米労働省が2021年10月8日に発表した9月雇用統計の主な結果は、(1)非農業部門雇用者数19.4万人増、(2)失業率4.8%、(3)平均時給30.85ドル(前月比+0.6%、前年比+4.6%)という内容であった。
(1)9月の米非農業部門雇用者数は前月比19.4万人増と前月に続き市場予想(50.0.人増)を大きく下回った。失業給付の上値せ措置が全米で終了したことから、仕事に復帰する人が増えると見られていたが、そうはならなかった。雇用情勢を基調的に見る上で重視される3カ月平均の増加幅は55.0万人へと減速。7月分と8月分が合計で16.9万人上方修正されたこともあって大幅な減速には至らなかったが、米労働市場の回復力の鈍さが浮き彫りになった。
(2)9月の米失業率は前月から0.4ポイント改善して4.8%となり、2020年3月以来の低水準を記録。低下は予想以上だった。労働力人口に占める働く意欲を持つ人の割合である労働参加率が61.6%と、前月から低下したことも失業率の押し下げ要因になった。なお、フルタイムの職を希望しながらパート就業しかできない人なども含めた広義の失業率である不完全雇用率(U-6失業率)は8.5%と、前月から0.3ポイント改善した。
(3)9月の米平均時給は30.85ドルと、前月から0.19ドル増加(+0.6%)して過去最高を更新。前年比でも+4.6%に伸びが加速した。前年比の伸び率は予想通りではあったが、7カ月ぶりの高水準を記録した。米企業が人員確保に向けて賃金を引き上げる動きを強めたと見られる。
米9月雇用統計は、非農業部門雇用者数が予想を大幅に下回る冴えない結果となったが、失業率はしており、平均時給(時間当たり賃金)の伸びも加速した。結果的には、米連邦準備制度理事会(FRB)が11月の連邦公開市場委員会(FOMC)でテーパリング(量的緩和の段階的な縮小)の開始をアナウンスするとの市場の見方が修正されることはなかった。
米10年債利回りは、発表直後こそ低下する場面もあったが、間もなく上昇に転じ4カ月ぶりに1.6%台へと上伸した。ドル/円も利回りの上昇に連れて年初来高値を更新。一時112.25円前後まで上値を伸ばした。
こうした動きを見ると、市場は米9月雇用統計を経て11月テーパリング開始を確実視し始めた模様だ。逆に言えば、市場との対話を重視するFRBが、11月FOMCでテーパリングを見送る公算は小さくなったと考えられる。この先、市場が大きなショックに見舞われなければ、11月3日のFOMCではテーパリングの有無よりも縮小ペースなどが焦点になりそうだ。