トヨタ自動車の新型「ランドクルーザー」が大人気だが、買うとすれば難しい2択に直面せざるをえない。ガソリンか、ディーゼルかという問題だ。クルマのキャラから考えるとディーゼルがよさそうだが、実際のところは? 2台を乗り比べてみた。

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    ディーゼルとガソリン、どっちがいい? 新型「ランドクルーザー」を乗り比べた(本稿の写真は撮影:原アキラ)

「どこへでも行き、生きて帰ってこられるクルマ」をコンセプトとするトヨタの本格SUV「ランドクルーザー」(通称:ランクル)も、今年で70周年だ。8月にフルモデルチェンジしたばかりの新型「300系」は、ディーゼルエンジンとガソリンエンジンの2種類からパワートレインが選べる。今回は両方に試乗し、双方の特徴を確認してきた。

そもそも「ランクル」とは

今から70年前の1951年8月、当時設立されたばかりの警察予備隊(自衛隊の前身)への納入を狙って開発された4輪駆動車の「トヨタBJ型」をルーツとするのが「ランドクルーザー」だ。結果は米軍車両と互換性のある三菱「CJ3 B型ジープ」が採用されるという悔しいものになったのだが、以降のランクルは3系統に枝分かれして歴史を紡いでいくことになる。ヘビーデューティーを追求した「70系」、フラッグシップSUVとして先進技術を刷新してきた「ステーションワゴン系」、日常的に広範囲の用途をカバーするライトデューティーの「プラド系」だ。これらを合わせると生産実績は累計1,060万台に達する。今も世界170以上の国と地域で年間30万台以上が売れる人気車種だ。

8月にフルモデルチェンジした新型「300系」はステーションワゴン系に属する。2007年に登場した先代「200系」からは、14年ぶりの刷新ということになる。

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    14年ぶりにフルモデルチェンジした「ランドクルーザー」

トヨタは今回のランクル300系について、信頼性、耐久性、悪路走破性は進化させつつ継承し、さらに「世界中のどんな道でも運転しやすく、疲れにくい走りを実現」することが開発の狙いだったとしている。

プラットフォームは伝統のはしご型「ラダーフレーム」を踏襲しているが、TNGAの考えに基づく「GA-F」形式を採用。最新の溶接技術により高剛性(従来比+20%)かつ軽量となり、衝突安全性、静粛性、走りの質が向上したという。

一方、ゴムマウントでフレームの上に乗せるという構造のキャビン部分は、ボンネット、ルーフ、全ドアパネルをアルミニウム化。高張力鋼板の採用面積を拡大するなどして大幅なダイエットに成功した。パワートレインの搭載位置を車両後方に70mm、下方に28mm移動するなどの工夫も凝らし、車両トータルとして200kgの軽量化と低重心化、前後重量配分の改善が達成できている。

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    ボディサイズは全長4,985mm 4,950mm、全幅1,980mm、全高1,925mm、ホイールベース2,850mm。外形の大きさに関しては先代とほぼ同じだ

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    アプローチアングル32度、ランプブレークオーバーアングル25度、デパーチャーアングル26度という対地障害角も必然的ではあるが変更なし。オフロードの走破能力をきちんと継承していることになる

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    デザイン的には、巨大なフロントグリルと高い位置にあるヘッドライト、前方視界確保のために中央に大きな凹みがついたエンジンフードなどが新型の特徴になる

やっぱりコレか? 安定のディーゼルエンジン

最初に乗ったのは、ディーゼルエンジンを搭載する上級グレードの「ZX」。パワートレインは排気量3,345ccのV型6気筒ツインターボディーゼルエンジンで、最高出力227kW(309PS)/4,000rpm、最大トルク700Nm/1,600~2,600rpmを発生する。

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    新型「ランドクルーザー」が搭載する排気量3,345ccのV型6気筒ツインターボディーゼルエンジン。ディーゼルエンジン搭載車のグレードは「ZX」(760万円)と「GR SPORT」(800万円)の2種類だ

今回のディーゼルは、90度のVバンクの中にタービンを置く新開発のエンジンだ。「ホットVレイアウト」という手法で、トヨタでは初採用となる。低速域ではシングルターボによる高レスポンス、高速域ではツインターボの大吸気による伸びやかな加速が得られるそうだ。トランスミッションは、エンジンの特性に変速特性を最適化した10速のダイレクトシフトATを組み合わせる。

指紋認証方式採用のスターターボタンを押し、ディーゼルに火を入れてクルマを走らせ始めると、出来のよさはすぐにわかった。

軽量化されたとはいえ2.5tもある大型で重い車体にもかかわらず、レスポンスがいい。加速時には、「グロロロー」というディーゼルらしい迫力のある排気音とともに車速が一気に乗り、一定速度に達してクルージングし始めると途端に静かになる。20インチの265/55扁平タイヤにしては乗り心地もいい。

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  • 重い車体をものともしないレスポンスが得られる新型「ランドクルーザー」のディーゼルエンジンモデル

一方で、「これなら高速の巡航も得意なのかも」と期待して中央高速にも乗ってみたのだが、ここではラダーフレーム特有のクセや、重いディーゼルエンジンを搭載することによるネガな面が少し顔を出す。つまり、段差を乗り越えた時のバタつきだったり、ふわり感がちょっと残ったりといった感覚だ。ドライブモードが「コンフォート」や「ノーマル」だと、この特性が結構顕著に感じられる。「スポーツ」でやや収まり、「スポーツ+」でOKというレベルだ。

ただし、逆にこれが「ランクル特有の持ち味」だと評価される部分でもあったりするので、一概に悪いとはいえないところ。走ることは叶わなかったけれども、オフロードではそうした部分が美点に変わるのだろう。

インテリアは本格SUVらしく、駆動系などに多数のマニュアルスイッチ類が配置されている。豪華ではないが、使いやすい。メーターは車速、エンジン回転、燃料、水温、油圧、電圧が直感的に視認できる6針式メーターを採用。ダッシュボードは水平基調で、クルマの姿勢がつかみやすいデザインだ。ちょっと残念なのは、ディーゼルモデルに3列シートが用意されていないところか。

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  • (タッチパネル式などではなく)物理スイッチが多いのは、悪路を走行中でも操作しやすいからだ

「GR」のガソリンも捨てがたい!

ガソリンエンジンを積んだホットモデルの「GR SPORT」にも乗ってみた。

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    ガソリンエンジン搭載モデルは価格の安い順に「GX」「AX」「VX」「ZX」「GR SPORT」の5グレード構成。価格は510万円~770万円だ。「GX」のみ5人乗りで、ほかは7人乗り仕様(格納可能な3列目シートを搭載)となる

GR SPORTは、世界一過酷な「ダカールラリー」など、モータースポーツをベースにしたクルマづくりが起点となるモデル。フロントグリルはギラギラしたノーマル仕様とは打って変わって、ブラックのハニカムグリルに大きなホワイトレターで「TOYOTA」のロゴが入るスポーティーなものになる。

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    「TOYOTA」ロゴは「GR SPORT」購入者の特権だ

タイヤはオフロード走行に適応するため2インチダウンした18インチ265/65サイズ。ホイールはラリー車を彷彿させるマットブラックに塗られている。ホイールアーチや車体下部もブラックパーツになっているので、エクステリア全体として精悍で軽快な印象だ。

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    タイヤ周りの色づかいが精悍な印象を与える

搭載するパワートレーンは排気量3,444ccのV型6気筒ツインターボガソリンエンジンで、最高出力305kW(415PS)/5,200rpm、最大トルク650Nm/2,000~3,600rpmを発生する。先代の4.7リッターV8に比べると排気量は減ったものの、そのハイパワーぶりは健在で文句なしだ。トランスミッションはこちらもロックアップつきの10速仕様を組み合わせる。

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    排気量3,444ccのV型6気筒ツインターボガソリンエンジン

足回りはGRスポーツ専用の「E-KDSS」(Electric-Kinetic Dynamic Suspension System)を搭載する。路面状況や前後輪のそれぞれの状況に合わせてスタビライザー効果を電子制御するシステムで、先に乗ったZXに比べて引き締まった印象だ。より洗練されたフットワークにガソリンエンジンの軽快な回転感覚が相まって、一般道でも高速道路でも姿勢が安定し、気持ちいい走りが楽しめる。

こちらもオフロード走行は試せなかったが、バネ定数や「AVS」(電子制御サスペンション)を最適化し、ランクル史上最長のサスペンションストロークとタイヤの浮きづらさを確保したとのこと。後輪だけでなく前輪の電動デフロックを搭載することで、悪路走破能力をさらに向上させた最強の仕様となっている。ガソリンモデルでは7人乗りを選べるのも魅力だ。

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    3列目シートは格納式。「AX」以外は電動だ

SUV人気とはいえ、これほどまでの絶対性能を誇る本格的な大型モデルは日本にはない。価格もある意味、リーズナブル。納車まで数年かかるといわれるその人気ぶりにも納得だ。

足回りのよさや軽快感、7人まで乗れる積載力など、魅力たっぷりのGR SPORTガソリンモデルは、オンロードのみの使用を考えれば、現状でイチオシ。オフロード走行が多いユーザーなら、同じGR SPORTでもより低速トルクたっぷりのディーゼルモデルという選択になるのかもしれない。