働きがあるのでしょうか。ここでは柿を食べることで期待できる効果・効能を紹介します。
悪玉コレステロールを減少
柿に含まれているタンニンやペクチンは悪玉コレステロールを減少させるといわれています。悪玉コレステロールは高血圧の原因になり、動脈硬化や脳卒中を引き起こす要因になることも。タンニンやペクチンはそれらを防ぐ期待が持てる栄養素です。
二日酔い
ビタミンCやタンニンは血中のアルコールを排出する働きや副腎機能の低下を防ぐ効果があるといわれています。また柿に含まれるシブオールやアルコールデヒドロゲナーゼのふたつの酵素はアルコールを分解する作用があるそうです。これらの働きから柿は二日酔いの予防に期待できるといわれています。
美容効果
柿にはシミやそばかすを予防する効果があるビタミンCが豊富に含まれています。また体内の余分な塩分を排出してむくみの改善に期待が持てるカリウムや、アンチエイジングの効果があるといわれるポリフェノールの一種であるタンニンなど、美容効果が期待できる成分が多く含まれている果物です。
免疫力向上
ビタミンCは体内に入り込む細菌やウイルスを攻撃する白血球に多く含まれていて、体内の免疫システムには欠かせない成分です。また体内でビタミンAに変化するβカロテンにも抗酸化作用や免疫を活性化させる効果が期待できるでしょう。
ビタミンCとビタミンAの相乗効果で免疫力はそれぞれ単独よりも効果が高まるといわれています。
整腸効果
柿に含まれる食物繊維は、水分を吸収してふくらみ腸を刺激して運動を活発にして便通を促進するといわれている栄養素です。同量の重さでいえば、干し柿には多く含まれています。
ペクチンには整腸作用があり、便秘予防の効果が期待され、タンニンには下痢止めの効果があると考えられていて、腸内環境を整えてくれる期待が持てます。
柿の栄養を無駄なく摂取する方法は?
柿にはさまざまな栄養が含まれていることがわかりました。ここでは、そんな柿の栄養を無駄なく摂取する方法を紹介します。
皮も食べる
柿を食べる際に皮をむいて食べる方も多いと思いますが、実は皮にも栄養成分がつまっています。無駄なく摂取したい場合は、皮ごと食べるのがおすすめです。
干し柿にする
柿は生で食べる以外に、干し柿にして食べるのも一般的です。干し柿は生の柿と比べて、 βカロテンやペクチン、カリウムなどの栄養価が高くなるとされています。これらの栄養素を積極的に摂取したい方は、干し柿で食べるのがおすすめです。
一方、干し柿にするとビタミンCは減ってしまいます。ビタミンCの摂取を目的としている場合は注意してください。
柿の食べ方の注意点
柿は栄養豊富な果物ですが、注意すべき点もあるもの。ここでは食べる際に気をつけたい点を紹介します。
食べ過ぎると便秘・貧血などのおそれも
柿に含まれるタンニンは古くから下痢止めに効果があるといわれる栄養素です。しかし、下痢止めになるということは食べすぎると、便秘になるおそれがあるということ。
ペクチンも整腸作用があるといわれていますが、消化には時間がかかり胃腸に負担がかかる可能性もあります。
またタンニンは鉄と結びついて鉄分を体内へ吸収する妨げになるケースがあるようです。過剰に摂りすぎてしまうと、貧血のおそれがあるといわれています。
「柿が大好物」という方でも1日あたり1~2個程度にしていきましょう。
柿は妊娠中に食べても大丈夫
「妊婦が柿を食べると流産する」という話を聞いたことがある方もいるでしょう。しかし、結論からいうと、それは迷信です。柿を食べたからといって流産の原因になりません。
しかし、「柿しか食べない」などの食生活は栄養バランスの乱れにつながりますので、ほかの食材もバランスよく食べる必要はあるでしょう。
柿の基本情報
最後に、あらためて柿の基本的な情報を紹介します。
柿とは
柿はカキノキ科カキノキ属に属する果物。品種によって違いはあるものの、主に9~12月が収穫時期で、秋が旬の果物として親しまれています。
柿には甘柿と渋柿があり、甘柿は収穫時期の秋の気温が高くないと甘みが出ないため東海地方以西の比較的暖かい場所で多く栽培されることが多いです。渋柿は東北地方から九州地方まで全国的に栽培されています。
柿の歴史
柿は日本や中国が原産とされて、縄文時代や弥生時代の遺跡から柿の種の化石が発見されるなど歴史は古いです。「古事記」や「日本書紀」に柿の名前が表記されていて、奈良時代には日本の各所で食べられていたと考えられています。
当時親しまれていたのは渋柿で、干し柿などにして食べられていました。甘柿は鎌倉時代に渋柿が突然変異して生まれ、江戸時代にはさまざまな品種改良が行われ、現在では日本国内に1,000種類以上の柿が存在しています。
柿のカロリーは
柿は甘柿と渋柿でわずかにカロリーや糖質に違いが表れます。日本食品標準成分表2020年版(八訂)を参考に甘柿、渋柿、干し柿の可食部100gあたりの比較表を作成しました。
エネルギー | 糖質 | |
甘柿 | 63kcal | 14.3g |
渋柿 | 59kcal | 14.1g |
干し柿 | 274kcal | 57.3g |
甘柿と渋柿ではほとんど差がありませんが、わずかながら甘柿のほうがカロリーも糖質も高くなっています。りんごの可食部100gあたり56kcal、糖質14.3gと比較しても大差がない数値です。しかし、干し柿になると同じ重量でカロリーも糖質もグンと高くなるので、食べすぎには注意したほうがいいでしょう。
甘柿と渋柿の違いとは
甘柿と渋柿の違いはタンニンにあります。柿が渋いのは水溶性タンニンが影響しています。水溶性タンニンが口の中で溶けることで渋みを感じるのです。
甘柿も幼果の時点では渋みがありますが、生長して収穫を迎える頃にはタンニンが水溶性から不溶性へと変化するため、口に入れても溶けないので渋みを感じなくなります。
柿は栄養豊富で期待できる効果もたくさん
柿はビタミンCをはじめ、栄養が豊富な果物です。美肌効果、二日酔いなどに対する効果も期待できるので、美容に関心がある方や、お酒を飲む機会が多い方などにおすすめといえるでしょう。
しかし、食べすぎると便秘や貧血の原因にもなるおそれがあるなど注意が必要といえます。柿を食べるときは適量に抑えて楽しみましょう。
文部科学省「食品成分データベース」
厚生労働省「e-ヘルスネット」