ソニーの「Xperia 5 III」は、ハイエンドスマートフォンにふさわしいスペックを備えています。フラッグシップモデル「Xperia 1 III」の機能の一部が省かれているものの、共通する部分も多いこの製品。Xperia 1 IIIとの違いはどんなところにあるのか、それが実際の使用感にどう影響しているのか……といったところをチェックしていきます。
ディスプレイが小さく、コンパクトに
Xperia 5 IIIとXperia 1 IIIの大きな違いはディスプレイです。Xperia 1 IIIが約6.5インチ/4K HDR/120Hz駆動の有機ELディスプレイだったのに対し、Xperia 5 IIIは約6.1インチ/FHD+ HDR/120Hz駆動の有機ELディスプレイとなっています。どちらも21:9のアスペクト比ですが、Xperia 5 IIIのほうがサイズが少し小さく、解像度も下がっています。
その分、本体サイズはXperia 1 IIIの約71×165×約8.2mm/約188gに対して約68×157×8.2mm/約168gとコンパクト化。幅は3mm程度の違いですが、長さが8mm短くなっており、重さも20g軽くなりました。
横幅はともかく長さの差は結構大きく、手に持ってみても明らかにコンパクトという印象があります。横幅もわずかとはいえ、手の大きさによっては大きな差に感じるでしょう。重さは言わずもがなです。
それでいながら、バッテリー容量は変わらず4,500mAh。SoCもSnapdragon 888で変わりません。そのため、パフォーマンスは同等ながら、ディスプレイの消費電力が低いXperia 5 IIIの方がバッテリー持続時間が長くなっているようです。
スペック上の異なる点はほかにもいくつかあります。ストレージとメモリは、Xperia 1 IIIの12GB/256GBから8GB/128GBに減少。Xperia 5 IIIではワイヤレス充電機能も省かれました。ネットワーク面では5Gのミリ波に対応しません。違いとしてはこのあたりが大きなところです。
逆に言えば、こうしたスペックが必要ない/なくても許容できるという人であれば、Xperia 1 IIIとXperia 5 IIIはディスプレイと大きさで選択してもよさそうです。4K解像度は、6インチクラスのディスプレイでは大きな差は分かりにくく、よほど必要でなければ無理に選ぶ必要はないでしょう。
とはいえ、画面サイズの差は決して小さくありません。特に21:9という細長いアスペクト比は、画面サイズが大きい方が使いやすく、特にマルチウィンドウ機能を使うときに差が出ます。そのため、大きい画面が欲しい人はXperia 1 III、コンパクトさを重視する人はXperia 5 IIIと分けられそうです。
ソフトウェア面での違いもありません。21:9の画面を生かしたマルチウィンドウなど全て同等の機能となっています。そのため、以前にレビュー記事で紹介したXperia 1 IIIと使い勝手はほぼ同じです。ただし画面サイズが大きいというのはXperia 1 IIIの方が有利な点ではあります。
使い勝手のいい便利なカメラ
重要な点として、カメラ性能がほぼ同等という点は見逃せません。Xperia 5 IIIでは、3つのセンサーを搭載し、4つの焦点距離に対応したレンズを搭載しています。望遠側のレンズは可変式望遠レンズを採用しており、2つの焦点距離を切り替えられるため、センサーは3つながら4つの焦点距離を使えるわけです。
超広角レンズが35mm判換算16mm、メインが24mm、望遠が70mmと105mmをカバー。約2.9倍と約4.4倍という倍率になります。最近は一般的なスマホカメラでもトリプルカメラの機種が多いのですが、見た目はトリプルカメラに抑えつつ、4つの焦点距離をカバーするカメラを実現しているのが便利な点です。
カメラのスペックとしてXperia 1 IIIとの大きな違いは、3D iToFセンサーを搭載していないことです。このセンサーは被写体を検出するのに使われており、その精度を高める役割を担っています。そのため、Xperia 1 IIIでは被写体のリアルタイムトラッキング機能を搭載していましたが、Xperia 5 IIIではこれがオブジェクトトラッキング機能になっています。今回は短時間の試用のため、精度の違いまでは分かりませんでしたが、被写体の追尾機能はXperia 1 IIIの方が優秀そうです。
ただ、動物にも対応した瞳AF、広角カメラでのリアルタイム瞳AF、AF/AE追従の20コマ/秒連写と言った高速動作は変わりません。撮影した限りは、センサーやレンズが同じこともあって、画質面での差もないようです。
中国系のスマートフォンに多い「はっきり、くっきり」系の画質ではなく、カメラらしい落ち着いた描写で、バランスとしては白トビを避ける傾向のようです。そのため、シーンによってはやや暗めという印象になります。露出補正が簡単なので、+1ぐらいの補正をして撮影してもいいかかもしれません。
本体にシャッターボタンを搭載している点も変わらず。長押しでカメラが起動し、そのまま半押しからシャッターを切るという動作まで可能。通常のスマートフォンだと「電源ボタン2度押し」にカメラ起動が割り当てられる場合が多いのですが、専用ボタンを長押しするだけなので、カメラをよく使う場合に便利です。Photography Proアプリを使ったUI面ではXperia 1 IIIと全く変わりません。
カバーする焦点距離も幅広く、使い勝手の良いカメラ機能です。シャッター音が小さめで目立たないという点も魅力的。動画/自撮りをBASICモードに変えないとできない点は不自由ですが、前モデルまではカメラアプリを切り替えなければいけなかったので、それに比べれば使い勝手はよくなりました。
バランスの良いコンパクトハイエンドスマートフォン
オーディオ面も充実。360 Reality Audioに対応し、音楽ストリーミングの曲も立体的に変換する360 Spatial Sound、ハイレゾ相当の高音質に変換するDSEE Ultimate、ヘッドホン設定をカスタマイズできるSony | Headphones Connectといった機能はXperia 1 IIIと同様に搭載します。
フルレンジステレオスピーカー、3.5mmオーディオジャックも変わらず搭載。ただし、スピーカーサイズが異なるため、音圧自体はXperia 1 IIIの方が上ということです。
ディスプレイ性能とサウンド性能を組み合わせて楽しめるゲームや映画といったコンテンツも楽しめる十分な端末ですが、より大画面・高解像度のXperia 1 IIIの方が向いているかも知れません。このあたりは好みで選ぶといいでしょう。
コンパクトなボディに高機能を詰め込んだのがXperia 5 IIIです。基本スペックはフラッグシップモデルのXperia 1 IIIと共通していながら、機能を取捨選択してコンパクトボディを実現しています。メインの最重要な機能はおおむね共通化されているので、どちらを選んでも最新のXperiaの機能を体感できます。
個人的に画面の大きさ、ミリ波、ワイヤレス充電という、まさにそぎ落とされた機能が欲しくてXperia 1 IIIを選択した筆者ですが、それでもXperia 5 IIIのコンパクトさは小さすぎもせず、好印象。「最適なサイズ」といってもいいぐらいです。
Xperiaの最新モデルとして、Xperia 1 III、Xperia 5 III、どちらを選ぶかは、欲しい機能(および価格)と相談して選択するといいでしょう。