昨年10月にデビューした同期対決

第52期新人王戦(主催:しんぶん赤旗)三番勝負第2局、▲古賀悠聖四段(0勝1敗)-△伊藤匠四段(1勝0敗)戦が10月11日に東京・将棋会館で行われました。結果は104手で伊藤四段が勝利。2連勝で新人王戦優勝となりました。


第52期新人王戦のトーナメント表(ベスト8以上を抜粋)

矢倉の将棋となった本局。後手番の伊藤四段は近年流行している急戦調の構えを見せます。対する古賀四段は金銀3枚の矢倉にしっかりと組んだあと、右銀を繰り出していきました。

当然後手が急戦策に打って出るのかと思いきや、伊藤四段は相手の右銀による仕掛けを封じる方針を採りました。そして飛車を4筋に転回し、2二角・3一玉・4二飛という大駒と玉が密集する珍形が出現しました。

このままでは玉は囲いに入城できず、さらに大駒も働きません。この凝り形を伊藤四段は巧みに解消します。まず4筋の歩を切って飛車の縦の利きを通します。そして△1四歩~△1三角が角を働かせる好手順。2二の角をさばくと同時に、玉を2二へと移動させることも可能になりました。

伊藤四段は交換した角を5六の地点に設置します。攻防の要所を押さえたことで、伊藤四段が優位を不動のものとしました。さらに歩を用いて相手の飛車を2筋から4筋へと移動させ、相手の攻撃力を削いでから△3一金と相手の角を攻めたのが堅実な指し回し。角を助ける術がない古賀四段は▲6三歩と金取りに歩を叩きますが、そこで△6一金が決め手となりました。

△6一金は5一にいる相手のと金の利きに飛び込む手。しかし▲6一同とと取らせれば、△4一金で角をタダで入手することが可能になるのです。古賀四段は▲2三角成と捨てて相手の陣形を乱してから△6一とで金を入手しましたが、貴重な攻め駒が相手玉から遠ざかってしまいました。

その後は相手の攻めに丁寧に対応した後、大駒3枚の攻めで素早く相手玉を寄せ切った伊藤四段が、104手で勝利を収めました。

この勝利で伊藤四段はシリーズ2連勝で新人王戦優勝を達成。デビューから約1年での棋戦初優勝となりました。伊藤四段は2002年10月生まれの19歳。藤井聡太三冠と同い年ながら、誕生日の差で現役最年少棋士です。

新人王戦優勝者はタイトル保持者との記念対局を行うのが恒例です。非公式戦ではありますが、19歳同士の戦いを見ることができるかもしれません。

一方残念ながら優勝を果たせなかった古賀四段。古賀四段も伊藤四段と同じく2020年10月にプロデビューしたばかりの期待の若手棋士です。

古賀四段は三段リーグで2度の次点獲得による昇段のため、フリークラスからのスタートでした。しかし順調に勝ち星を積み重ね、9月8日の新人王戦準決勝での勝利により「フリークラスからC級2組への昇級規定」である「30局以上の勝率が6割5分以上」の規定を達成。デビューから1年も経たない内に、フリークラスから脱出を果たしました。今回は残念な結果となりましたが、今後も大舞台での活躍が期待できるでしょう。

デビューから1年で棋戦初優勝を果たした伊藤四段(提供:日本将棋連盟)
デビューから1年で棋戦初優勝を果たした伊藤四段(提供:日本将棋連盟)